LIFE IS BEAUTIFUL!!! 山田英幸のもの・ものがたり2018/3/30

好きなものだけに囲まれて暮らしたい。
毎日の暮らしを、わがままに、自分好みに美しく整えたい。
そのために必要なのはたっぷりのお金!!
ではありません。
ちょっとしたアイディアや工夫、少しの手間、そして何より一番大切なのはどれだけそのものを愛せるか、ということ。

身のまわりのものを愛する、ということは、暮らしを愛する、ということ。
それはつまり、人生を、自分を愛する、ということだと思います。
ちょっとしたことで、暮らしはもっと美しくなる。
人生も、もっと美しくなるのではないでしょうか。

 

夏の椀盛。冬瓜と獅子唐を沢鷹(おもだか)蒔絵の煮物椀で。

 

季節がめぐってくると、自然にその季節のものが食べたくなります。この季節ですと筍や菜の花、蛤など。初夏なら鰹やホタルイカなんかもいいですね。茗荷やトウモロコシなどの野菜も、季節の到来を教えてくれます。

 

そんな食材を買ってきて調理するのですが、難しいことはしません。さっと茹でたり蒸したり、汁の具にしたり。
そして、僕にとって食材と同じくらい、いえ、食材以上に大事なのが器。その季節にしか使えない器もありますので、年に一度は忘れないで使ってやらないと器がかわいそうです。

 

器好き、料理(食べること)好き。
そこで、懐石料理風のしつらえをしてときどき一人で遊んでいます。
器を選び、折敷の上に並べ、献立(というほどのものではありませんが)を考えるのです。

 

夏の折敷。茗荷ととうもろこしの飯と、南瓜の八丁味噌汁。向付は生ハムメロン。

 

江戸中~後期の牡丹花文伊万里染付椀に、汁はホトトギス蒔絵。向付は備前葉形皿

 

 

バカラ風切子の船形向付を置き合わせて。真塗の四つ椀で折敷は隅切り。

 

戸棚からいろいろな器を出してきて、折敷の上に並べてみる。
だいたい、「これは使いたい」という器があって、それを中心に考えていきます。

上の写真だと、切子の船形向付を使いたいので、それに合う料理を考えます。当然夏らしい涼しげな料理、「鱧」や「洗い」などがいいのでしょうが、なかなか調理が難しいですね。ホタルイカの酢味噌和えなんかでもいいかな?
四つ椀はすっきりと真塗り(黒)にして、汁は八丁味噌でキリッと夏らしく。折敷とお椀には茶筅で露を打って・・・・などと考えているときが一番楽しいです。

 

ヒマがあると、一人でこんなことをやっては写真に撮り、フェイスブックに上げていたのですが、僕のフェイスブックフレンドには食の専門家の方々も数多くいらっしゃるんです。
そんな方たちに見られたら恥ずかしいな、と思いつつも「味は写真に写らない」ことをいいことに、器でなんとかごまかした「懐石料理練習」の様子を上げていました。
それを見た専門家の方が、あるとき「(茶)懐石料理は素人料理でいいんです。」と言ってくださいました。
お茶事の料理のことを言われたんだと思いますが、亭主が心を砕き、客のことを考え、季節のものや客の好きそうなものを調えてお出しする、その「気持ち」こそが大切である、ということだと理解しました。

 

浄法寺塗の四つ椀を使いたくて考えた献立。朱塗りの盆で。飯は「六本木 与太呂」の鯛めし。

 

汁は西京味噌。よもぎ麩に練りからし。

 

向付は明時代の古染で。鮪と烏賊の煎り酒和え。

 

 

いつかは大阪の「高麗橋吉兆」に行って、バカラの懐石道具で夏懐石をいただく・・・・というのが長年の夢でした。
しかし、高麗橋吉兆はもうすぐ耐震工事に入るそうで、その夢はまたしばらくはかないそうにありません。

 

最高の技術や食材を最高の器やしつらえで味わう、料亭の懐石料理ももちろんそれはそれで素晴らしいものですが、それ以上に茶事の懐石料理、そこには亭主が客を思う気持ちが表れていて、その精神は最も高い次元の日本文化だとさえ思います。

 

最近「ほめられ○○」のような表現を散見しますが、そういう「自分のため」ではなく、あくまで「客のため」という滅私の精神。さらに言えば「おもてなしします」でもなく「何のおもてなしもできませんが」という精神。そこにこそ日本の美しさがあるのではないかと思います。
懐石の語源は、禅僧が空腹をしのぐために温めた石を懐に入れたこと(温石)に由来するそうです。
決してご豪華でも華美でもないけれど、いっとき懐が温かくなるような、そんな料理を作って食べさせる相手がいればなあ、と思う今日この頃です。

 

季節の定番、若竹煮。「吉野椀」といわれる朱の蒔絵の椀で。

 

 

山田英幸

幼い時から美しいものが好きで、長年にわたり骨董・アンティーク・古裂・ヴィンテージテキスタイルなどを収集。

また手仕事も得意で、洋服、帽子、人形、テディベアなどを制作するが、1990年頃「究極の手仕事・仕覆」に出会い、現在も制作を続けている。

西麻布「ルベイン」「銀座松屋」などで仕覆展示会開催。

自称「手芸の国の王子様」。

 

とにかく、「もの」が好き。それにちょっとした工夫や手仕事をプラスすることで、身の回りを美しく、毎日を楽しくしたいと思っている。

愛知県名古屋市生まれ。現広告代理店クリエイティブディレクター。

LIFE IS BEAUTIFUL!!! 山田英幸のもの・ものがたり についての記事

もっと見る