住めば都も、遷都する2019/5/3

平成が終わった。30年間、様々な変化があった。その一つに人々が消費するときの決め方が変わったことが挙げられる。博報堂生活総研の「生活定点」調査で見てみよう(20歳〜69歳・首都圏と阪神圏・以下の数字は、消費の3つの判断から自分が主として行っているものを1つ選択した結果)

 

まず、驚くのが「ピンとくるか否か」で決めるという人の率が、平成当初の18%から33%へと大きく伸びたことだ。「好き嫌い」の感性的な判断でもないし、「良い悪い」の理性的な判断でもない。いまや、3割を超える人が、瞬間的で感覚的な「ピンとくる」ことで意思決定をするのである。

 

この変化は、「好き嫌い」で決める人が大幅に減ったことによって起こった。平成4年には、何となく好きだなとか、嫌いだなと言う漠然とした気持ちで決める人が、47%と半数近くを占めていた。いまから思えばバブルっぽい気分である。それが平成30年には36%に下がってしまった。

 

 

「ピンとくる」と「好き嫌い」は、区別が難しいと思われるかも知れない。例えば、アパレルのお店に行ったとしよう。店内に入って、奥の方に「あっ!」と思う服がある。近くに寄ってみると、やっぱりステキだ。こんな感じで、「あっ!」と驚きをもって気づくことが「ピンとくる」である。

 

一方、いくつも並んでいる服を見て「これは、どうかな?」と順に見ていく場合は、「好き嫌い」の判断が中心だ。好みの服が何着かあったとしても、それが「ピンとくる」といった驚きを与える水準であるとは限らない。

 

「ピンとくる」ものの方が、心に深くて強い印象を与える。感情が動いて「好き嫌い」を判断する前に、一目見てグサッと心に刺さってくる迫力を持っている。

 

 

 

さて、「良い悪い」で決める人は、35%から32%と横ばいである。だが、その内実は、だいぶ変わってしまった。平成の初めの頃、「良い悪い」で決めるということは、その商品を出している会社は伝統があるのか、商品は名前が通ったものなのかなど、正統的な理性的判断を示すものだった。当然、年配の人に多い決め方だったといえる。

 

だが、1990年代の半ばからのインターネットの発達は、状況を変えてしまった。商品の比較サイトなどが増えてくるとスペックを詳細に調べ上げる行動が増えた。数字で「良い悪い」を客観的に分析することが可能になったのである。その結果、現在、「良い悪い」で決める人は、ビジネスでも中核となる情報分析にすぐれた男性40代に多い。

 

住まい選びにおいても、こうした3つの決め方で説明ができる。最近では、「あっ!」と感じさせるインパクト、いいかえれば、「ピンとくる」驚きが求められている。マンションの広い玄関ロビーに「あっ!」と思う。部屋に入って天井の高さに驚くといったサプライズが意思決定を左右する。少なくとも見に来た人の3割強は、そうした形で購入するかどうかを決めているといえる。

 

いうまでもなく、住まいの場合、施工や仕上げなどの「良い悪い」も、徹底的に調べたい。インターネットのおかげで、素人でも知識が増えた。また、しっかりとした評価情報も手に入れられる。ただ、その場合も、明瞭に「良い悪い」を示すインパクトのある違いを求めるようになった。

 

全体として、漠然と「好きかしらね、これ」といった感じで住まいを選ぶ人は減っている。もっと驚きを与えてくれる「何か」が欲しいのである。リノベーションされた物件でも、こうした「ピンとくる」をもたらすサプライズを仕込んでいると、成約につながりやすい。

 

住めば都も遷都する。もちろん、こうした3つの決め方は、はっきりと分けられるものではない。個人の心の中にも、こうした3通りの決め方が混在する。また、商品ジャンルでも決め方は違う。ただ、全体として、平成の30年、「ピンとくる」で決めることが、2割弱から3割強に増えてきたことは注目しておきたい。

 

 

 

関沢英彦(文・イラスト)

発想コンサルタント。東京経済大学名誉教授。コピーライターをへて、生活系シンクタンクの立ち上げから所長へ。著書多数。現在、ヤフーニュースなどの個人ブログも執筆中。

https://news.yahoo.co.jp/byline/sekizawahidehiko/

http://ameblo.jp/ideationconsultant/entry-12291077468.html

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