LIFE IS BEAUTIFUL!!! 山田英幸のもの・ものがたり2018/1/29

好きなものだけに囲まれて暮らしたい。

毎日の暮らしを、わがままに、自分好みに美しく整えたい。

そのために必要なのはたっぷりのお金!!

ではありません。

ちょっとしたアイディアや工夫、少しの手間、そして何より一番大切なのはどれだけそのものを愛せるか、ということ。

 

身のまわりのものを愛する、ということは、暮らしを愛する、ということ。

それはつまり、人生を、自分を愛する、ということだと思います。

ちょっとしたことで、暮らしはもっと美しくなる。

人生も、もっと美しくなるのではないでしょうか。

 

 

 

さまざまな骨董を集め、仕覆も自作した茶籠揃え。すべてがこの籠の中に入ります。 籠の仕覆は古い印度更紗。その模様から、この一組に「なでしこ」と銘をつけました。

 

仕覆を作り始めたころに知ったのが「茶籠」でした。

以前にも書きましたが、仕覆は現在のお茶の世界では濃茶の手前に出てくるくらいで、それ以外は文字通りカバーであり緩衝材として器物を保護するためのもの。つまり裏道具にすぎず、ひとさま(お茶の場合はお客)に見せるものではないのです。

僕も最初は「大切で大好きな骨董の器を保護するため」に仕覆を作っていましたが、それだと「しまうための仕覆」になってしまう。

淡交社の雑誌「別冊淡交 仕覆の悦び」に取材していただいたのも、そういった「美しくしまう」ための仕覆でした。

自分だけの楽しみのための仕覆に少し物足りなさも感じていました。

そんな折、、、、、、

 

僕に仕覆づくり(作り方ではなく、楽しさ)を教えてくれた女性は目黒の骨董屋さんでしたが、彼女は店番をしながらいつもチクチクと仕覆を縫っていました。

その店は茶籠や茶箱の道具を多く扱っており、それらの道具たちはふつうのお茶道具よりも小さくかわいらしく、そこにさまざまな古裂でぴったりと合った仕覆が作られていくさまはたいへん魅力的で、すぐさま自分でもやってみたくなったのです。

 

茶籠とは、両手に乗るほどの大きさの籠にお茶をたてる道具を一式組んで、お茶室でなくてもどこででも簡単にお茶がたてられるようにセットにしたものです。野点籠などとも呼ぶことがあります。

うるわしい季節、素敵な屋外の場所で茶籠を開く。するとそこには色とりどりの古裂の仕覆に包まれた小さなお道具がきっちり詰まっていて、まずその色合い、華やかさに一座は「おお!!!」となるわけです。

せっかく縫った仕覆、誰かに見てもらいたい。そう、茶籠の仕覆は「見せる仕覆」になりうることに気付いたのです。

 

茶籠の蓋を開くと・・・。 さまざまなアジアの古裂で仕覆を作りました。籠の内貼りも18世紀の印度更紗。

 

そんなわけで僕も茶籠を組んでみたいと思いました。

お茶人にとって茶籠を組むことは究極の楽しみで、一生かけて満足な茶籠が一つ組めるかどうか、などという話も聞きました。

道具にも、「お道具の格を合わせなくてならない」とか、仕覆の布にも格があり、、、、などさすがお茶の世界、暗黙のルールがいろいろあって、それをきちんと踏襲して組もうとなると、本当に難しいのです。もちろん、小さな籠にピッタリおさめるため、道具のサイズの問題などもあります。

これでいいと思って組んでいても、あとからもっといい道具が出てきたらそれに取り換えたくなります。本当にキリがない世界です。

 

そんなある時、荻窪の骨董ギャラリー「壽庵」で茶籠の展覧会があり、そこで店主の猪鼻さんにいろいろ教えていただいたのですが、一番驚いたのは「12か月の茶籠」を組もうとしている人がいる、という話。

