甘い生活2019/2/9

インテリアを考える時、決まって”どうしようもなく邪魔”になるのがテレビであった。テレビさえなければ、この部屋はもっとオシャレになるのに。いつもいつもそう思う。思いっきり生活感が出てしまう上に、よほどシンプルなインテリアでないと絶対に溶け込まない、恐ろしくスクエアで無味乾燥な機械だから。

 

とは言え、最終的にテレビを省いて考える事は不可能。しかも日常生活が始まれば、結果的にテレビ中心の生活になっていたりする。

 

そのテレビが、家の中でさらに大きな存在感を持ってのさばるようになってきた。今テレビを買いに行くと、壁いっぱいになりそうな50インチ以上の大きなテレビを、こんな風に勧められる。「お部屋がたとえ6畳間でも、このテレビ行けますよ」。

 

そう、今のテレビはどんなに近くから見ても問題が起きないメカニズムを備えているのだ。以前はテレビ画面の縦の長さに対して、5倍の距離をとらなければいけなかった視聴距離。ところが最近のテレビは、画面の縦に対して1.5倍の距離で良くなった言う。

 

それどころか、4Kテレビはもっともっと近くから見ても大丈夫と言うのだから、部屋の中のテレビはさらに大きくなる計算。それを喜ばしく思う人ももちろんたくさんいるのだろうけれど、インテリアとして考えたとき一体どうなのだろう。部屋の壁の4分の1強がテレビ画面みたいなことも起こりうる。

 

もちろんこれをシネマルームと言うふうに考えれば、逆に素晴らしいのだけれど、生活空間の中でテレビが大きすぎると言うのはどうなのだろう。

 

長男が画家、次男が作曲家にして音楽プロデューサー、末っ子である妹はヴァイオリニスト。全員が世界的な活躍をしているすごい兄弟がいる。名前を上げれば誰もがすぐわかる、類稀なカリスマ3兄弟である。当然のことながら、この3姉妹、一体どうやって育てられたのか? 誰だって知りたくなる。ましてや音楽に美術にと、ジャンルを超えているところも素晴らしい。3人が3人とも、芸術家として大成できたのは一体何故なのだろう?

 

じつはこれ、ずばりテレビのない家で育ったからであると言われる。「テレビのない家は、偉人を育てる」「とりわけ芸術家を育てる」そういうことなのだ。

 

普通テレビを見て過ごす時間を、テレビなしで過ごした時、とても単純に、その全てが想像力を養う時間に当てられることになると考えて良い。その違い、わかるだろうか。一方的に大量の情報を放出してくるテレビに、実は誰もかなわない。考えることも、イメージすることも、好奇心を養うことも、精神的な活動を全てやめてしまう。テレビを消した途端、最初は静寂にびっくりするのかもしれないけれど、自分の中から想像力が起き上がり、様々なイメージが押し寄せてくるはずなのだ。

 

今の大きなテレビは壁掛けにして完結させることもできるけれど、やっぱりテレビ中心の部屋になることを考えるなら、テレビなしの生活を検討してみても良いのかもしれない。今時はインターネットでテレビも映画もなんでも見られるし、若者の部屋からはもうテレビはなくなっている。あるいは、テレビなしの生活が感性豊かな新しい自分を引き出してくれ、人生観が変わるかもしれない。人生そのものが変わるかもしれない。

 

家を見直す時、生活をし直す時、ぜひ検討してみたい、テレビとの訣別。

 

 

 

齋藤薫 美容ジャーナリスト/エッセイスト

女性誌編集者を経て独立。女性誌において多数の連載エッセイを持つ他、美容記事の企画、化粧品の開発・アドバイザーと幅広く活躍。新刊『大人の女よ!もっと攻めなさい』(集英社インターナショナル)、『されど“男”は愛おしい』(講談社)など著書多数。

 

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