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LIFE IS BEAUTIFUL!!! 山田英幸のもの・ものがたり2017/10/8

好きなものだけに囲まれて暮らしたい。

毎日の暮らしを、わがままに、自分好みに美しく整えたい。

そのために必要なのはたっぷりのお金!!

ではありません。

ちょっとしたアイディアや工夫、少しの手間、そして何より一番大切なのはどれだけそのものを愛せるか、ということ。

 

身のまわりのものを愛する、ということは、暮らしを愛する、ということ。

それはつまり、人生を、自分を愛する、ということだと思います。

ちょっとしたことで、暮らしはもっと美しくなる。

人生も、もっと美しくなるのではないでしょうか。

 

 

金継した器いろいろ。金継はすべて笹原みどりさんによる。 上の白い器3つは、震災のときに割れてしまったもの。

 

 

東日本大震災のとき。

東京の我が家はマンションの6階なのですが、その日苦労して帰宅すると、やはり部屋の中はめちゃくちゃになっていました。しかし、建物は東西に揺れたらしく、南向きの窓の上のカーテンボックスの上に並べたガラス器などは落ちることもなく無事でした。食器などを入れたキャビネットはしっかり壁に固定して扉にロックも掛けてあったので、倒れることはありませんでしたが、その閉まった扉の中で倒れたものもあり、多少は割れてしまいました。それでも、被害は少ないほうだったと思います。

本当に大切なものは、それこそ仕覆をかけてその上で桐箱に入れてありましたし。

 

器や道具が割れたり壊れたりするのは仕方がないことです。

ましてや、好きで毎日使うものであればなおさら、割ったり欠いたりする確率も上がるでしょう。

そんなときこそ「金継」の出番です。

 

「金継って、金で継ぐんですよね?高そう!」

とよく言われます。しかし、そうでもないんですよ。継ぐための接着剤は漆です。漆が見えてしまったところに、表面にだけ金粉を蒔く(振りかけて漆を隠す)ので、使う金の量はそんない多くはないのです。しかし、純金粉などを使えばまあそれなりの材料費と、何より手間賃がかかりますから、本当に愛着があり、使い続けたいものに限って金継する、というのでいいのかもしれません。

 

 

金継し、仕覆も作り桐箱もあつらえました。これで安心。

 

 

このお皿2枚は、骨董市で大きく割れた状態で売っていました。17世紀の質のいい伊万里で、「藍九谷」と呼ばれているものです。お店の人によると、地方の大きな家の縁の下から木箱に入って出て来た、と。何枚も入っていたけどこの二枚以外はもっと粉々に割れていた、云々。

キズのない状態であればとても手が出る値段ではなかったでしょうが、割れていたのでかなり安く買うことができました。

それまでも金継ぎの真似ごとはしたことがありましたが、これははじめてちゃんとやってみようと思いました。

東急ハンズで「金継キット」なるものを買ってきて、金粉も専門業者を調べ「丸粉」を買い、本と首っ引きでやってみました。

 

自分ではなかなかいい出来だと思っています。

この皿に名前を付ければ「陽刻菊花蛇籠流水文染付洲浜形小皿」となるのでしょうか。簡単に言えば秋の川の流れに菊の花が流れている、という文様なんですが、そこに入った金継の金のラインがまるで雷のように見えませんか?

花を散らす無情な秋の嵐。「野分の皿」と呼んでいます。

 

 

呼び継ぎ(割れて欠損したところに、別の器のかけらを継ぐ)の古唐津茶碗。

 

金継部分に蒔絵がほどこされています。

 

 

このように、金継は単なる修理ではなく、その傷をあえて見せることによってまったく別の「新しい景色」を作り出してくれる。無傷の状態よりかえって面白くなったりする。このような美を発見した古の日本人の感覚には全く驚かされます。

 

 

笹原みどりさんによる錫継。

 

 

そして、金継は外国の器にももちろんできるのです。この皿はイギリスのT.G.GREEN社の「CORNISH WARE」というシリーズですが、バラバラに割ってしまったのを金ではなく錫で継いでもらいました。

このまま飾りたくなるような、アートのような出来栄えだと思いませんか?

 

最近は瞬間接着剤などで簡単に継ぐやり方もあり、ものによってはそのほうが丈夫になるのですが、やはり古来からの漆を使うやり方には独自の良さがあります。

漆の接着力は、普通に使う分には十分なのですが、実はそんなに強くないんだそうです。つまりはずれやすい。これはどういうことかというと、もしまた落としたりぶつけたりしたときには、漆で接着した部分がはずれる。強い接着剤で継いだものだと、そこははずれずに別のところが割れてしまう。傷が増えてしまうことになります。

また、傷の部分が金で見えているので、そこに余分な力をかけないように注意して扱うことができる。

昔ながらの方法でキチンとされた金継には、かように合理的な部分もあるのです。

 

骨董の世界では「金継されてるから、これはいいものだ」という言いかたをすることがあります。ガラクタにはまさか金継まではしないだろう、ということなんですが、金継はすなわちそのものがいかに愛されたかを表してもいるんですね。

割れても捨てるには忍びない。使い続けたい。愛し続けたい。

そういった気持の現れでもあると思います。

そう思って金のラインを見ると、それは傷痕ではなく、誇らしげな勲章のリボンのようにも見えてくるのです。

 

 

山田英幸

幼い時から美しいものが好きで、長年にわたり骨董・アンティーク・古裂・ヴィンテージテキスタイルなどを収集。

また手仕事も得意で、洋服、帽子、人形、テディベアなどを制作するが、1990年頃「究極の手仕事・仕覆」に出会い、現在も制作を続けている。

西麻布「ルベイン」「銀座松屋」などで仕覆展示会開催。

自称「手芸の国の王子様」。

 

とにかく、「もの」が好き。それにちょっとした工夫や手仕事をプラスすることで、身の回りを美しく、毎日を楽しくしたいと思っている。

愛知県名古屋市生まれ。現広告代理店クリエイティブディレクター。

 

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