LIFE IS BEAUTIFUL!!! 山田英幸のもの・ものがたり2017/12/18

好きなものだけに囲まれて暮らしたい。

毎日の暮らしを、わがままに、自分好みに美しく整えたい。

そのために必要なのはたっぷりのお金!!

ではありません。

ちょっとしたアイディアや工夫、少しの手間、そして何より一番大切なのはどれだけそのものを愛せるか、ということ。

 

身のまわりのものを愛する、ということは、暮らしを愛する、ということ。

それはつまり、人生を、自分を愛する、ということだと思います。

ちょっとしたことで、暮らしはもっと美しくなる。

人生も、もっと美しくなるのではないでしょうか。

 

 

根来の折敷と嵯峨棗。

 

テレビのドラマなんかで、特に江戸時代や明治時代などの設定のもので、食事のシーンに塗りのお膳やお椀なんかが出てくる時があります。

そういったときに、当主などの男が黒い塗りで、女が朱の塗りを使っていることがありますが、これは間違い。

黒塗りと朱塗りでは朱塗りのほうがひと手間多くかかり、したがって格上なんだとか。同じデザインで朱塗りと黒塗りをあつらえて、男が朱塗りを使うのが普通だったそうな。男女同権じゃなかった時代の話です。

 

「根来」という塗りものがあります。

もともとは紀州の根来寺というところで作られていた塗りものだそうで、朱漆がなるほどお寺の什器っぽく、また、長年の使用によって下地の黒漆が透けてきたものにはそれはそれは味があり、骨董好きに人気が高いもののひとつです。

僕もご多分にもれず、根来が大好きです。

もっとも厳密にいえば本当の根来(豊臣秀吉によって根来寺は滅ぼされた)などは桃山以前のものであり、そうそう手に入るものではありません。

僕が持っているのはだから「根来ふう」の朱漆の器、といったほうがいいかもしれません。

 

僕の持っている中ではわりにいいほうの折敷です。 「隅キリ」と言って、隅が三角に切り取られた形です。

 

根来の中でも折敷(おしき)は特に人気があり、使い続けられて黒が透けて出て来た具合などによって値段もピンキリありますし、古いものほど縁の立ち上がりが低いとか、隅キラズ(折敷のかたち。隅が切ってない、ただの正方形)のものは珍しい、とかいろいろうるさいことを言います。

そんな古くて侘びた根来の折敷に、お気に入りの酒器を載せて一献、なんていうのが酒飲みの憧れのようです。

最近、酒器関係の骨董は本当に高いです。それだけみんな「自分の時間」を大切にするようになったのかもしれません。

 

桜の季節。根来の「豆子(ヅツ)」と呼ばれる器を杯に見立てて 。

 

 

それでも、折敷や膳、盆などに比べて、皿や碗などの食器はまだまだ安いです。もちろんこれらも江戸時代から明治時代までずっと作り続けられてきたものですので、数もあるのでしょうし、なんとなくお寺のイメージがあるので若い女性などはあまり好まないのかもしれません。

 

たとえば椿皿。

これは本当に重宝します。懐紙を敷いてお菓子も載せますし、もちろんおかずにも使えます。うちではこれに正月の小さな鏡餅を載せてお飾りにしています。

あたたかな朱の色が華やかで、晴れがましい気分になるところが好きな器です。

 

 

春には桜餅を。

 

正月の鏡餅は京都で買った陶器製です。

 

あと、憧れの「四ツ椀」も手に入れました。

四ツ椀とは懐石に使う飯椀と汁椀、それぞれの蓋の四点が入れ子に重なるように出来たお椀のセットです。

蓋は取り皿に使ったりと、多様な使い方が出来るのですが、しまう時には四つ重ねられるところは修行僧の「応量器」にも似て、日本人ならではの素晴らしい合理性とモダンデザインがあると思います。

 

 

 

「四ツ椀」の懐石ふうセッティング。飯は「六本木与太呂」のおみやの鯛飯。汁は生麩。 向付(ふう)はチキンとリンゴ、ミニトマトのチーズ和え。

 

いまあらためてどうして「根来」(や根来ふうの朱漆の器)が好きなのか考えてみると、やはり、その「色」に魅力があるのではないでしょうか。

朱といってもさまざまですが、時代を経てしっとりした肌は見ても触っても、口につけてもほんのり温かくやさしいです。

骨董好きの食器棚はおのずと渋めの色が多くなります。染付のブルーや土ものの茶色などの中に、朱漆の色はすてきなポイントになってくれます。

赤くても決して女性的ではありません。むしろ「男の赤」。

僕はそこに、秀吉と戦った根来寺の僧たちから綿々とつながった、日本の男たちの生きざま、血気を思い浮かべるのです。

 

 

 

山田英幸

幼い時から美しいものが好きで、長年にわたり骨董・アンティーク・古裂・ヴィンテージテキスタイルなどを収集。

また手仕事も得意で、洋服、帽子、人形、テディベアなどを制作するが、1990年頃「究極の手仕事・仕覆」に出会い、現在も制作を続けている。

西麻布「ルベイン」「銀座松屋」などで仕覆展示会開催。

自称「手芸の国の王子様」。

 

とにかく、「もの」が好き。それにちょっとした工夫や手仕事をプラスすることで、身の回りを美しく、毎日を楽しくしたいと思っている。

愛知県名古屋市生まれ。現広告代理店クリエイティブディレクター。

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