住めば都も、遷都する2018/11/9

家を買うとき、私たちは、部屋から部屋へと巡りながら、くまなく見て回る。見落としがないように、しっかりと住まいの品質を確かめる。視覚の力で、住宅を評価する。同時に街や道路の騒音は入ってこないか、お隣や上の階の音が洩れてきたりしないか、聴覚も動員して調べる。しかし、触覚の出番は少ないかしら。住まいの「感触」については、意外に見落としがちだ。

 

 

だが、実際に住み始めると、「住まいは肌触り」が大切なことに改めて気づくもの。ふかふかの時間を過ごすとき、私たちは暖かい気持ちになる。すべすべの時間は、清潔になって、身も心も美しくなる感じがして。深いところで、日常生活の快適さを決めるのは、触覚の心地よさなのだろう。

 

 

日本の場合、湿気のある季節が長い。だから、湿度には敏感。梅雨の頃には、べとべとして、どこもかしこも感触が悪い。もっとも、現代では、そんな季節でも除湿器やエアコンの除湿機能によって、快適なさらさら空間になる。一方、空気がからからになる冬は、肌もぱさぱさ。加湿器の出番である。湿気は少なすぎても多すぎても、暮らしにくい。

 

マンションの場合、全館空調で、一年中、一定の気温と湿度を保っている物件も増えた。それが嬉しいという人もいれば、季節感がないから、個別の空調で調整する方がいいという人もいる。人は千差万別なのでしょう。

 

建築家の知人が、東京に家を建てた。イタリア人らしく、床一面、大理石だ。つるつるの床を、こつこつと靴のままで歩いている。その人の住まいは、壁に石材を使った。つるつるの床に対して、ごつごつの壁が効いている。さしずめ、和風の場合なら、すべすべの畳に、ざらざらの漆喰壁という感じ。洋の東西を問わず、良い家は、触感の設計にも気を配っている。

 

住めば都も遷都する。手触り、肌触りの視点から、新しい家を求めるのも楽しそう。そんな場合、打ち合わせにも、ふかふか、すべすべ、さらさら、ごつごつなど、触感を表現する擬態語を使おう。こちらの希望する住まいの「気分」をうまく伝えられる。

 

 

 

関沢英彦(文・イラスト)

発想コンサルタント。東京経済大学名誉教授。コピーライターをへて、生活系シンクタンクの立ち上げから所長へ。著書多数。現在、ヤフーニュースなどの個人ブログも執筆中。

https://news.yahoo.co.jp/byline/sekizawahidehiko/

http://ameblo.jp/ideationconsultant/entry-12291077468.html

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