LIFE IS BEAUTIFUL!!! 山田英幸のもの・ものがたり2018/10/19

好きなものだけに囲まれて暮らしたい。

毎日の暮らしを、わがままに、自分好みに美しく整えたい。

そのために必要なのはたっぷりのお金!!

ではありません。

ちょっとしたアイディアや工夫、少しの手間、そして何より一番大切なのはどれだけそのものを愛せるか、ということ。

 

身のまわりのものを愛する、ということは、暮らしを愛する、ということ。

それはつまり、人生を、自分を愛する、ということだと思います。

ちょっとしたことで、暮らしはもっと美しくなる。

人生も、もっと美しくなるのではないでしょうか。

 

菊の花のかたちの小皿。そこに秋草が描かれています。 17世紀の伊万里、藍九谷といわれる手です。

 

今年の夏は本当に苛酷で、身体に堪えました。

このまま夏が終わらないんじゃないか、とさえ思いましたが、いざ涼しくなり始めると、やはり秋を感じるこの頃です。

今年は自分にとって節目の年(還暦を迎えました)でもあるので、往く夏が例年よりも名残り惜しく、また、秋の訪れにも特別のものを感じたのも確かです。

 

10月生まれということもあって、秋の訪れは「自分の季節」がやってきた、といううれしさがあります。Tシャツと短パンで過ごしていたのが、やっとおしゃれが楽しめる、そんな「文化的」な季節でもあります。

 

「波兎」の模様の伊万里。満月に喜んで跳ねる兎なんだそうです。

 

こちらは祥瑞と呼ばれる中国の吉祥文様の兎。顔が違います。小さな茶入です。

 

栗の模様の古九谷の皿。 大好きな皿ですが、なかなか使うのも難しい。栗きんとんじゃバカみたいだし・・・・。

 

器の世界にももちろん秋はやってきます。

「旧暦」と「新暦」があるので、ちょっとややこしいのですが、もう過ぎてしまった「十五夜」や、旧暦だとちょうど今頃の「重陽の節句」などなど、そんな行事を表した器はこの季節にこそ使ってうれしいものです。

兎の文様の器は中国にも日本にもありますが、顔が違うのが面白い。兎の器は人気が高く、集めている人が多いので割高です。上の写真の兎の皿は、本歌は17世紀の伊万里で、九州陶磁文化館にも収められていますが、これは多分幕末か明治のころの「写し」。写しが作られるほど人気があったのでしょう。

 

菊の文様の棗ふたつ。 16弁の菊は季節に関係ないのでしょうが、左のような菊はやはりこの季節のもの。

 

先日、自分の還暦祝いのパーティーを開催し、そこで茶人の友人が添え釜をしてくれました。そのときにこの菊の蒔絵の棗を使ってくれました。

狭い会場での簡単な立礼席でしたので、お道具組などにはそれほど凝ることもできませんでしたが、それでも「ひとつくらいは自分の愛着のある器を使ってみれば」といわれ、使ってもらったのです。

席に飾られた秋草によく映り、クレイジーなパーティーの中で一か所だけ清浄な一角になっていたことが忘れられません。

 

お茶の世界では11月の口切の前の今の季節は「名残の月」と言って、一年間飲んできたお茶の最後を惜しむ、しみじみとした月なのだそうです。

その寂しさ、そして去っていくものに対する哀惜を表現するのか、この季節だけは積極的に「やつれた器」も使っていいのだとか。

直しの入った茶碗や、わびた風情のお道具などを使うのだそうです。

自分としては大好きな秋に対してそこまでしみじみとした気分にはまだなれませんが、それでも金継した器などをしたり顔で使うのも面白いものです。

 

金継した酒器や向付いろいろ。こんなのも秋にこそ使ってみたい。金継は笹原みどりさん。

 

 

上の2枚は同じ李朝の刷毛目の皿。シンプルで何にでも合うモダンな皿ですが、このように秋の詫びた風情にもぴったり。

 

秋という季節は、自分にとってもそうなのですが、夏みたいに画一的なイメージの季節とは違っていろいろな顔を持っている面白い季節だと思います。

過ぎていく夏を惜しむ気分から、さまざまな「実り」を待ちわび祝う豊かな気分。そしてやがて来る冬という静かな眠りの季節を予感する、大人っぽい気分。

そんな複雑さが、秋という季節をより「文化的」な季節にしているのだと思います。

Tシャツ一枚でいられたのに、これからは考えて重ね着をしなきゃいけない。めんどくさくもあるけど、楽しい。

秋の複雑な味は、大人になって初めてわかるものなのではないでしょうか。

 

 

秋草蒔絵の煮物椀。侘びた雰囲気の中にもなにか豊かさがある。 秋という季節をうまく表していて、好きなお椀です。

 

 

山田英幸

幼い時から美しいものが好きで、長年にわたり骨董・アンティーク・古裂・ヴィンテージテキスタイルなどを収集。

また手仕事も得意で、洋服、帽子、人形、テディベアなどを制作するが、1990年頃「究極の手仕事・仕覆」に出会い、現在も制作を続けている。

西麻布「ルベイン」「銀座松屋」などで仕覆展示会開催。

自称「手芸の国の王子様」。

 

とにかく、「もの」が好き。それにちょっとした工夫や手仕事をプラスすることで、身の回りを美しく、毎日を楽しくしたいと思っている。

愛知県名古屋市生まれ。現広告代理店クリエイティブディレクター。

 

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