住めば都も、遷都する2017/12/22

 

年齢を重ねると、生き方の輪郭線がくっきりとしてくる。知人のお宅に伺うと、それを感じることがある。玄関を開けると、驚くほど大きな壺があって、「ああ、これ、西洋骨董のお店で見つけたの」と説明される。何でもお持ちのお宅だけれど、素敵なモノに出会うと買ってしまうのだ。家の中は、センスの良い調度品でいっぱい。訪問するたびにサプライズがある。

 

いくつになっても「もっともっと」のエネルギーにあふれている。こうしたタイプを「MOREの人」と呼んでおこう。

「MOREの人」にも、いくつかの違いがある。買ってしまうと興味が薄れてしまう純粋な買い物好きと、目的を持って収集することに熱中するコレクターがいる。あなたの知人にも、両方のタイプがいるのではないかしら。両者の違いは「もっと欲しい」の方向があちこちに分散する人と、ある方向に絞られている人ということができる。

 

いずれにしても、「MOREの人」は、モノだけではなく、人間関係についても、もっと多くの知人や友人を作ろうとする。「足し算」の幸福感といえばいいだろうか。「もっと多くのモノ」「もっと多くの仲間」に囲まれることが生きがいなのである。

 

 

一方、お宅にお邪魔をすると、ドアを開けた途端、ひっそりと静けさを感じる場合がある。家に入るとモノが整理され、ほんとに少ししかない。厳しく選ばれたモノだけが、置かれている。部屋のはしばしに緊張感があって、「MOREの人」であれば、息苦しく感じるほどだ。こういう雰囲気の住まいに似合うのは「LESSの人」である。

 

「LESSの人」の幸福感は、内向的といってもいい。「MOREの人」は、気持ちが外界に開かれているが、「LESSの人」は、どちらかといえば内側に向かっている。男女ともに読書家も少なくない。茶道、華道、陶芸、絵画、俳句などに打ち込んでいたりもする。

 

「LESSの人」は、人あたりが悪いわけではない。ただ、友人の数を増やしていくよりも、気のあった人と深い交流を好むのである。

 

世の中は面白いもので、ご夫婦のどちらかが「MOREの人」で、もう一方が「LESSの人」ということもありうる。その場合、お宅に伺うと両方のセンスが混ざっているのを感じる。

 

ちなみに英語で「more or less」というと、「多かれ少なかれ」「ほぼ」「大体」といった意味になる。「MOREの人」「LESSの人」を問わず、多かれ少なかれ、幸せな時間、ホッとする空間を求めていることでは同じだ。

 

ただ、方向性が異なるのである。ご夫婦で、傾向が違うときは、時間をかけて調整していく必要もあるだろう。住まいの場合は、部屋ごとに「ここは、私のセンスでいきますよ」といった棲み分けをしていくのもひとつの手だ。あるいは、インテリアのあり方は配偶者に任せて、自分は、家の外で、「MOREの人」「LESSの人」の本領を発揮という方法もある。

 

新しい住まいに移るときは、自分や配偶者が「MOREの人」なのか、「LESSの人」なのかを改めて確かめてみよう。わが家の「遷都」戦略をうまく進める秘訣である。

 

 

 

 

関沢英彦

発想コンサルタント。東京経済大学名誉教授。コピーライターをへて、生活系シンクタンクの立ち上げから所長へ。著書多数。現在、ヤフーニュースなどの個人ブログも執筆中。https://news.yahoo.co.jp/byline/sekizawahidehiko/

http://ameblo.jp/ideationconsultant/entry-12291077468.html

 

 

 

 

 

 

住めば都も、遷都する についての記事

もっと見る