LIFE IS BEAUTIFUL!!! 山田英幸のもの・ものがたり2018/8/1

好きなものだけに囲まれて暮らしたい。

毎日の暮らしを、わがままに、自分好みに美しく整えたい。

そのために必要なのはたっぷりのお金!!

ではありません。

ちょっとしたアイディアや工夫、少しの手間、そして何より一番大切なのはどれだけそのものを愛せるか、ということ。

 

身のまわりのものを愛する、ということは、暮らしを愛する、ということ。

それはつまり、人生を、自分を愛する、ということだと思います。

ちょっとしたことで、暮らしはもっと美しくなる。

人生も、もっと美しくなるのではないでしょうか。

 

 

いま、手元にあるエルメスのスカーフ「キャレ」。

 

大昔、大学生だったころ「嗚呼!花の応援団」という漫画が流行りました。関西風の激しいギャグが新鮮で、時々読んでは笑っていましたが、そのころは俗に「団」と呼ばれていた応援団が流行っていたのでしょうか、いろいろ面白い話を聞きました。

彼らは学ランを特注するらしいのですが、当然裏地にも凝るわけです。龍や虎などのシルクはありきたりですが、しゃれものになるとエルメスのスカーフ「キャレ」を裏地に使うのだとか。

学ランの裏にするにはキャレが2枚いるらしく、むくつけき団の若者がエルメスのショップでキャレを選んでいるさまを想像すると微笑ましいものがありました。

 

そのころ、海外旅行もポピュラーになり、またニュートラやBCBGなどの本物志向の「上質ファッション」が流行り始め、みんなパリの本店や飛行機の機内販売でエルメスのキャレを買ったものです。

こういう僕も、ガールフレンドや母へのお土産に、また自分用にも、と何枚も買いました。

一世を風靡したキャレ、みなさんのクローゼットにも何枚かは入っているのではないでしょうか。

 

シックな結城紬の羽裏をエルメスに。柄はポピュラーな「クレ(鍵)」。 この激しいコントラストがバブル期を思い出させてくれます。

 

時は流れ、最近着物を着るようになり、いただいた結城のアンサンブルのサイズを直して仕立て直してもらうときに、ふと思い出したのが例の「応援団」の裏地の話。

このところすっかり出番もなくなっていたエルメスのキャレを羽裏にしてもらうことにしたのです。

それが上の写真です。見えないおしゃれとして自己満足が大きいのですが、何しろ軽くてあったかい。

味を占めて、もう一枚白大島のアンサンブルも別のキャレで仕立ててもらいました。

 

白大島の羽裏には「ムガールの馬」。

 

隠れたおしゃれ、なのに見せびらかす私。

 

かようにスカーフとして首に巻く以外にも活躍するキャレですが、このあともっと斬新な使い方をすることになるのです。

 

横森美奈子さんの「NEW利休Bag」と自作の仕覆。 バッグのメインの布はエルメスのキャレから。

 

そのころ、敬愛するファッションデザイナーの横森美奈子さんにお誘いいただき、彼女の「NEW利休Bag」の展覧会に僕の仕覆も出品させていただくことになりました。その時に横森さんが、「やまんちゃ(ぼくのこと)、バッグに使ったエルメスのスカーフなんかの余り布がいっぱいあるんだけど、仕覆になら使えるんじゃない?」と言ってくださったのです。

仕覆にエルメス!!!なんて思いもしませんでしたが、横森さんのバッグとの良いコラボレーションというとおこがましいですが、つながりもできるだろうし、面白いアイディアだと直感し、もちろん大喜びで端切れをたくさんいただいたのです。

 

横森さんからいただいたエルメスのキャレ。大胆に真ん中部分がバッグに使われ、残りは僕の仕覆になるわけです。

 

仕覆の裏は伝統的には滑りのいい「海気」「甲斐絹」(かいき)と呼ばれる絹を使うことが多いのですが、エルメスのキャレも非常に品質のいいシルクです。特徴的なカラフルで大胆な柄は小さくトリミングすることで余計大胆になり、また、緒を解いて裏に華やかな模様が出てくる「裏勝り」になるところもうれしい驚きでした。

お客さんたちも、「キャーエルメスなの~!!??贅沢~」と喜んでくださいました。

そんなわけで、自分の仕覆作品にエルメスのキャレを使う、というのはいまや一つの特徴になっており、なによりそんなアイディアをくださった横森さんには感謝しかありません。ついつい決まりやルールに縛られがちな自分ですが、横森さんの柔軟な発想にはいつも驚き、感心、尊敬しているのです。

 

ただ、エルメスのキャレ、すごく縫いにくいです。

スカーフとしても皺にならないことで有名なキャレ。アイロンがなかなか効かないのです。すぐふんわり元に戻ってしまう。そんなところにもエルメスの品質を感じました。

 

バカラの星模様のデキャンタの仕覆裏には「アポロ」の柄のキャレを。

 

李朝の小皿にはドラゴンの柄のキャレを。

 

根来の盃にはアラベスク風のキャレを。

 

そんなわけで、最近は自分でもキャレを買い集めているのですが、ヤフオクなどでうまくすれば安く買うこともできます。冒頭の写真はそうやって材料用に買い集めたキャレです。

また、エルメスではキャレをそのまま使ったシャツやプルオーバーも出しています。昔買ったものを2枚ほど持っていたのですが、もう着ることもないと思い、これらも切り刻んで仕覆の裏にしてしまおうかな、と思いましたがやはり思いとどまりました。

キャレ一枚買うのにもけっこういい値段なんですが、シャツ一枚作るのにキャレは4枚必要なんだとか。もったいないもったいない。

しばらくは自分で着て楽しんで、そのうちまた考えることにしましょう。

 

力のある素材やデザインは強い。そのうえブランドとしてのバリューも持っているのですから、エルメスのキャレは小さな端切れになっても光り輝くのでした。

 

キャレで作られたメンズのシャツのコレクション。

 

展示会での横森美奈子さんとキャレのシャツを着た私。

 

 

山田英幸

幼い時から美しいものが好きで、長年にわたり骨董・アンティーク・古裂・ヴィンテージテキスタイルなどを収集。

また手仕事も得意で、洋服、帽子、人形、テディベアなどを制作するが、1990年頃「究極の手仕事・仕覆」に出会い、現在も制作を続けている。

西麻布「ルベイン」「銀座松屋」などで仕覆展示会開催。

自称「手芸の国の王子様」。

 

とにかく、「もの」が好き。それにちょっとした工夫や手仕事をプラスすることで、身の回りを美しく、毎日を楽しくしたいと思っている。

愛知県名古屋市生まれ。現広告代理店クリエイティブディレクター。

 

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