住めば都も、遷都する2018/8/3

たまには、住まい自身の声を聞いてみようか。たぶん、こんなことを言っているね。

 

「今日は、にぎやかだ。ああ、あの子たちが遊びに来たんだ。お誕生日のパーティーかな、ケーキもあるし。Kちゃんの好きな曲も流れている。いいね。こういう日は、みんな、ニコニコしている。こっちまで、ウキウキしてくる」

 

「うちは、どんなに騒いでも、下の階に音は響かない。我ながら、良くできた作りだと思う。それにしても、盛り上がっているな。もう、夜になってしまうぞ」

 

別の日、住まいは、こんなことをつぶやいていた。

 

「ああ、静かな一日だ。先日のにぎやかさもいいけれど、たまには、静寂の時間がいい。ご主人様、今日は、ずっと書斎コーナーで、読書と手紙書き。メールではなく、手書きの文面を貰うと、それはそれで嬉しいもの。でも、途中で窓の外の夕景に見入ってしまって。まあ、このゆったり感がいいのかな。こうした日は、住まいとしても、物音ひとつ立てないようにひっそりとしているのが、つとめ。そろそろ、日が沈みますな」

 

 

「人間は、友人や親戚を集めておしゃべりをしたいときと、ひとりで思いにふけるときがあるらしい。家族の中でも、一緒にいたいときと、別々に過ごしたいときがあって。私たち、住まいは、どんな気持ちにも対応できるように、色んな空間を用意してあげないと。同じ部屋でも、ちょっと照明を変えるだけでも雰囲気を変えられる方がいいね」

 

住まいも頑張っている。住んでいる私たちが、少し工夫すれば、パーティー気分も、孤独な時も生み出せる。住まいとの相性は、時間をかけて作るものなのだろう。

 

ただ、住まいは、場所に縛り付けられている。樹木と同じだ。まったく違う環境に暮らしたいと思ったら、私たちが引っ越しすればいい。住めば都も、遷都する。いままでの住まいは、どなたか、違う家族が住んでくれる。そうしたら、また、住まいと家族との対話が始まる。家は人が住まないとダメになっていく。人間と住まいは、支え合って生きているのかも知れないな。

 

 

関沢英彦(文・イラスト)

発想コンサルタント。東京経済大学名誉教授。コピーライターをへて、生活系シンクタンクの立ち上げから所長へ。著書多数。現在、ヤフーニュースなどの個人ブログも執筆中。

https://news.yahoo.co.jp/byline/sekizawahidehiko/

http://ameblo.jp/ideationconsultant/entry-12291077468.html

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