LIFE IS BEAUTIFUL!!! 山田英幸のもの・ものがたり2019/3/19

好きなものだけに囲まれて暮らしたい。

毎日の暮らしを、わがままに、自分好みに美しく整えたい。

そのために必要なのはたっぷりのお金!!

ではありません。

ちょっとしたアイディアや工夫、少しの手間、そして何より一番大切なのはどれだけそのものを愛せるか、ということ。

 

身のまわりのものを愛する、ということは、暮らしを愛する、ということ。

それはつまり、人生を、自分を愛する、ということだと思います。

ちょっとしたことで、暮らしはもっと美しくなる。

人生も、もっと美しくなるのではないでしょうか。

 

 

たぶん1960年代くらいのカレー皿とソースボートのセット。カレーとかハンバーグとかこのお皿で出てきました。

 

いつだったか、クニエダヤスエさんが「若いころはアメリカンファーマシーでパイレックスを買うのが憧れだった」と何かに書いてらっしゃいました。

たしか古伊万里を使ったコーディネートの記事だったと思います。幼いころから身の回りにあった古伊万里などの日本の食器は、若いころはまだその良さを理解できず、外国から入ってきた「新しい文化」に憧れていた、というような趣旨だったと思います。

 

うちの母も、たぶん年代的にはクニエダ氏に近いのでしょう。僕が小さい頃家では、割とモダンなノリタケなどの洋食器を使っており、昔から家にあったような「瀬戸物」などの和食器は戸棚の奥にしまわれていました。

上の写真のブルーグレーの花柄の皿は「カレーの皿」と呼ばれていましたが、カレーだけでなくハンバーグやエビフライやスパゲティなど、育ち盛りの僕と弟、男子二人のための「洋食」が載せられ、かなりヘビロテされていました。今見ても花柄なのにプリティすぎず、大好きなお皿です。

 

 

同じく、ブルーの小花模様のノリタケのスープカップ。

 

これもノリタケ。アトミックぽい不思議な柄。

 

今回この原稿を書くために、昔の食器を戸棚の奥から出してきて並べてみると、昔懐かしい器はなぜかほとんど文様はブルー系。花模様もブルー系。

白くてピュアな素地に、ブルーなどの甘くなりすぎない小さな柄が飛んでいるような食器は、子供が男兄弟ふたりなので、母もさすがにピンクの花柄などを買いそろえるのはためらったからでしょうか。

あるいは、「お祝い」(新築祝い、誕生祝いなど)にいただいた食器もあると思うのですが、先方がうちの家族構成をおもんばかってそういう色味のものをくださったのかもしれません。

 

母のお気に入りのコップ。これは普段は使わせてもらえませんでした。2客は割れちゃったのかな。

 

実家の器を並べてみて気づいたのは、大きく3つに分類される、ってこと。

ひとつはここまでに上げた、「母が新生活(新居・子育て)に夢を描いて買い揃えたモダンな洋食器」。

 

和食器にブルーは珍しくありませんが、こうやって並べてみると何となく一貫した趣味が感じられます。

 

ふたつ目は「昭和っぽいレトロモダンな和食器」。

母だけでなく、物心ついた僕の趣味も入ってきます。

高校時代のこと、瀬戸市に住んでいる先輩がいて、「瀬戸の陶器市」なるものの手伝いのバイトに行ったことがあります。

瀬戸川のほとり、瀬戸物を扱う店のテントがいっぱい並ぶ中で、売れた食器を新聞紙でくるくると包んで袋に入れお客様に渡す、それだけのバイトでしたが、終わるころには仕事にも慣れ、包み方も褒められるようになりました。

夕方になり陶器市が終わり、バイト代のかわりだか、バイト代にプラスして、だかは忘れましたが、好きな食器をもらえることになったのです。

食器を選ぶ、という生まれて初めての経験。その時に自分で選んだのが、下の写真の柿の模様の皿。ほかにも、ストーンウエアのグラタン皿など、妙に渋いものをもらってきました。

 

左上がバイト代(の一部)としてもらった柿の皿。

 

同じく、ストーンウエアのシリーズ。

 

時代の気分がそうだったのか、どうしてこれらの器を選んだか今となっては首をかしげてしまいますが、そのころ一般の家庭では「民藝」ほどは重厚でも手仕事っぽくもない、モダンで軽やかな和食器が流行っていたのは事実だと思います。

住んでいたのが、瀬戸物の大産地瀬戸市の隣の名古屋だったからかもしれません。

 

下の写真の茶碗蒸しの器はたぶんかなり古く、戦前くらいのものだと思いますが、母がこれをしまい込まずに今でも使っているのは、この器が古い割にはシンプルでモダン、使いやすいからなのでしょう。

 

たぶんここに挙げた中では一番古い、瀬戸物の茶碗蒸しの器。もっとたくさん、10客くらいあります。だからたぶん戦前。

 

ここまでの二つのグループ「ノリタケなどの洋食器」「瀬戸物のカジュアルな和食器」は、ともにキーワードは「モダン」「シンプル」。昭和30~40年代の「前向きな気分」が感じられます。

 

しかし、ここに3つ目のグループが登場します。

それはなんと「イギリス風少女趣味」。

このグループの器は、僕や弟が大学で実家を出てから母が買い集めたものなのですが、たまに実家に帰ってこれらの器を見てびっくりしたものです。

「母、どうしちゃったの?」

 

たしかに、そのころ、海外旅行などがブームになり、我々庶民もヨーロッパなどの旅行にも出かけられるようになりました。海外ブランドの洋服や小物なども身近になりました。

当時(昭和50年代)の雑誌などを今見ると、かなりゴージャスでヨーロピアンな気分が感じられます。いわゆる「バブリー」につながるような。そんな時代の気分も確かにあるでしょう。

 

しかしこれらの器を見て僕が感じるのは、男の子ふたりの子育てが終わりやっと一人の「女性」に戻ることができた母に、もしかして本来持っていた「少女趣味」の血が沸き返ってきたのではないか、ということ。

最近問わず語りに、女子大英文科だったころのことを思い出し話す母。

無邪気な「娘」が「母」となり、その間しばらく封印していた好みがその後ふたたびよみがえってきた、、、そう思うとこれらの器に対して「シュミ悪し!!」と切り捨てられないものがあるのです。

 

ロイヤルアルバートとかいうカップアンドソーサー。母にこんな趣味があったとは。

 

これはノリタケ。一客ならまだしも、もう一客はピンク。引き出物かも。

 

なんと、ペイネ。これは母がいま毎日使っています。

 

 

 

山田英幸

幼い時から美しいものが好きで、長年にわたり骨董・アンティーク・古裂・ヴィンテージテキスタイルなどを収集。

また手仕事も得意で、洋服、帽子、人形、テディベアなどを制作するが、1990年頃「究極の手仕事・仕覆」に出会い、現在も制作を続けている。

西麻布「ルベイン」「銀座松屋」などで仕覆展示会開催。

自称「手芸の国の王子様」。

 

とにかく、「もの」が好き。それにちょっとした工夫や手仕事をプラスすることで、身の回りを美しく、毎日を楽しくしたいと思っている。

愛知県名古屋市生まれ。現広告代理店クリエイティブディレクター。

 

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