LIFE IS BEAUTIFUL!!! 山田英幸のもの・ものがたり2018/1/3

好きなものだけに囲まれて暮らしたい。

毎日の暮らしを、わがままに、自分好みに美しく整えたい。

そのために必要なのはたっぷりのお金!!

ではありません。

ちょっとしたアイディアや工夫、少しの手間、そして何より一番大切なのはどれだけそのものを愛せるか、ということ。

 

身のまわりのものを愛する、ということは、暮らしを愛する、ということ。

それはつまり、人生を、自分を愛する、ということだと思います。

ちょっとしたことで、暮らしはもっと美しくなる。

人生も、もっと美しくなるのではないでしょうか。

 

 

 

[あけましておめでとうございます。

新年最初のブログ、ということで、最近僕が一番力を入れている「仕覆作り」、そして、仕覆の意義について書いていこうと思います。

本年もどうぞよろしくお願いします。]

 

19世紀イギリスの銅版転写のティーカップをぐい呑みに見立てました。 仕覆は19世紀のヨーロッパ更紗。仕覆展「ポケットにぐい呑みを3」より。

 

 

骨董好きには「酒器好き」というジャンルがあります。高い骨董といえば茶道具だったのですが、最近酒器の人気も非常に高く、したがって値段も高い。「唐津の立ちぐい」や「黄瀬戸」「李朝の堅手や粉引、白磁」などは垂涎の的と言われています。

そういう器は飲めば飲むほど肌が潤い、いい味が付いていきます。

「古唐津」とは桃山・江戸初期のものをいうのですが、その時代から人の手を伝わってきたものは「伝世」といい、400年のいい味が付いていて、それはそれは高い。簡単に買えたもんじゃあありません。そこで、われわれ庶民は「堀の手」など、窯場から掘り出されたキズものなんかを手に入れ、金継ぎしたりして愛用するのですが、そういったものには残念ながら伝世の味が付いていません。

しかたなく、とにかくたくさん酒を飲み、指で酒をこすりつけたり、酒を入れたままにしておいたりと、器にも酒を飲ませ、早く味をつけようと涙ぐましい努力をするのです。こういう行為を好事家は「育てる」といいます。

(このあたりの話は仲畑貴志さんの「この骨董が、アナタです」にくわしいので、ぜひご覧ください。)

 

大したことない「唐津」のぐい呑みと仕覆。

 

そういうわけで、とにかくぐい呑みを「育てたい」。

そのためには家で飲むだけじゃ足りず、すべての飲みの場、飲みのチャンスを「育てる」チャンスにしたくなるのは当然です。

彼らはポケットに発育途中のぐい呑みを忍ばせて、夜な夜な酒場に現れることになるわけです。

 

さて、仕覆を作るようになり、最初は自分で買い集めた愛する骨董たちをキチンと未来につなぐため、そして愛した「あかし」を器に添わせるために仕覆を作っていたのですが、ひょんなことから展示会の話をいただき、そこで思い出したのが、このぐい呑みの話です。

仕覆は、最近でこそ以前よりはポピュラーになりましたが、そのころはお茶をやっている人ぐらいしか知らないものだったのではないでしょうか?しかも、濃茶の手前に出てくるくらいで、その意味をきちんと理解している人も少なかったのではないかと思います。

 

つまり、仕覆といえばお茶の世界のものだったわけですが、仕覆の展示会をするにあたり、お茶から離れた仕覆にしようと思いました。

形骸化したお茶の世界の仕覆ではなく、仕覆本来の意味、「ものを保護する」「愛するものをより大切にする」に立ち返ろうと思ったのです。

お茶の仕覆は決まりごとも厳しく、そこに足を踏み入れるのが怖かったのもあります。

 

展示会に出品した瀬戸の麦藁手の盃。奥は片口。

 

同じく展示会より。デルフトのアルバレロ(薬器)。 仕覆は18世紀のトワルドジュイと言われうプリント木綿。

 

展示会のタイトルは「ポケットにぐい呑みを」にしました。

仕覆とは、そもそもものを保護するためのもの。

そして仕覆があれば、自分が愛してやまない「もの」を、片時も離れずつねに携帯することが可能になるのです。

そういった仕覆の「意味」をいま再び世に問うには、ぐい呑みという器は最適だと思ったからです。

 

唐津や瀬戸、朱塗りの杯など日本の器はもとより、アンティークのバカラやデルフトのアルバレロなど、外国の器もぐい呑みに見立てました。

なかでも、取っ手のない古いタイプのティーカップなどは珍しいこともあり、たいそう人気でした。

 

それぞれの器に合わせて古い布を選び、裏にもエルメスのスカーフなどを使い、ひとつひとつ縫い上げた仕覆たち。

展覧会はおかげさまで人気で、現在3回を数えています。

 

「チャイニーズエクスポート」と呼ばれる、ヨーロッパ向けに中国から輸出されたティーカップをぐい呑みに。仕覆もアンティークのシルクリボンで。

 

さて、自分でもぐい呑みを持ち歩いているかと言えば・・・・。

実はみなさんに提案はしたものの、なかなか自分でやってみたことはなかったんですよね。

そこで先日、なじみのてんぷら屋さん、六本木の「与太呂」さんにぐい呑みを持参、「ポケットにぐい呑みを」を実践してみました。

アンティークバカラのグラスが冷酒にぴったりでした。(もっとも、バカラなど硝子はいくら愛用しても「育つ」ことはありませんが。)

 

 

大好きな店で大好きな酒を大好きな器で飲む。

最高の時間でした。

 

「お茶の道具」が、茶会などの「場」において他者とのコミュニケーションのための、いわば「もてなし」の道具だとすると、「酒器」は自分の時間のためのもの。自分をもてなすことも大切なのではないでしょうか。

 

 

 

六本木の名店「与太呂」にて。アンティークバカラの仕覆は古いインドネシアのイカット。

 

 

 

山田英幸

幼い時から美しいものが好きで、長年にわたり骨董・アンティーク・古裂・ヴィンテージテキスタイルなどを収集。

また手仕事も得意で、洋服、帽子、人形、テディベアなどを制作するが、1990年頃「究極の手仕事・仕覆」に出会い、現在も制作を続けている。

西麻布「ルベイン」「銀座松屋」などで仕覆展示会開催。

自称「手芸の国の王子様」。

 

とにかく、「もの」が好き。それにちょっとした工夫や手仕事をプラスすることで、身の回りを美しく、毎日を楽しくしたいと思っている。

愛知県名古屋市生まれ。現広告代理店クリエイティブディレクター。

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