甘い生活2019/11/11

「人は人生で3回、家を建てる」と言われるが、それも「3回建てなければ、納得できる家にはならない 」という意味なのだろう。失敗から学ばないと、理想の家には辿り着かない、そのくらい家づくりは難しいと言うことなのだろう。

 

実際、自分が家を建てたとき、あまりに要望が多すぎて、計画が何度も破綻した。すべてを叶えるのは基本的に無理と、わかっていても欲張ってしまう。そもそもが現実問題として、経済的には人生に3軒も家を建てられるはずがないと思うから、やっぱり一発勝負で理想の家を建てたいと思うあまりに諦めきれなくなってしまう。

 

その時ひらめいたのは、「人生同時に2つの家を持とう」ということだった。

 

つまり、広い家が欲しいと不便なところになるし、使い勝手の良い家を作れば、何か雰囲気のない家になってしまう。やはり住まいへの欲望は両極あって、どちらも譲歩しているうちにうちにどっちつかずの家になってしまいがち。だから、いっそ、その両極の欲望をきっぱりと2つに分けて、同時に2軒の家を建ててしまおうと言う提案なのである。

 

ある友人も、都会から離れたくはないが、家づくりへの希望がどんどん膨らんで、とてもじゃないが東京に希望通りの家を持てないことにはっきり気づいた段階で、もう一軒、田舎に広い家を買うことにした。

 

そう考えたら、東京の家はもう小さくてもいいと、いろいろ諦めがついたらしい。逆に田舎の家は、とんでもなく安く入手できることに気づき、どうせ週末しか使わない家だから、生活感の全くない完全なる趣味の家にしてしまおうと、リフォームも大胆すぎる設計の、とてもユニークな家になっていった。だから、諦めたことも多いのに、むしろ喜びは3倍になったと言うのである。

 

不思議なことに金額的にも、2軒買った割に、それほどの予算オーバーにはならなかったと言う。それも諦める部分は諦める。コンパクトにする部分はコンパクトにする。そういう割り切りが、功を奏したのだ。

 

ちなみに今、有名別荘地における戸建て付きの別荘は、びっくりするほど安い。もともとたまにしか使っていない家だから、築年数よりも痛みが少なく、ちょっとしたリフォームで十分に使えたりもする。

 

だからこれからはぜひ東京に都会に家を持つ時、田舎の家も一緒に探してみて欲しい。精神的にもものすごく楽になる。家を作るにあたってやりたかったことは、その安い別荘のリフォームで全部、やってしまえるから、心残りにならないのだ。お金をかけずにできる事は何でもやってしまう、攻めの家作りをしてほしい。

 

おそらく、建ててしまってからも、喜びはさらに増えていく。以前のコラムにも、別荘を持ちましょうという提案をしたかもしれいけれど、別荘を持つことは、人生の行動半径を2倍に広げることに等しい。

 

都会の家と別荘を同時に買った人は、日常と非日常を足繁く行ったり来たりすることになるはずで、それはなんとも嬉しい忙しさ。どんなに大変でも週末は別荘へと出かけていく。それは、1つの現実逃避に近いから、大変なストレス解消になるはずだ。ウィークデイになれば、また都会に戻っていく、それもまた1つの安心材料。基本は何もすることのない別荘での暮らしも長くなりすぎるとやっぱり1つのストレスになるからだ。

 

かくして、行ったり来たり。日常と非日常を分けて住まうことで、生涯レベルの住まいに対するすべての思いをクリアすることができるのである。

 

どこにどういう風に住まうか、それは人生そのもの。ましてや”家を買う”という行為は、人生の一大事。だからこそ、オンとオフ2つの家を同時に買ってしまおう。誰にでもある相反する2つの願望。それをしっかりと2軒の家に収めるために。そういう発想で、一生の住まい計画を見直してほしいのである。

 

 

 

齋藤薫 美容ジャーナリスト/エッセイスト

女性誌編集者を経て独立。女性誌において多数の連載エッセイを持つ他、美容記事の企画、化粧品の開発・アドバイザーと幅広く活躍。新刊『大人の女よ!もっと攻めなさい』(集英社インターナショナル)、『されど“男”は愛おしい』(講談社)など著書多数。

甘い生活 についての記事

もっと見る