1年12か月、それぞれの季節感で12個の茶籠を組むんだとか。

「一生かかってひとつ」もいいけど、僕にはこの「12か月」の話のほうが魅力的に思えてしまったのです。

 

茶器(棗)は「白粉解(おしろいどき)」といわれる江戸時代の化粧道具。きれいな梨地の金蒔絵です。インドネシアのモールといわれる絹で仕覆を作りました。

 

茶碗は祥瑞の明時代の火入れと緑唐津を重ねています。間には「へだて」をはさんで。 茶碗の中に茶器が入り、さらにすべてを仕覆で包んで。。

 

それ以来あちこちの骨董屋さんや骨董市、ネットオークションなどで茶籠を見つけるたびに買ってきました。いい籠はなかなか見つからず、また、組んであったりするものは中身も全部買わなくてはならないことも多く、そうするといらない道具も増えていきます。

なんとか満足のいく取り合わせができても、それぞれに着せる仕覆を作らなくてはならないのですが、それもまた大変な作業です。

 

そんなこんなで、20年ほどかかって現在やっと4つほどの茶籠が組めました。

ここにお見せしているのはそのうちの一つ。

籠はそんなに古いものではありませんが、裏貼りをして金具と紐をつけました。

道具はできるだけ華やかに、いろいろな「花」のイメージの道具を組んでいます。仕覆も、すべてアジアの古裂。それも花模様を中心に取り合わせ、華やかな一組にしました。

 

替茶器にしたのは17世紀のデルフト。象牙で蓋をあつらえました。仕覆は茜の印度更紗。

 

「芋の子」といわれる象牙の茶杓。袋はペルシャの更紗。香合は朱塗りの印池です。

 

茶筅筒は蒔絵の桐。茶巾筒は青楽で梅の模様。仕覆は両方とも古い印度更紗です。

 

 

以前母と一緒にハワイに旅行した時、(この茶籠ではありませんが)茶籠を持って行ったことがあります。

ホテルのベランダで波の音を聞きながら喫した一服はなかなか風情があり、抹茶好きの母は喜んでくれたと思います。

お湯はルームサービスで、「boiling water」と頼んだのですが、気を利かせてポットと一緒に割り箸まで持ってきてくれたのには苦笑しました。

 

ルームサービスのコーヒーでも、ペットボトルのお茶でも、「喫茶」という点は変わりません。しかし、外でも、旅先でも、わざわざ茶籠を持参してお茶を点て、特別の時間を楽しむ。めんどくさいことを特別にやるからこそ記憶に残るのかもしれませんが、そういった気持ちの余裕も大切だなあ、と思うのです。

 

ハレクラニのベランダの母。このころはまだ海外旅行もできました。

 

まだまだ組んでない茶籠や道具がいっぱいあります。仕覆も作らなくてはなりません。「12か月の茶籠」ができるかどうかはわかりませんが、これからも楽しんで作っていきたいと思っています。

そして、これからの季節、もっと外やいろいろなところで茶籠を使いたいな、とも。

 

集めて楽し。縫って楽し。使って楽し。

茶籠は僕にとって、いろいろな楽しみができる究極の趣味なのです。

 

 

山田英幸

幼い時から美しいものが好きで、長年にわたり骨董・アンティーク・古裂・ヴィンテージテキスタイルなどを収集。

また手仕事も得意で、洋服、帽子、人形、テディベアなどを制作するが、1990年頃「究極の手仕事・仕覆」に出会い、現在も制作を続けている。

西麻布「ルベイン」「銀座松屋」などで仕覆展示会開催。

自称「手芸の国の王子様」。

 

とにかく、「もの」が好き。それにちょっとした工夫や手仕事をプラスすることで、身の回りを美しく、毎日を楽しくしたいと思っている。

愛知県名古屋市生まれ。現広告代理店クリエイティブディレクター。

LIFE IS BEAUTIFUL!!! 山田英幸のもの・ものがたり についての記事

もっと見る