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世界の住居スタイル2017/8/29

パリのお隣マラコフから

パリからペリフェリクを南にほんの少し出たところにある街、マラコフ。メトロの13号線で、駅ひとつパリから出ただけなのに、パリの街並の代名詞であるアパルトマンは影を潜め、小さな家が並ぶ風景が広がります。街は緑であふれ、プチ田舎のような、のどかな雰囲気です。

 

こちらに可愛らしい一軒家を構えるこのMadame は、ご自身は定年退職し、旦那さんとはお別れし、息子さんが結婚し海外移住。独りでしばらく住んでいましたが、それでは寂しいしもったいないので、現在は学生にひと部屋貸しています。シェアハウスですね。とは言っても、地上階(日本式1階)は学生さんの部屋、キッチン、マダムの書斎、洗濯機部屋、トイレ、バスルーム。プルミエール・エタージュ(日本式2階)はサロン、植物でいっぱいのバルコニー、マダムの寝室、トイレ、バスルーム。つまり、各々が各々のバスルームとトイレを使っています。パリでは住宅不足が問題になっており、特に学生が住める物件不足が深刻。一方で、かつては家族で住んでいた広いアパルトマン内の部屋余りに悩むマダムも多く、部屋貸しの物件が増えています。昭和の「下宿」のような感じでしょうか。一般的に(もちろん場所や物件など様々ですが)、家賃は一人暮らし用のストゥディオに比べ、6割程度で済む印象です。

 

さて、こちらの物件の白眉は、広いダイニングスタイルのキッチン。大理石台のアイランドがあり、パンを切ったり、パイ生地をささっとこねたりするのはこの台の上で。コンロは4つ。弱火専用のコンロもあり、ことことじっくり煮込むのに最適。お洒落パリジェンヌに人気の、銀色が美しいお鍋達は、イタリア製。実はこちらのMadameのオリジンはイタリアで、ご自身はコートダジュール生まれ。なるほど、テラコッタ使いがすてきな、南仏スタイルのキッチンですね。Madame は食後にティザーヌを体調に合わせてたっぷり飲むのが習慣で、紅茶ポットも処狭しと並んでいます。

 

地上階の学生さんの部屋を覗くと、アップライトピアノがかなりの存在感で置かれています。パリで音楽可、さらにはピアノ可の物件を探すのは、なかなか至難の業で、しかも悲しいほど狭かったり、はたまた、予算オーバーになりがち。時間制限が厳しい場合も。でも、こういった戸建なら、遠慮せずに練習に励めるわけです。「引越のときに、ピアノは専用の業者さんにお願いしたんですが、こっちの部屋の方が前より全然いいねって。前はパリジャンも憧れるサンルイ島だったんですよ。でも、ピアノ可物件だったから地上階で日当りも悪くて…」

 

2階のサロンを拝見すると、なんと、こちらにはMadameのグランドピアノが。子育てが一段落した頃に、かつて情熱を傾けていたピアノを再開したそう。家主とロカテール、音楽という共通言語でつながった縁(物件ですが)ですね。
週に3回立つマルシェはすぐそこ。スーパーも近くに2軒、カフェも映画館も図書館も郵便局も。小さな街ならではの「どこでも徒歩圏内」は、大きな魅力です。

パリという都市は実際、暮らしてもとても楽しい。おしゃれなカフェも、美味しいビストロも、有名なブーランジェリーも美術館も数えきれないほどあって、都会ならではの高揚した空気感、華やかさと喧噪。でも、優先順位をちょっと変えてみると、生活スタイルも変わりそうな気配です。マラコフには、パリにはないゆったりした時間が流れていました。

 

Reported by MOMOKO:

在パリ歴5年。引越魔、左岸を中心に6つのアパルトマンに住んだ経験あり。複数のvisite をして物件決定しており、物件眼に長ける(と思う)。地元人カフェで、地味だけど満足度の高いお茶をするのが好き。

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