LIFE IS BEAUTIFUL!!! 山田英幸のもの・ものがたり2021/1/23

好きなものだけに囲まれて暮らしたい。

毎日の暮らしを、わがままに、自分好みに美しく整えたい。

そのために必要なのはたっぷりのお金!!

ではありません。

ちょっとしたアイディアや工夫、少しの手間、そして何より一番大切なのはどれだけそのものを愛せるか、ということ。

 

身のまわりのものを愛する、ということは、暮らしを愛する、ということ。

それはつまり、人生を、自分を愛する、ということだと思います。

ちょっとしたことで、暮らしはもっと美しくなる。

人生も、もっと美しくなるのではないでしょうか。

 

 

とらやの練り切り「好文花」。梅の木のことを好文木(こうぶんぼく)と呼んだんだそうです。

 

万葉集に一番多く詠まれている花は「梅」である、と長いあいだ思い込んでいました。

万葉の時代、「花」といえば「桜」より「梅」であった、と。

今回調べてみて、それは間違いであることを知りました。

万葉集で一番多い花は、「萩」。約140首出てくるのだそうです。

次が「梅」で120首。そのあと「橘」、「桜」と続きます。

桜より多い、ということで、一番多いという誤解をしていたのだと思います。

 

昔から、なぜ人々に梅がそんなに好まれていたのか、直感的にわかるのは、やはり寒い冬一番に咲く花だからではないでしょうか?

「梅は百花の魁」という言葉にあるように。

残念ながらいまうちの近所に梅の木もありませんが、それでも花屋の店頭につぼみが付いた白梅の枝などを見つけると、まだまだ寒い毎日でも、確実に春が近づいてきている気がして、ほっとするような気持になるものです。

 

シンプルな名古屋の雑煮。梅の花の形の箸置きを添えて。

 

日本では「松竹梅」といって、梅はおめでたい三種の植物のひとつになっていますが、これはそもそも中国宋代の文人画で好まれた「歳寒三友」(さいかんのさんゆう)という画題だったのだとか。

松と竹は寒中にも色あせず、梅は寒中に花開くため、「清廉潔白・節操」といった文人の理想を体現する植物だったのです。

それが日本に来て、なぜか「おめでたい」象徴になった。

たぶん正月というめでたい季節とくっついたからではないでしょうか。

 

おせちを盛った松竹梅の柄の古伊万里の長皿。梅はちらりと右上に。 このように見込みが白抜きのものは、18世紀初のものです。藍柿右衛門と呼ばれています。

 

同じく藍柿右衛門の松竹梅染付猪口。 小さいのでぐい吞みに使えますが、もとはおかずや調味料を入れたのでしょう。

 

 

もうひとつ、松竹梅柄の猪口。これはだいぶ時代が下がります。絵付けが雑。

 

お正月にこれらのおめでたい器を使うのはもちろんいいのですが、そのあとの寒い毎日、新暦1月末から2月にかけてのなにもない日々に、「梅」の花はうれしい彩りというか期待を与えてくれます。

たとえばこれらの和菓子。

寒い時期に甘くて美しい和菓子をいただき、あたたかく香り高いお茶を喫する。

もしかして、一年で一番「一服」が美味しい時期かもしれません。

 

名古屋の名店「両口屋是清」の「重ね梅」。ゴージャスです。

 

今日と「亀屋良永」「高白梅」。京都らしい、雅な袖のような形。

 

「とらや」の最中「御代の春」。ザ・梅!!ってかんじの意匠です。

 

「とし田」(両国)の半生菓子。下町らしく気取らない形。

 

こうやって並べてみるだけでも、寒くて色のない季節に、梅の花の淡い色がどんなにありがたいかわかります。

 

まだまだ出歩くのもはばかられる毎日。特に今年は寂しい蟄居の日々が続き、いつもの年よりよりいっそう春が待ち遠しいものです。

そんな時こそ梅の器を並べ、梅の花のお菓子をいただき、やがて必ず来る「春」を待ちたいと思います。

 

最後に、梅花蒔絵の棗二種。これは平棗。

 

こちらは光琳蒔絵と呼ばれる大胆な雪吹。鉛の板で大胆に枝を表現しています。

 

 

 

山田英幸

幼い時から美しいものが好きで、長年にわたり骨董・アンティーク・古裂・ヴィンテージテキスタイルなどを収集。

また手仕事も得意で、洋服、帽子、人形、テディベアなどを制作するが、1990年頃「究極の手仕事・仕覆」に出会い、現在も制作を続けている。

西麻布「ルベイン」「銀座松屋」などで仕覆展示会開催。

自称「手芸の国の王子様」。

 

とにかく、「もの」が好き。それにちょっとした工夫や手仕事をプラスすることで、身の回りを美しく、毎日を楽しくしたいと思っている。

愛知県名古屋市生まれ。現広告代理店クリエイティブディレクター。

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