住めば都も、遷都する2021/1/14

私たちは昔から、身近に世界を再現したいと願ってきた。植物や小動物の世界を部屋の片隅に作るテラリウムは、地上の再現である。

 

アクアリウムは、家庭の水槽で魚を飼うことから水族館までを含む。湖、川、海の再現。ちなみに「arium」というラテン語由来の末尾がつくと、「○○の場所」ということになるらしい。

 

テラ(土)、 アクア(水)に「arium」が付くことで、テラリウム、アクアリウムということになる。そして、プラネット(惑星)が頭に付けば、プラネタリウム。最近は、家庭用プラネタリウムにも、いいものがある。

 

わが家の中に地上、水中、宇宙を小さくして取り込んでみる。これは、住まい自体を広く世界に開くことでもあるのかしら。

 

 

19世紀の初頭、ロンドンのナサニエル・バグショー・ウォードという医者が、ウォードの箱というものを考えついた。ガラスの箱の中でシダなどが育つことを発見したのである。ガラスを通して太陽光が入り、水分は箱の中で蒸発したものが循環する。

 

その後、海外から植物を運ぶのにウォードの箱は使われた。塩分で植物が傷まないので、新しい植物が生きたままイギリスにもたらされた。これが、テラリウムの始まりだとか。

 

同じ19世紀、1851年のロンドン万国博には、アクアリウムが登場。それまでも池などで魚を飼うことは東西を問わずに行われていたが、大きなガラスの箱で魚が泳ぐ姿を見せるのは、これが初めてだったという。

 

住めば都も遷都する。森のそばに住む。海の見える丘に引っ越す。それもひとつの方法だが、家の中に森と海を作ってしまうというのも、なかなか愉快である。

 

 

 

 

関沢英彦(文・イラスト)

発想コンサルタント。東京経済大学名誉教授。コピーライターをへて、生活系シンクタンクの立ち上げから所長へ。著書に『女と夜と死の広告学』(晃洋書房)『いまどきネットだけじゃ、隣と同じ!「調べる力」』(明日香出版社)『偶然ベタの若者たち』(亜紀書房)他。論文に「記号としての心臓 なぜ、血液のポンプが、愛の象徴になったのか」「映画に描かれた『料理』と『食事』の4類型」「月の絵本 無生物とのコミュニケーションを描いたナラティブ」(いずれも『コミュニケーション科学』)他。

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