LIFE IS BEAUTIFUL!!! 山田英幸のもの・ものがたり2018/2/20

好きなものだけに囲まれて暮らしたい。
毎日の暮らしを、わがままに、自分好みに美しく整えたい。
そのために必要なのはたっぷりのお金!!
ではありません。
ちょっとしたアイディアや工夫、少しの手間、そして何より一番大切なのはどれだけそのものを愛せるか、ということ。

身のまわりのものを愛する、ということは、暮らしを愛する、ということ。
それはつまり、人生を、自分を愛する、ということだと思います。
ちょっとしたことで、暮らしはもっと美しくなる。
人生も、もっと美しくなるのではないでしょうか。

 

 

18世紀のイメージでお茶のセットを。銀のティーポットは1790年ごろの英国製です。シリンダーシェイプといって、ジョージ案の典型的な形。ティースプーンも同じ時代。

 

「チャイニーズ・エクスポート」というジャンルの骨董があります。
文字通り中国からの輸出品なのですが、陶磁器や銀器、その他中国から輸出されたものの総称として使われています。
今回はそんななかから「チャイニーズ・エクスポート」のティーカップについて。

 

お茶の文化はそもそも中国ではじまり、それが日本やヨーロッパに伝わったのですが、ヨーロッパに伝わるきっかけになったのは、戦国時代に来日した宣教師たちが日本の茶の文化に驚き、それを本国に語り伝えたのがそもそもなんだそうです。
ヨーロッパに初めて茶が伝えられたのは1610年。東インド会社によってだそうですが、当時ヨーロッパの中国貿易はオランダが独占していて、イギリスはオランダからのお茶の輸入を禁止し、オランダとイギリスは戦争まではじめてしまいます。(英蘭戦争)
結局戦争はイギリスが勝利、イギリスはお茶大国になっていくのです。
(ちなみに、インドで茶の樹(アッサム)が発見されたのはずっとあと、1823年のことだそうです。)

 

17世紀や18世紀のオランダやイギリスの絵画を見ると、上流階級の人たちが小さな茶碗でお茶を飲んでいるところが描かれています。
初期のころはそれこそ中国ふうのブルーアンドホワイトの染付の椀皿が使われています。茶葉とともに椀皿も中国から輸出されていたのです。(船を安定させるため、船底に積み込まれていたんだそうです。)

 

 

「ロココ」の絵付けの、18世紀末ごろのカップアンドソーサー。

 

ヨーロッパで磁器が初めて焼かれたのは1710年のマイセンですが、それでもまだまだ磁器は中国から輸入されていました。
上の写真はもう少し時代が下がり、1700年代後半のもの。「チャイニーズ・エクスポート」つまり中国製です。
図柄はその頃の様式「ロココ」ふうの瀟洒な小花柄。中国がヨーロッパ市場の好みを理解して作っていたことがわかります。しかしよく見ると、カップの見込みには小さな蘭の花のようなものも描かれていたり、と、中国で作られたと聞くとなるほど、と思わせてくれます。

 

 

別の「チャイニーズエクスポート」のティーカップ。 みんなよく似ているので、違うものでもよくまとまります

 

そして特に注目していただきたいのは、この時代のカップにはまだ取っ手がついていないこと。中国風の、あるいは日本の茶碗の形です。
18世紀にはティーカップに取っ手が付くようになっていきますが、その理由はお茶に比べ紅茶は熱いお湯を使うから、とか諸説あるようです。
また、このころのソーサーは淵が高く反り返っており、これはカップのお茶をソーサーにあけて、冷ましながら飲んだから、とも言われています。カップを受ける「くぼみ」がついていないのもそういうわけでしょう。

 

 

上のカップとその仕覆。古いヨーロッパのブロケード。

 

18世紀という、西洋骨董の中では比較的古い部類に入る「チャイニーズ・エクスポート」のティーカップですが、一客だけのものとかソーサーの無いものとかなどはまだまだ安く手に入ります。
特にソーサーの無いものはもっといろいろな使い方ができそうな気がして、以前やった仕覆の展示会「ポケットにぐい呑を。」ではぐい呑に見立てることにしました。
ぐい呑としては少し大振りですが、焼酎などにもちょうどいいのでは?と思います。
毎回2~3点出品しましたが大変人気が高く、特に女性の方が喜んでくださいます。仕覆も雰囲気を合わせ、ヨーロッパの古い布を使いました。

 

こうやって見るとやはり「中国風味」なのがわかります。バラ?牡丹みたい。 仕覆はベルエポックのフランスのリボン。

 

最近ではインバウンドなどといって中国からの観光客も大勢日本に来るようになりましたが、それこそ少し前までは中国は「近くて遠い国」でした。政治状況や外交関係も微妙で、日本人の中にも「ヘイト」するような輩も見かけます。
しかし、この「チャイニーズ・エクスポート」などを見ていると、「中国ってすごい国なんだな」と思わざるを得ません。

 

日本文化の多くはもともと中国から渡ってきたものだし、日本人だって多くは中国、朝鮮が祖先です。
日本だけでなく、その影響はヨーロッパにまで広がっていきました。
あらためて、われわれにとっての「文化の祖先」としての中国を思うと、もっとリスペクトしてもいいのにな、と思います。
自分たちの中にも脈々と流れている「文化の血」。
中国は実は「近くて近い国」だと思うのです。

 

 

山田英幸
幼い時から美しいものが好きで、長年にわたり骨董・アンティーク・古裂・ヴィンテージテキスタイルなどを収集。
また手仕事も得意で、洋服、帽子、人形、テディベアなどを制作するが、1990年頃「究極の手仕事・仕覆」に出会い、現在も制作を続けている。
西麻布「ルベイン」「銀座松屋」などで仕覆展示会開催。
自称「手芸の国の王子様」。

とにかく、「もの」が好き。それにちょっとした工夫や手仕事をプラスすることで、身の回りを美しく、毎日を楽しくしたいと思っている。
愛知県名古屋市生まれ。現広告代理店クリエイティブディレクター。

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