住めば都も、遷都する2018/9/30

タイトルからは、男性が動き回る系、女性がじっとしていたい系のイメージだが、実際は人によるだろう。家族みんなの傾向が一緒のこともあるし、違っていることもありうる。

 

暮らしのスタイルには、移動型と定着型があるらしい。歴史で習った遊牧民と農耕民という違いも、そうした2タイプ。もちろん、現代では、どこかに本拠地を持つ人々が大半であり、定着型の生活が普通だ。あのモンゴルでも、都市では集合住宅に住む人々が多いとか。中には、ゲル(移動できるテント)に住みながら定住している人もいる。

 

かつて、ジャック・マイヨールという素潜りの天才と言われたフランス人がいた。2001年に亡くなるまで、世界各地の自宅、別宅を転々としながら海に潜っていた。移動型ライフスタイルの典型である。日本の館山にも別荘を持っていたとか。恐らく、ジャックの気持ちとしては、海のそばに住むということでは、地球上のどこでも同じであって、海辺に定住していると思っていたのかも知れない。

 

ところで、短期的な移動ともいうべき旅に、人々は出ているのだろうか。「最近1年海外旅行に行った」という人の率は、1998年には女性18.0%、男性16.8%だった。だが、2016年には女性12.4%、男性11.2%に下がった(博報堂生活総合研究所調べ・20歳〜69歳)。

 

 

もちろん、過去に一度でも海外旅行に行ったという累積の海外旅行経験率は増えている。男性の場合、1998年63.8%だったのが、2016年71.0%に上昇。さかのぼって1992年には49.6%であったから、海外はもう遠い存在ではない。「海外、行ったことがあるから、もういいや」ということで、直近では海外旅行を計画する人が減っているのかも知れない。

 

女性の場合は、1998年63.1%が、2016年75.0%であり、いまでは男性よりも海外旅行経験率は高い。1992年は41.2%であったから、その後、女性は大いに地球上を移動してきたことになる。

 

さて、国内旅行ではどうだろうか。1998年には「最近1年国内旅行に行った」という女性は74.2%、男性は75.6%だった。2016年は女性66.0%、男性61.8%である(前掲調査)。海外旅行と同じように、最近では、国内を移動する人も減っている。もっとも、6割以上の男女は、毎年、国内のどこかに旅をしているわけで、減ったとはいっても、「どこかに行きたい」という思いは健在である。

 

 

もちろん、移動をしたがる人は、何度でも旅に出かける。したがって、全体の延べ旅行者数は、国内、海外ともに増加している。

ターシャ・テューダーというアメリカの絵本作家がいた。もう10年程前に亡くなったが、彼女の庭づくりへの情熱は、テレビ番組でもよく紹介された。57歳から92歳まで、アメリカ東部のバーモント州の田園で、いまでいうスローライフを実践した。一日の多くの時間を草花の手入れに割き、夕方には、庭先で家族や愛犬とお茶を楽しむ生活だった。

 

ジャク・マイヨールとは対照的な生き方である。移動型と定着型、あなたはいずれのタイプに憧れるだろうか。いうまでもなく、普通は、両方の要素を合わせ持っている。加えて、気分も変わるので、移動型モードの年と、何となく定着型の年があるのだろう。

 

ちなみに電話でたとえるなら、携帯電話は移動型、固定電話は定着型の象徴と言える。ただ、携帯電話がこれだけ普及しても、暮らしの本拠地を示す固定電話を手放さない人も多い。携帯電話と固定電話は性格が異なり、どちらも必要ということなのだろう。

 

 

住めば都も、遷都する。元来、遷都とは首都が移動すること。だいぶ前、国会を大きな船で開催し、日本の各都市を定期的に周回したらどうかという提案を見たことがある。首都機能の一部が、つねに移動する。各地域が活性化するという意見であった。

 

移動型と定着型という考え方は、自分の住まいを考える上でも、新しい発想を得られそうだ。例えば、複数の自宅を持つこと。それは経済的には大変だが、移動型と定着型の良い点を両方体験できるのかも知れない。

 

 

 

関沢英彦(文・イラスト)

発想コンサルタント。東京経済大学名誉教授。コピーライターをへて、生活系シンクタンクの立ち上げから所長へ。著書多数。現在、ヤフーニュースなどの個人ブログも執筆中。https://news.yahoo.co.jp/byline/sekizawahidehiko/

http://ameblo.jp/ideationconsultant/entry-12291077468.html

 

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