LIFE IS BEAUTIFUL!!! 山田英幸のもの・ものがたり2019/7/17

好きなものだけに囲まれて暮らしたい。

毎日の暮らしを、わがままに、自分好みに美しく整えたい。

そのために必要なのはたっぷりのお金!!

ではありません。

ちょっとしたアイディアや工夫、少しの手間、そして何より一番大切なのはどれだけそのものを愛せるか、ということ。

 

身のまわりのものを愛する、ということは、暮らしを愛する、ということ。

それはつまり、人生を、自分を愛する、ということだと思います。

ちょっとしたことで、暮らしはもっと美しくなる。

人生も、もっと美しくなるのではないでしょうか。

 

 

どこの家にもある香蘭社の銘々皿。これも引き出物だったはず。一客割れたみたいです。

 

銘々皿といわれている皿があります。

大体5枚セットで、大きさは15センチくらい。お茶会では使いませんし、茶懐石などにもあまり出てくることはありません。

大きさを見ると、そもそもは向付だったのではないかと思いますが、「銘々皿」という名前のとおり、一人一人のための小皿、という意味なのでしょう。

家族の食卓などで、大皿から取り分けるときの各自の皿、として使うことを想定して作られたのでしょうか。

 

子供のころの食卓を思い出すと、自分が本当に小さいころ(昭和30年代)には、食卓の真ん中に大皿の料理を置いて、それを各人が取り分けて食べる、という食べ方はあまりしていなかったような気がします。

おかずはそれこそ銘々の皿に最初から分けて盛り付けられていました。

ただ、その時の皿がどんな皿だったか、というと、焼き魚だったり、コロッケだったり、冷ややっこだったりでしょうが、いわゆる銘々皿、という感じではなかった気がします。

違いを言うもの難しいのですが、焼き魚の皿だったり、冷ややっこの鉢だったり、コロッケの洋皿だったり、、、。

料理の種類も少なかったのかもしれませんが、わりに用途が決まっている器が多かったような気がします。

 

1968年に名古屋に中日ビルができた時、最上階の回転レストランでもらった芹沢啓介の銘々皿。その中日ビルも今年営業を終了しました。

 

うちの場合、母が料理教室に通い始め、新しい料理を作るようになったころに時を同じくして、大皿ドカン、それぞれが食卓で取り分ける、というスタイルが始まったような気がします。

唐揚げや酢豚など、父がそういった盛り付けを見て、「今日はバイキングだな」と言っていたのを思い出します。

そして、この頃から、引き出物などにこういった多用途の「銘々皿」や「大皿一枚と小皿5枚」といった「取り分けセット」が出てきたのではないでしょうか。

そうめんのガラス大鉢とそろいの小鉢5客、などは今も実家の食器戸棚に入っています。

 

思うにこの「食卓で取り分けるスタイル」は、たぶんその時代の新しい食卓文化のスタイルだったのでしょう。

みんなで食卓を囲むんだけど、それぞれが好きな量だけ自分自身で取り分けて食べる。家族の中ではあるけど、そんな「小さな個人主義」は合理的な新しいスタイルとして歓迎されたのだと思います。

 

母が独身時代に金沢旅行で買ったという銘々皿。

 

そして忘れてはならないのは、、、、、今も昔も、銘々皿の用途としての王道は、やはり菓子皿でしょう。

どのうちにもあるというくらいポピュラーな香蘭社の銘々皿や、上の写真の竜胆の角皿など、お菓子以外には似合わなさそう。

それも、お客さんが来たときの。

応接間や座敷にお通ししたお客様に、紅茶や茶托に乗せたお茶と一緒に出す。カステラにレモンティー、ほうじ茶にお饅頭などというレトロな組み合わせが似合います。

 

つまり「もてなしの器」。高度成長期において、マイホームがようやく身近なものになり、ちょっとかしこまったお客あしらいというかおもてなしができるようになった、そんな時代の素直な喜びや晴れがましさをこれらの「銘々皿」は持っているような気がします。

 

 

七宝焼きの松竹梅の銘々皿。これも絶対引き出物。

 

ときどきインスタグラムで「糖質日記」「糖質アルバム」などと名付けて、いろいろな老舗の和菓子の写真を備忘録的に上げているのですが、そんなときにも銘々皿は欠かせません。(Instagram:hideyukiy123)

 

お菓子に似合った、お菓子をより引き立てる銘々皿があると、卓上が華やぎますし、季節感もより感じられます。

お盆の上にお薄のひと碗と銘々皿に乗せたお菓子、を組み合わせて写真に撮るのですが、お茶の先生の友人からは「定食みたい」と笑われていますが、お盆も含めて盆上に「世界」を表現できるのでは?と思っているのです。

シンプルで味があり、お茶の世界の風情もある、そんな銘々皿はなかなかないものですが、そうやって組み合わせを悩むのも面白いものです。

 

桐木地蓮華型銘々皿に「姫椿」老松製。

 

竹皮漆銘々皿に「半生菓子」とし田製。

 

 

薩摩焼桜文銘々皿に「さくら」うさぎや製。

 

MUJI竹製おしぼり皿を八つ橋に見立てて。「干菓子」彦九郎製。

 

 

 

山田英幸

幼い時から美しいものが好きで、長年にわたり骨董・アンティーク・古裂・ヴィンテージテキスタイルなどを収集。

また手仕事も得意で、洋服、帽子、人形、テディベアなどを制作するが、1990年頃「究極の手仕事・仕覆」に出会い、現在も制作を続けている。

西麻布「ルベイン」「銀座松屋」などで仕覆展示会開催。

自称「手芸の国の王子様」。

 

とにかく、「もの」が好き。それにちょっとした工夫や手仕事をプラスすることで、身の回りを美しく、毎日を楽しくしたいと思っている。

愛知県名古屋市生まれ。現広告代理店クリエイティブディレクター。

 

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