住めば都も、遷都する2021/5/26

あの日は、雨だった。誰もが、そんな思い出を持っている。晴れや曇りの日よりも、街が閉じ込められた感じがするからだろうか、記憶が沈殿して。ふとした折りによみがえる。

 

住まいの近所を散歩する。雨だから出会う風景。しとしと降るなかで、緑は、生き生きとしている。ああ、今日は、わが家の植物への水やりをさぼってもいいのだ。

 

「また、雨か」と残念がるのは、人間と、ともに散歩に出るワンちゃんか。ネコくんは、黙って降り続く雨を見ているだけ。

 

雨の似合う街がある。雨に行きたいお寺がある。雨宿りをしたくなるカフェもある。とはいっても、どこにも出ないで窓から雨空を見上げているのも悪くない。

 

 

雨と言えば、子どもの頃から、天気雨の日は何となく嬉しくなる。英語では、sun showerというらしい。日本語も英語も、言い得て妙。

 

住めば都も遷都する。雨の似合う街は、奥行きがある。薄っぺらではない感じ。いや、どう言えばいいのかな、落ち着いた雰囲気と言うのかしら。そこに住むことで、思い出がゆっくりと熟成していく街に住みたい。そう、雨の日も含めて。

 

 

 

関沢英彦(文・イラスト)

発想コンサルタント。東京経済大学名誉教授。コピーライターをへて、生活系シンクタンクの立ち上げから所長へ。著書に『女と夜と死の広告学』(晃洋書房)『いまどきネットだけじゃ、隣と同じ!「調べる力」』(明日香出版社)『偶然ベタの若者たち』(亜紀書房)他。論文に「記号としての心臓 なぜ、血液のポンプが、愛の象徴になったのか」「映画に描かれた『料理』と『食事』の4類型」「月の絵本 無生物とのコミュニケーションを描いたナラティブ」(いずれも『コミュニケーション科学』)他。

 

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