住めば都も、遷都する2020/9/23

朝早くからやっているカフェが、散歩道にあると助かる。歩くのにも張り合いが出る。三日月型のクロワッサンをほおばりながら、苦めのコーヒー。一日が始まるのだ。

 

住まいからの徒歩圏内、気に入った店がある。仕事のある日なら、スケジュールの確認。今日やるべきことを頭の中で追ってみる。それだけで、一日は滑らかにスタートする。

 

とくにすべきこともなく、暇な日も、コーヒーを飲み終わる頃には、「あれをしよう」「これをしよう」と気持ちは充実してくる。

 

もちろん、わが家のテーブルでも、同じように朝食は精神をしゃきっとさせてくれる。からだのリズムが整うから、脳も動き出すということかしら。

 

朝日を浴びながらの散歩は、一日を元気にする。一方、夜空のもとの散歩はゆったりと一日を終わらせてくれる。その日に起きた良いことも悪いことも、いつの間にか消えていく。

 

 

朝はその日を考えさせる。夜はもっと長い時間を思わせる。月を見上げて、「ああ、三日月だ」と気づくのも、心を遠くに解き放すことなのだろう。

 

大学でゼミ生を選ぶときに「あなたの月の思い出を書いて下さい」という課題を出したことがある。月を見上げた記憶を持つ学生は、内省する力が高く、発想力も高かった。

 

住めば都も遷都する。住まい選びは、建物を見るだけではなく、その街で過ごすであろう「朝から夜までの時間」を想像してみるのが良さそうだ。

 

 

 

 

関沢英彦(文・イラスト)

発想コンサルタント。東京経済大学名誉教授。コピーライターをへて、生活系シンクタンクの立ち上げから所長へ。著書に『女と夜と死の広告学』(晃洋書房)『いまどきネットだけじゃ、隣と同じ!「調べる力」』(明日香出版社)『偶然ベタの若者たち』(亜紀書房)他。論文に「記号としての心臓 なぜ、血液のポンプが、愛の象徴になったのか」「映画に描かれた『料理』と『食事』の4類型」「月の絵本 無生物とのコミュニケーションを描いたナラティブ」(いずれも『コミュニケーション科学』)他。

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