LIFE IS BEAUTIFUL!!! 山田英幸のもの・ものがたり2018/7/11

好きなものだけに囲まれて暮らしたい。

毎日の暮らしを、わがままに、自分好みに美しく整えたい。

そのために必要なのはたっぷりのお金!!

ではありません。

ちょっとしたアイディアや工夫、少しの手間、そして何より一番大切なのはどれだけそのものを愛せるか、ということ。

 

身のまわりのものを愛する、ということは、暮らしを愛する、ということ。

それはつまり、人生を、自分を愛する、ということだと思います。

ちょっとしたことで、暮らしはもっと美しくなる。

人生も、もっと美しくなるのではないでしょうか。

 

うちにある、「春海バカラ」の鉢。うしろのグラスは、古いバカラですが、これは「春海」ではなく、ダイヤモンドカットの型もの。クリスタルの透明感や重さが違います。

 

日本や日本人の素晴らしさに関しては最近特にやかましく言われていますが、そのなかでも「豊かな四季があること」「季節感をたいせつにすること」は特筆すべきところではないでしょうか。

日本料理では、器にも四季があります。その感覚のこまやかさは世界でも例のないことだと思います。四季どころか、お正月やひな祭りなどの催事にもそれ用の器があったりして、よく「日本料理屋さんは開店するときが大変」と言いますよね。

 

今回は暑い夏にこそ使いたいガラスの器。

粋人たちが憧れてやまない器に「春海バカラ」というものがあります。その昔お茶人たちは、大阪の「春海商会」という美術貿易商を通じてバカラにクリスタルの懐石道具を注文していました。夏の懐石道具にするためです。

今でも関西の骨董屋さんに、クリスタルの水指や、向付や四ツ碗(飯と汁を入れる蓋つきの碗)、徳利やビアタンブラーなどの酒器などが「春海商会」の箱に入って出てくることがあります。かなり高価なのでとても手が出ませんが。

そもそもヨーロッパ風のデコラティブデザインが特徴のバカラのクリスタルの中から、「茶の湯」に合いそうなものを選び取り、アレンジして自分たちのものにする。日本人の美意識と、自分の「好み」を追求する執念はすごいものだな、と感心します。

たぶん最初誰かが「どや?おもろいやろ?」と思いつき、始めたのだとおもいますが、驚く客の顔を見てしたり顔をする注文主の表情までもが目に浮かぶようです。

 

涼しげなガラスの器。口が金で巻いてあるのも和風です。

 

上の写真のガラスの小鉢は、一見「春海バカラ」に似ていますがどうでしょうか。春海バカラにも似たデザインのものがあり、日本では「千筋文(ちすじもん)」と呼ばれています。

これは、とても安く手に入れましたが、それでも古い木の箱に入っていて、「ギヤマン鉢 拾」と書いてありました。なので、もしかしたら、もしかして・・・。

 

蛸と葱、わかめと茗荷のぬた

 

お料理は「蛸と葱の名古屋風ぬた」。

僕が生まれ育った名古屋ではぬたも八丁味噌で作り、わが家では単に「味噌和え」と呼んでいました。

慣れ親しんだ家族の味として懐かしいのではありますが、特に夏場は八丁味噌が恋しくなります。キリッとした味が季節に合っていると思うのです。

あ、名古屋の人は味噌カツや味噌煮込みうどんなどを毎日食べてるわけじゃありません。何でもかんでも味噌味、じゃありませんから。

ただ、味噌汁だけは赤出し、八丁味噌が好きです。

蛇足でした。

 

 

ところで最近、「白和え」に凝っています。豆腐とゴマペーストで作る簡単なものですが、比較的健康的だと思うのと、夏らしい涼しげな見た目が好きなのです。

上の写真は、これも100年ほど前のバカラの楕円形の小鉢に焼き茄子の白和えを盛りました。夏の風情です。

このバカラの鉢は残念ながら春海バカラではなく、当時のバカラの型ものの量産品ですが、こんなデザインをもとに日本の茶人たちは懐石道具を注文したんでしょう。あらためて昔の茶人たちが懐石に似合う道具を遠い異国のブランドから探し出したその慧眼には感心します。

 

 

現代のバカラよりは品質が劣るように感じますが、それでもずっしり重いです。ちゃんとバカラの刻印が。

 

和食器を洋食に使うのは今ではとてもポピュラーというか、むしろ普通の家庭ではそんな食器使いをしている方のほうが多いのではないでしょうか。反対に、和食に洋食器はけっこう難しいような気がします。

和食器の懐の深さに比べ、イメージが限定されすぎてしまう洋食器。そんななか「和食にも使える洋食器」の数少ないものがバカラの器なのです。

特に蒸し暑い日本の夏。涼しげなクリスタルの器の出番も多くなりそうです。

 

バカラの展覧会にも出ていた、「春海バカラ」。菊型の小皿です。

 

 

山田英幸

幼い時から美しいものが好きで、長年にわたり骨董・アンティーク・古裂・ヴィンテージテキスタイルなどを収集。

また手仕事も得意で、洋服、帽子、人形、テディベアなどを制作するが、1990年頃「究極の手仕事・仕覆」に出会い、現在も制作を続けている。

西麻布「ルベイン」「銀座松屋」などで仕覆展示会開催。

自称「手芸の国の王子様」。

 

とにかく、「もの」が好き。それにちょっとした工夫や手仕事をプラスすることで、身の回りを美しく、毎日を楽しくしたいと思っている。

愛知県名古屋市生まれ。現広告代理店クリエイティブディレクター。

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