LIFE IS BEAUTIFUL!!! 山田英幸のもの・ものがたり2020/8/4

好きなものだけに囲まれて暮らしたい。

毎日の暮らしを、わがままに、自分好みに美しく整えたい。

そのために必要なのはたっぷりのお金!!

ではありません。

ちょっとしたアイディアや工夫、少しの手間、そして何より一番大切なのはどれだけそのものを愛せるか、ということ。

 

身のまわりのものを愛する、ということは、暮らしを愛する、ということ。

それはつまり、人生を、自分を愛する、ということだと思います。

ちょっとしたことで、暮らしはもっと美しくなる。

人生も、もっと美しくなるのではないでしょうか。

 

 

楽しいタイマー。友人からの引っ越し祝いです。 下のカッティングボードも別の友人からの誕生祝。

 

STAY HOMEの時間が増え、家で食事を作ることが増えたことは前回にも書きましたが、キッチンの作業を効率的に、しかも楽しくするためには道具も大切です。

僕などは、これまでも毎日三食食事を作るような生活はしていませんでしたが、40年以上も一人暮らしをし続けていると、それでも様々なキッチン道具が集まり、そして自然と使い勝手がいいものに淘汰されていくのは当然のことでしょう。

しかし、それだけではない。キッチンの道具には楽しさも必要ですし、美的な要素も大事です。

なにしろ、「食」という大切なルーティンを担っているからには、おのずとキッチン仕事をしたくなるような、プラスの要素も必要なんだと思います。

 

45年くらい使っている鉄のフライパンとホーローの蓋。

 

一人暮らしを始めたのは高校を卒業し、京都の大学に入ったとき。

まだ元気だった祖母がしばらくするとやってきて、一緒に近所のスーパーに行き、足りていない生活用品を買ってくれました。

一人の生活に必要な台所道具や掃除道具などこまごまとしたもの。

その時に買ってくれたのが、このフライパンです。

スーパーに売っているくらいですから、何でもないチープなフライパンですが、ずっと使い続けているうちに油もなじみ、今では焦げ付くこともない大変使いやすいフライパンになりました。

いっとき浮気して、レストランのようなアルミのフライパンを買ったことがありますが、やはり一番使うのはいまだにこれです。

 

ホーローの蓋は、これは実家から持ってきたもの。大きさがこのフライパンにピッタリです。たぶん僕が生まれる前から実家にあったものですので、かれこれ70年くらい前のものでしょうか?

子供のころ台所で母や祖母がこの蓋を使っていた、そんな姿も思い出され、懐かしくなります。かなりボロボロですが、捨てる気になりません。

 

実家から持ってきたまな板。ただの木切れ。 あまりに汚くなると、たまにビニール袋に入れて漂白しています。

 

そしてこのまな板。

これも当時実家の母が持たせてくれたもの。ただの木切れです。

たぶん男の子の一人暮らし、自炊に飽きるかもしれないし、そもそもしないかもしれない。フライパンの蓋といいこれといい、いいものを買って持たせなくてもまずはあり合わせで、と思ったのでしょう。

それらをこうしていまだに使っているのは、決して使い勝手がいいわけでもない、むしろ切りにくいまな板なんですが、なにかこれらを使うと思い起こされる、思い出と言うほどのものでもない、あったかい温度のようなものがあるからなのです。

 

実家からもらってきた道具三種。 上からパン切りナイフ、ピーラー(プラスチックの柄のほう)、ステンレスのお玉。

 

その後も実家に帰るたびにいろいろなキッチン道具をもらってきました。

上の写真の三種類もそんなものたち。

すべて、銀行やらデパートなどの景品だと思います。決して高級なものではないのですが、パン切りナイフもお玉も、かなり使いやすい。安く薄手にできているからかもしれません。

このピーラーは見た目がなんなんで、あとで金属のものを買いましたが全然ダメでした。T字型のも試しましたがそれもダメ。結局こればかり使っています。

 

それにしても、キッチン道具に限らず、器など、家のものは欲しいといえば何でも持たせてくれました。

すべてたいしたものでもありませんでしたが、決してものに執着がないわけではない僕の家族、僕に与えるということは(たいしたものでないにしろ)なにか「受け継がせる」という気持ちがあったのかもしれません。

あ、お金を出して新しいものを無駄に買わなくていいよ、という気持ちのほうが強かったのかな?ああ、そうに違いない・・・。

 

 

今のマンションを買って引っ越した時に、新たに買った鍋と包丁。 鍋は合羽橋のニイミで。汚くて恥ずかしい。 包丁はそのころ日本橋東急に入っていたウイリアムズ・ソノマで買いました。

 

古いアルマイトの計量カップ。

 

市川に大変仲のいい大叔母がいました。

洋裁と和裁の学校を開いていて、行くといつも若いお嬢さんたちがいっぱいいた。「装苑」がずらっと本棚に並んでいて、いくら読んでも読み飽きることはありませんでした。

子供のいなかった大叔母は僕を大変かわいがってくれ、たぶん僕に流れている「手仕事好き」のDNAはこの大叔母からかなり濃く引いているような気がします。

 

そんな大叔母もずいぶん前に90歳過ぎで亡くなり、住んでいた家を片付けるのは近くの親戚たちが苦労してやってくれましたが、僕もやはりなにか思い出になるものが欲しい、と思いもらってきたのがこの計量カップです。

この計量カップを大叔母は米櫃の米を計るのに使っていましたが、このカップと米櫃だったブリキの缶、そして茶道の袱紗とひとたばの茶巾、それらをもらってきました。

今でもこれを使うたびに、市川の古い台所で羽釜でご飯を炊いてくれた大叔母の姿が思い出されるのです。

 

キッチン仕事をこなしていくには、機能だけではない何か夢のようなものがあると、仕事が一層楽しくなるものです。

料理のおいしい仕上がりを夢見るはももちろんあると思いますが、道具を使いながらその道具にまつわる思い出というか、ストーリー、そんなものを思い心を遊ばせながら調理するのもいいものです。

 

 

次回は「たのしいキッチン道具」後編(雰囲気篇)です。

 

 

 

山田英幸

幼い時から美しいものが好きで、長年にわたり骨董・アンティーク・古裂・ヴィンテージテキスタイルなどを収集。

また手仕事も得意で、洋服、帽子、人形、テディベアなどを制作するが、1990年頃「究極の手仕事・仕覆」に出会い、現在も制作を続けている。

西麻布「ルベイン」「銀座松屋」などで仕覆展示会開催。

自称「手芸の国の王子様」。

 

とにかく、「もの」が好き。それにちょっとした工夫や手仕事をプラスすることで、身の回りを美しく、毎日を楽しくしたいと思っている。

愛知県名古屋市生まれ。現広告代理店クリエイティブディレクター。

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