住めば都も、遷都する2018/1/28

 

台所は生きていくための基本。まず、食材を選ぶ。さて、どうやって料理をしようか。どの皿に盛ろうか。どんな配置で食卓に並べようか。1日3回、自分の生き方や考え方が試される・・・というのは大げさだけれど、それに近い大仕事だ。まあ、試されると言っても、それは家事としては楽しいものだが。

 

台所は、こうした食生活を営むためのアトリエだ。いや、自分の思いをカタチにしていく劇場なのかな。自分や家族が食べたいものを、素材に手を加えながら、現実のものにしていく・・・それは、まさしく表現でしょう。

 

食事作りは、時には面倒くさいこと。でも、手抜きをした数日が過ぎると、また、しっかりと料理をしたくなるからフシギ。たぶん、台所という劇場が、食材という俳優たちが、私たちの演出を待っているからだろうか。

 

せっかくのキッチン・シアターをどのようなデザインのものにするか。それは、住まいの居心地の良さを左右する。いうまでもなく、ここにも自分の人生観やセンスが活かされることになる。

 

 

海外のインテリア雑誌を見ていると、カントリー・キッチンとモダン・キッチンという区分けが出ている。田園風なのか、都会風なのかと言うこと。この違いは、表面的なものではなく、台所の主(もちろん、あなたのこと)の価値観に関わってくるのかも。

 

田園風を好む人は、加工品はなるべく減らして、食材の新鮮さにこだわる度合いが高い。買い物では、やや遠くても、有機野菜の店まで出かけるのかも知れない。調理にも、オリーブオイルやシードオイルを使うことが多い(たぶん)。時間が許すなら、料理において手間がかかっても構わないと思う人も多いはず。

 

一方、都会風、ハイテク風の台所を求める人は、合理派かしら。省ける手間は最小にしたいと考える。それでいて、おいしいものを求めている。カントリー・キッチンを好む人とは違った意味で、食材にはうるさい。

 

食材が揃った店で、一気に多くのものを買って冷蔵庫に溜めておく。それを臨機応変、巧みに組み合わせて、調理をしていく。お皿や器は、料理が際立つようにレストランのような真っ白のものを好んだりする。さて、あなたは、田園風と都会風、どちらのキッチン・シアターに立ちたいだろうか。

 

どちらのタイプの台所でも、料理は段階を追って進んでいく。料理とは、加熱する前の作業と、加熱作業に分けられる。火を通す前の作業には、洗う、とぐ、浸す、漬ける、切る、削る、砕く、つぶす、さらす、混ぜる、あえる、練る、溶く、泡立てるなどがあって。刺身やサラダのように生で食べる料理は、ここで終る。一方、加熱する場合は、煮る、茹でる、炊く、蒸す、燻す、焼く、煎る、炒める、揚げるといったやり方がある。

 

こう書き出してみると、料理ってタイヘン。まさに私たちは、毎日、アートの作業に携わっている。で、こうした生活の中心でもある台所をどうしたいのか。自分のイメージにあったデザインになっているのだろうか。あらためて台所を眺めてみたい。

 

もし、不満があるならば、新しい食の劇場を求めて引っ越しをするというのも、ひとつの手である。台所を住まいのまんなかに持ってくるとか、大きな窓のある開放的な空間にするとか、いまの住まいのリニューアルだけでは難しいようなデザインも可能だ。

 

住めば都も、遷都する。新しい住まいで、台所という生きる基本を変えてみる。すると、人生の彩りは変わるかも知れない。というのも、新しい劇場であれば、食材も料理も、食の演出も変わってくるからである。

 

 

 

関沢英彦

発想コンサルタント。東京経済大学名誉教授。コピーライターをへて、生活系シンクタンクの立ち上げから所長へ。著書多数。現在、ヤフーニュースなどの個人ブログも執筆中。https://news.yahoo.co.jp/byline/sekizawahidehiko/

http://ameblo.jp/ideationconsultant/entry-12291077468.html

 

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