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住めば都も、遷都する2017/10/3

雑誌を見ると、リノベーションの実例が増えたなと思う。マンションの床を変える。二部屋を大きいワンルームにする。台所を一新してしまう。風呂まわりをホテルのように改造する。二重天井を取り払って構造を出すなど、さまざまな手法があることが分かる。

リノベーションの技術も上がっているので、写真を見ると、なかなか魅力的に感じる。しかし、どうしても変えられないものが残る。それは、窓の外に広がる建物、自然、道路などである。リノベーションによって、住まいの中は変えられる。だが、住まいの所在地は、前と同じだ。

 

当たり前の話だが、改装と転居の違いは、そこにある。仕事の関係や家族構成の変化で、どうしても引っ越しが求められる時は、迷うことはない。だが、何となく、住まいの雰囲気を変えたいなという場合であれば、リノベーションでもかなりの不満は解消される。わざわざ転居しなくてもいいかという気にもなる。

しかし、窓の外は変わらないのである。改装した部屋に数ヶ月は感動しても、そのうち、慣れてしまう。すると、前と同じ日常が続くことになる。

 

引っ越しをすれば、環境も景色も変わる。そう、「風景チェンジ」ができるのである。低層階から高層階へと移れば、見晴らしに心が躍る。高層階から低層階へといけば、窓を開ければ、街と一体化できる。

 

 

高層階は、視覚を楽しませる。低層階は、近隣の音も聞こえるので聴覚が喜ぶ。あるいは、木々の匂いなど嗅覚も刺激される。視覚だけでなく、周囲に対して、五感を働かせることになる。高層階と低層階は利便性が異なる。それと共に、動員される五感も違ってくる。好みで、いずれかを選べるのだ。

 

「風景チェンジ」とは、こうした感覚の変化も含むのである。海よりの土地に住めば、風が変わってくる。山を望めば、季節ごとの山容の変化に見とれるだろう。

坂道を上るのがつらくても、そのてっぺんに住めば、富士山に沈む夕焼けを楽しむこともできる。川縁に引っ越せば、春には桜並木、夏には花火を享受できる。

こうした自然の移ろいよりも、ショッピングの便利さを選ぶ場合もあるだろう。そういう人は、都心であっても新鮮な食材が揃う店がある地域を選べばいい。ふらっと出かけて、気楽で、おいしい料理を食べさせるレストランを求める人もいる。

 

国の単位で考えても、事情は同じであった。例えば、宮殿や城を改築することで、人心を一新することができた。だが、都の位置そのものを変えてしまうことで、新しい歴史を作ろうとすることもあった。それが遷都である。

 

「風景チェンジ」は、個人における遷都だといえる。住まいへ至る道筋も、近所の建物や自然もすべて変えてしまう。「風景チェンジ」は、家族みんなの気持ちをチェンジするのである。

もちろん、引っ越しは、家を訪れる親戚や友人にとっても、気分一新をさせる効果が大きい。いっきょにお客さんが増えるかも知れない。あるいは逆にひっそりと、生活のペースを乱されずに暮らせるようになることもある。すべては、「風景チェンジ」に対するあなたの決心にかかっている。

 

関沢英彦
発想コンサルタント。東京経済大学名誉教授。コピーライターをへて、生活系シンクタンクの立ち上げから所長へ。著書多数。現在、ヤフーニュースなどの個人ブログも執筆中。

https://news.yahoo.co.jp/byline/sekizawahidehiko/

https://ameblo.jp/ideationconsultant/

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