LIFE IS BEAUTIFUL!!! 山田英幸のもの・ものがたり2019/8/25

好きなものだけに囲まれて暮らしたい。

毎日の暮らしを、わがままに、自分好みに美しく整えたい。

そのために必要なのはたっぷりのお金!!

ではありません。

ちょっとしたアイディアや工夫、少しの手間、そして何より一番大切なのはどれだけそのものを愛せるか、ということ。

 

身のまわりのものを愛する、ということは、暮らしを愛する、ということ。

それはつまり、人生を、自分を愛する、ということだと思います。

ちょっとしたことで、暮らしはもっと美しくなる。

人生も、もっと美しくなるのではないでしょうか。

 

仕覆に入れたアンティークバカラのロックグラスを、近所の行きつけのバー「エリシオ」に持って行ってオンザロックを作ってもらいました。

 

このブログの第一回にも書きましたが、仕覆というものを作っています。

仕覆とはもっぱらお茶の世界のもので、濃茶の時に使う茶入に掛けられた布の袋などを指していいます。

仕覆の詳しい歴史などは不勉強でよく知りませんが、それこそ利休とかの時代、茶入は非常に高価というか大切なもので、茶入ひとつを城と交換した、とかとんでもない逸話が残っているほどです。

そのように大切な茶入を保護するのが、仕覆のそもそもの目的だったのでしょう。

茶入のほかにも、茶碗や香合など、大事な道具には仕覆が仕立てられ、仕覆に包まれた道具は恭しく桐箱に納められ、お蔵にしまわれていたのです。

 

 

伊万里のころ茶碗には江戸の木綿でさわやかな仕覆を仕立てました。

 

仕覆はそれぞれの道具がぴったり収まるように仕立てますから、採寸や製図や縫製に厳密さが必要で、また使う布にも道具との釣り合いとかいろいろ知識が必要で、そんなわけで「手芸の最高峰」などという人もいますが、僕もそのとおり、奥の深いものだと思います。

 

僕が仕覆を作り始めたきっかけは、第一回にも書きましたが、自分で細々と集めた骨董やアンティークを、大事に保管したい、道具に仕覆をかけることで、その道具を大切にしていたことを次代の人にも知ってもらいたい、そんな気持ちからでした。

たまたま多少手先が器用だったので、本を見たり、ひとに教えてもらったり、で半ば自己流ですが何とか作ることができました。

好きで集めていた古い布を使えるのもうれしかったです。

 

ぐい吞に見立てたアンティークの器と、仕覆に使う布の組み合わせをチェックしているところ。

 

 

仕覆の表はインドのシルク。裏もインド更紗で、大英帝国つながり。

 

そんな感じで自分のためだけに作っていた仕覆ですが、わが尊敬するファッションデザイナーの横森美奈子さんにたまたま見ていただいたところ、「一緒に展示会をやろう」とお誘いいただいたのです。

それが、「ポケットにぐい呑を」という展示会の始まりでした。

 

葉山のビーチハウスで撮影した仕覆。中はアンティークバカラのタンブラー。

 

なぜ、「ぐい呑」をテーマにしたかというと、ひとつは、お茶の世界だけのものになってしまっている仕覆を、今一度本来の意味に立ち返らせたかったから。

「ものを保護する」「ものを大切にする」という意味です。

 

最近骨董の世界では酒器がブームになっており、唐津や李朝や美濃陶などの酒器はたいそうな人気です。伝世(古くから使われ続けてきたもの)の酒器などはしたがってそれはそれは高価で、おいそれとは買えません。

多少安いのは「堀の手」といって、失敗作として窯場に打ち捨てられていたものを後世掘り出してきたもの。掘り出してきただけあって、その肌はカサカサにカセていたり、あるいは傷やカケがあったり、なのですが、そのような「B級品」にこそ手のかけ甲斐があるのです。

「育てる」というのですが、特にそういった酒器は使えば使うほどいい味がついていきます。陶器や磁器の地肌に酒が染み込んで、長い年月の間にはとろりとしたいい艶がでてくるのです。

早く味をつけたい、と願う数寄者たちは毎日その酒器で酒を飲みます。そのうち、家で飲むときだけでなく、外で飲むときにもその「育てたい」酒器で飲みたくなる。そんなときにこそ仕覆の出番です。

 

「ものを保護する」という仕覆の意義は、ものをいつも身近に置いて「ものをより愛する」ということにつながっていくわけです。

 

チャイニーズエクスポートと呼ばれる、18世紀の中国製の紅茶茶碗には、やはりヨーロッパの更紗で仕覆を。なじみの料理屋さん北鎌倉「円」で撮影。

 

絵唐津のぐい呑には渋いインド更紗で仕覆を。夏休みに訪れた石垣島「グランヴィリオガーデンリゾート」に持参しました。

 

 

この秋、9月に4度目の展示会を開くことになりました。

展示会場がデパートということもあり女性客が多いので、ぐい呑といっても武骨な陶器のものばかりでなく、アンティークのクリスタルグラスや古い磁器のものなども多くしています。仕覆も古いヨーロッパの布やヴィンテージのブランドスカーフなどを使い、比較的華やかに仕上げました。

ぜひご覧いただいて、仕覆の楽しさを実際に知っていただけたらうれしいです。

そしてさらに、好きな器に仕覆をかけ、いつも一緒に、ずっと大切にしていく、という喜びもしっていただけたら、と願います。

 

 

 

「ポケットにぐい吞を 4」山田英幸仕覆展

2019年9月4日~9月10日

松屋銀座7階「遊びのギャラリー」にて。

「横森美奈子のNEW利休Bag展 Vol.17」と共催。

 

 

 

 

 

山田英幸

幼い時から美しいものが好きで、長年にわたり骨董・アンティーク・古裂・ヴィンテージテキスタイルなどを収集。

また手仕事も得意で、洋服、帽子、人形、テディベアなどを制作するが、1990年頃「究極の手仕事・仕覆」に出会い、現在も制作を続けている。

西麻布「ルベイン」「銀座松屋」などで仕覆展示会開催。

自称「手芸の国の王子様」。

 

とにかく、「もの」が好き。それにちょっとした工夫や手仕事をプラスすることで、身の回りを美しく、毎日を楽しくしたいと思っている。

愛知県名古屋市生まれ。現広告代理店クリエイティブディレクター。

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