甘い生活2021/3/10

あなたが、自分の家の中で1番好きな場所はどこだろう。一番気にいっているエリアはどこだろう。ちょっと考えてみてほしい。必ずそういう場所があるはずだから… …。

 

ところが自分自身にもそう問いかけてみて、逆にドキッとした。今の自分の家の中に、そういう場所が1つもなかったからである。いや、以前はたくさんあった。今の家を建てて、15年以上経つのだろうか。最初の10年は、明らかにあったのだ。

 

ある角度から見たリビングの感じが好き。この壁が好き。階段を上ってきた踊り場の気配が好き。玄関に置いた黒いハイバックチェアーが好き。細長い窓にかけたカーテンからうっすら見える外の景色が好き。そして、お風呂に入って天井を見上げたときだけ見える小さな天窓が好き………。

 

挙げればキリがないほどに、好きなもの好きな場所があった。もちろん自分でいろいろ考え、自分で家具を揃えた家。好きなものだらけでなければおかしいわけだ。そもそもが、自分の好きなものに囲まれているから、人は自分の家に帰りたいと思うわけで、そうでない家なんて道理に反している。

 

なのに今、好きな場所がほとんどない。何も感じなくなっているか、むしろ嫌いになっているか。これはまずいと思った。とてもまずいと。

人にとって自分の家が好きになれないのは、その人の人生にとって由々しきこと。ひとつ屋根の下に住んでいるパートナーを、大嫌いなのと同じ。ましてや今このコロナ禍、家にいる時間が異様に長いのに、好きな場所がないなんて、それは自分の人生の否定に他ならない。そうなりかけている自分に気づいて本当にぎょっとしたのだ。

 

確かにこの数年、忙しさにかまけて家の中を顧みなかった事は確か。コロナ禍に入ってすぐ、人並みに断捨離をしてみたものの、すぐに日常に戻り、いつの間にかまたクローゼットは荒れていった。ただ自分がこんなに自分の家に興味も愛情もなくなっていたことまでは気づいていなかったのだ。

 

それに気づかせてくれたのは、友人の“怪しくない自称スピリチュアリスト”が言った「パワースポットって自分の家の中にもあるはずよ」という言葉だった。それこそ、ただそこにいるだけで心地が良くなる場所や、気持ちを前向きにしてくれる場所、眺めが良い場所、さらに日当たりが良かったり風通しが良かったり、ともかく家の中で一番良い“気”が流れているところを、人は知らず知らず心の拠り所としているらしく、日常生活の中で実はとても大きな役割を果たしてくれているのである。

 

これは、いわゆる風水とはまた少し違った考え方。風水は重要な場所が決まっているが、そうではなく、自分自身が心地よいと感じるスポットこそが重要という考え方なわけで、そういう場所をひとつずつ増やしていくことが“美しい暮らし方”の大切な決め手なのではないだろうか。あちこちにパワースポットがある家に住むことは、それだけで今の何倍もの幸せを感じさせてくれるのだろう。だから私はこれではまずいと本気で思ったのだ。やり直さなければ。暮らし治さなければと。

 

まぁパワースポットなんて信じないと言う人は少なくないのかもしれない。でもそれは、みんなで大挙して訪れる観光地のようなパワースポットとは違う、あくまでも自分の心の中のスポット。自分を浄化するための場所。ぜひ家の中に作ってみて欲しい。心のパワースポットを。

 

 

齋藤薫 美容ジャーナリスト/エッセイスト

女性誌編集者を経て独立。女性誌において多数の連載エッセイを持つ他、美容記事の企画、化粧品の開発・アドバイザーと幅広く活躍。新刊『大人の女よ!もっと攻めなさい』(集英社インターナショナル)、『されど“男”は愛おしい』(講談社)など著書多数。

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