LIFE IS BEAUTIFUL!!! 山田英幸のもの・ものがたり2018/1/21

好きなものだけに囲まれて暮らしたい。

毎日の暮らしを、わがままに、自分好みに美しく整えたい。

そのために必要なのはたっぷりのお金!!

ではありません。

ちょっとしたアイディアや工夫、少しの手間、そして何より一番大切なのはどれだけそのものを愛せるか、ということ。

 

身のまわりのものを愛する、ということは、暮らしを愛する、ということ。

それはつまり、人生を、自分を愛する、ということだと思います。

ちょっとしたことで、暮らしはもっと美しくなる。

人生も、もっと美しくなるのではないでしょうか。

 

今の季節にピッタリの水仙の文様の5寸皿。1650年ごろの「藍九谷」といわれる皿です。

 

飲食店を開店するときに、一番大変なのは和食屋さんだ、と聞いたことがあります。

和食は食器の種類が多く、器自体に季節もあるし、しかもその値段もピンからキリまで、、ちゃんとした料理をちゃんとした器で出そうと思ったら、器の準備だけでも大変なことになる、ということだそうです。

もちろん、フランス料理店でしたらワインのストックも大変でしょうし、中国料理の食材にはびっくりするような値段のものもあり、一概に和食だけが大変、とは言えないとは思うのですが。

しかし、そのくらい和食においては「器もごちそう」なのです。

 

和食器には「季節」がある。

このことは、日本に住んでいる私たちには当たり前のように思えますが、世界的にも珍しいことなんじゃないでしょうか?

西洋料理などはフルコースといっても最初から最後まで揃いのディナーサービスで出すことがリッチの証ですし、各家に自慢のセットはあっても、季節によって使い分ける、といった話はあまり聞きません。フォーマル、カジュアルくらいの使い分けくらいしかしないのではないでしょうか。

 

 

梅の文様のお皿二種。ともに江戸前期~中期の古伊万里。

 

日本人がこれほどまで季節に敏感なのは、もちろん豊かにめぐる四季があるからでしょうし、日本人の暮らしそのものが昔から「自然とともにある」ことの証だと思うのですが、昨今の近代的な都会の生活の中でこそ、そういった「季節感」を大切にしたいと思うのです。

 

そんなわけで今回は、「春の器」をいろいろ並べてみました。

季節の花や鳥などが描かれた器は、まるで日本画のような風情があります。

まだまだ寒く、まだこれから大雪が降る日も訪れるかもしれませんが、暦の上ではそろそろ春。ちょっとした日の光や雲の形などに遠くない春を感じることができるのもこんな季節です。

食器戸棚の奥から、あるいはトランクルームから、一年ぶりにこういった春の器を出してきます。代わりにかたづけるのは、お正月の器たち。

そう、大切なのは、「季節に先んじて」ということ。「待ちわびる」という気持ちを器使いにも沿わせるのです。

暖房の効いた部屋でこういった春の器たちを一足早く並べて、春の訪れを待つ。大好きな時間です。夏の器にも秋の器にもない、「春」という季節が持つうれしさがあります。

そう、そしてこういった器は「盛り」の時期に使うのは野暮。お花見に桜の柄の着物で行くようなもので、やはり「先んじて」使うのがいいとおもいます。

 

菱型の竹の皿。ひな祭りのころ専用のお皿です。

 

ご存じ「都をどり」の団子皿。これも、4月ごろしか使えない。

 

そして、春の器は花鳥だけではありません。「季節の行事」によって季節を表している器もあるのが面白いです。

上にあげた菱型皿や京都祇園の団子皿など、脈々と受け継がれてきた日本の文化、行事などが「季語」として私たちの暮らしの中に息づいています。そんなところも日本の器の面白いところだと思います。

 

桜の模様の蒔絵の煮物椀と初期伊万里の小皿。器に春極まれり!!

 

そして、筍の形の向付。これは筍以外を盛ったことないです。実は難しい器。

 

僕のように広告の仕事などをしていると、仕事上の季節はいつも実際の季節とはかなりずれていて、ましてや都会の空調の効いた部屋で毎日過ごしていると「季節」を感じることもなかなかできません。

せめて季節の花を飾り、ビルの隙間の空や木々を見て、スーパーで走りの食材を買ってきて、と、季節にはこちらから近づいて行くしかありません。

器はそんなときにいい助っ人になってくれます。

 

「今年もまたこの季節が巡ってきた。」

そんなことが何よりましてありがたく感じられるのは、年を取った証拠でしょうか?

繰り返す季節・・・去年と同じようで実は同じではない今年の春。

春の器を拭きながら、そんなことを思っています。

 

トクサやクローバーのような葉っぱが描かれた藍久谷の向付。春の芽吹き、「啓蟄の茶碗」と呼んでいます。

 

 

山田英幸

幼い時から美しいものが好きで、長年にわたり骨董・アンティーク・古裂・ヴィンテージテキスタイルなどを収集。

また手仕事も得意で、洋服、帽子、人形、テディベアなどを制作するが、1990年頃「究極の手仕事・仕覆」に出会い、現在も制作を続けている。

西麻布「ルベイン」「銀座松屋」などで仕覆展示会開催。

自称「手芸の国の王子様」。

 

とにかく、「もの」が好き。それにちょっとした工夫や手仕事をプラスすることで、身の回りを美しく、毎日を楽しくしたいと思っている。

愛知県名古屋市生まれ。現広告代理店クリエイティブディレクター。

 

LIFE IS BEAUTIFUL!!! 山田英幸のもの・ものがたり についての記事

もっと見る