LIFE IS BEAUTIFUL!!! 山田英幸のもの・ものがたり2018/2/12

好きなものだけに囲まれて暮らしたい。

毎日の暮らしを、わがままに、自分好みに美しく整えたい。

そのために必要なのはたっぷりのお金!!

ではありません。

ちょっとしたアイディアや工夫、少しの手間、そして何より一番大切なのはどれだけそのものを愛せるか、ということ。

 

身のまわりのものを愛する、ということは、暮らしを愛する、ということ。

それはつまり、人生を、自分を愛する、ということだと思います。

ちょっとしたことで、暮らしはもっと美しくなる。

人生も、もっと美しくなるのではないでしょうか。

 

 

茶箱に組み込んだ煎茶茶碗。5客の間には縮緬の「へだて」を。

 

趣味で始めた仕覆作りですが、続けるにしたがいいろいろな方に見ていただくことも増え、たまに展示会を開いたりしているのですが、その時必ずみなさんが面白がってくださるのが「へだて」です。

「へだて」とは「隔てる」から来ているのだと思いますが、器と器の間に挟むクッションのようなもの。

 

例えば茶籠や茶箱には、茶碗を二つ組み込むことがあります。そんな時は茶碗二つを重ねて組み入れるのですが、受けの茶碗と上の茶碗の間に「へだて」を挟みます。上の茶碗には仕覆を着せた棗などの茶器を入れ、それらすべてをまた仕覆でくるみます。

目的は器と器の間の緩衝材。仕覆をぴっちりかけたいこともあり、「へだて」自体も、ぴっちり器の内側に沿うように、ノッチを入れて作ります。古い縮緬などに薄く綿を入れて縫うのですが、ノッチ(切り込み)部分の縫い方がなかなか難しいものではあります。

 

茶碗二つの間に挟まれているのが「へだて」。

 

ひろげると三弁のお花みたいなかたちです。

 

このように、「へだて」は表舞台にはめったに登場しないので、みなさんもあまりご存じないのかもしれません。

僕はそもそも自分が買い集めた骨董をきちんとしまい、(大げさに言えば)次世代に受け渡すために仕覆を作っていましたので、ですからそれこそ、皿などの食器にまで仕覆を着せ、「へだて」を挟んでいました。

和食器は、多くは5客あるいは10客揃っているのをよしとします。

5客分を重ねて仕覆を着せるとすると、「へだて」は4枚必要です。

同じものを4枚縫うのはなかなか面倒で飽きる仕事なのですが、我ながらよくやったものだと思います。

 

藍九谷の富士山型の向付5客(1680年頃)。仕覆は18世紀~19世紀の手描き印度更紗。

 

間にはこのような形の「へだて」が。 変形皿に沿うように型紙を切っていったら、人型みたいになりました。

 

蝶々の形の変形皿。これも仕覆は古い印度更紗。

 

エンゼルのような「へだて」のかたち。古い縮緬です。

 

また、変形のお皿に沿わせるのには、面白い形の「へだて」が必要になります。平面に近いものならまだしも、器が深くなると立体的な展開図になり、それがすぅっと器の内側にきれいに収まるさまが、ある「カタルシス」を呼ぶのではないでしょうか?あはは、ちょっと大げさでしたね。

 

京都「恋壷洞」で買った藍九谷白磁(1650年ごろ)の小皿2客。 へだては器のデザインに合わせて片身替りにしました。

 

同じく藍九谷(1650年ごろ)の分銅形皿2客。おもしろい形の「へだて」になりました。

 

もちろん、普段の食器を片づけるときに、このような「へだて」は使いません。それこそ「プチプチ」でも挟んどけばじゅうぶんなんでしょうが、それではあまりにも見た目も悪いし、気持ちも上がらない。だいいち化学素材はホコリを呼ぶし陶器や漆器などの素材と相性が悪いような気がします。ですから、普段の食器を重ねるときは、間に古い布の端切れや小さな布巾などを挟んでいます。

「へだて」はつまり、ほんとうに大切なものにしかあつらえないのですが、その器の形にピッタリ合った「オートクチュール感」というか、「そのものにしか使えない特別感」が、既製品全盛の時代にかえって新鮮に映るのではないでしょうか。

 

ときどき骨董店などで、古い器に、本当にぴったりきれいに作られた「へだて」を見ることがあります。「沿っている」という表現がぴったりだと思うのもまさにそんなとき。

機能のためだけならここまでしなくても、と思うのですが、僕はそこに、そのものを愛した所有者の思いと、究極の技術によってそれにこたえようとした古の職人たちのプライドが見えて、うれしくなるのです。

 

 

江戸中期の伊万里、濁し手の白磁小皿と「へだて」。

 

 

 

山田英幸

幼い時から美しいものが好きで、長年にわたり骨董・アンティーク・古裂・ヴィンテージテキスタイルなどを収集。

また手仕事も得意で、洋服、帽子、人形、テディベアなどを制作するが、1990年頃「究極の手仕事・仕覆」に出会い、現在も制作を続けている。

西麻布「ルベイン」「銀座松屋」などで仕覆展示会開催。

自称「手芸の国の王子様」。

 

とにかく、「もの」が好き。それにちょっとした工夫や手仕事をプラスすることで、身の回りを美しく、毎日を楽しくしたいと思っている。

愛知県名古屋市生まれ。現広告代理店クリエイティブディレクター。

 

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