『散歩の達人』広尾 

ナショナル

エリア内に大使館が10軒以上!
国際色豊かな住宅地でのんびり過ごす

渋谷区と港区の境目に位置する都心の住宅地、広尾。各国の大使館が点在し、あらゆる国籍の人々が暮らす。商店街は活気に満ち、図書館や公園といった公共施設も充実。起伏に富んだ地形を歩けば、若者に人気の最新スポットから懐かしい昭和の風景まで、さまざまな表情が見られるだろう。

インターナショナルな大らかさと穏やかな空気が溶け合う

広尾を歩いていると、いろんな国の人とすれ違う。それもそのはず、周辺にはヨーロッパやアジア、アフリカ、中東の国々など、10軒以上の大使館があり、そこで働く人やその家族が暮らしている。耳に入る言語もさまざまで、時折ここが日本だというのを忘れてしまう、なんてことも。スーパーマーケットには外国語で書かれたPOPが並び、店内は異国情緒でいっぱいだ。

大使館

気になって思わず立ち止まってしまう

ドイツ大使館の長い塀には、一コマ漫画のようなイラストがたくさん。ドイツ語の意味がくわしく解説されていて、楽しく勉強できる。建物は南部坂沿いに位置し、向かい側は有栖川宮記念公園。 地図★1>

ナショナル

ここは本当に日本? まるで海外旅行気分

海外の食料品や日用品を扱うスーパーマーケット『ナショナル麻布』。日本では珍しい果物や、デリコーナーの鶏の丸焼きにテンションが上がる。チーズは世界各国の品々が揃い、実に20ヶ国以上。ポップな色使いのお菓子や缶詰めはおみやげにしても喜ばれそう。9~21時、年末年始休。📞03・3442・3181 地図★2>

広尾の真ん中を縦に貫く外苑西通りの東、つまり港区側には閑静な住宅地が広がる。江戸時代に武家屋敷が密集したエリアで、「武家屋敷は坂上にありました。その跡地に大使館や高級マンションが建ったんです」と東京都立中央図書館の広報担当・飯島由美子さん。有栖川宮記念公園は明治時代に有栖川宮家の御用地だった場所で、江戸時代には盛岡南部藩の下屋敷があった。公園と駐日ドイツ大使館の間を抜ける坂道は南部坂といい、地名から歴史を辿るのもおもしろい。

有栖川宮記念公園

由緒ある場所に作られた住民のオアシス

麻布台地の自然と高低差のある地形を生かした有栖川宮記念公園。総面積が約7万㎡もあり、園内にぐるりと散策路がのびる。木陰や水辺、蔦の絡んだ東屋は人々の憩いの場。有栖川宮熾仁親王の銅像が見守る広場では、子供たちが元気に走り回ったり、ボール遊びに熱中したりする姿も見られる。📞03・3441・9642(有栖川宮記念公園管理事務所) 地図★3>

都立中央図書館

都内の公立図書館で最大級の蔵書数を誇る

東京都立中央図書館の蔵書は、なんと約210万冊。「調査・研究に役立つ」というコンセプトで、幅広いジャンルの書籍や雑誌、論文、全国各地の新聞などを保管する。閲覧室が充実しているので、半日以上滞在し、じっくり調べものをする人も多数。目当ての資料を探せない時は、受付にいる司書へ。10~21時(特別文庫室は~17時30分、土・日・祝は~17時30)、無休。📞03・3442・8451 地図★4>

一方、外苑西通りの西、渋谷区側にあるのが広尾散歩通りこと広尾商店街。突き当たりに祥雲寺の山門がそびえ、広尾がかつて門前町として発展してきたことが伺える。近年、飲食店や生花店など、こだわりの強い専門店、今時のセンスが光る店が増え、と同時に昔ながらのおもちゃ屋、銭湯など昭和の風景もしっかりキープ。そんな表情豊かな街並みが、散歩を楽しくしてくれる。

東京フロインドリーブ

ライ麦などの材料も本場ヨーロッパ産

ドイツパンと焼き菓子の『東京フロインドリーブ』は、初代が神戸の本店で修業し、暖簾分けというかたちで1970年にオープン。アップルパイ475円、チーズケーキ475円は、創業時からあるロングセラーだ。リボンに似た形状のクロワッサン270円は、表面がこんがり香ばしい。てっぺんに風見鶏を取り付けたドイツ式の建物も必見。10~19時(日・祝~18時)、水・第2・4木休。📞03・3473・2563 地図★5>

Homework’s

アイデア満載のオリジナルバーガーも

『Homework’s』のハンバーガーは、ボリューミーだが口当たりが優しくヘルシー。パティとなる肉を網焼きし余分な脂を落としてあるので、ぎゅっと引き締まった食感を実感できる。ベーシックなハンバーガーはもちろん、パンケーキで具材をサンドした広尾バーガー1350円も人気。メープルシロップの甘みが肉の旨味をぐっと引き立てる。11時~18時30分LO、月(祝の場合は翌日)休。📞03・3444・4560 地図★6>

1985年創業の『Homework’s』は、日本で最初のグルメバーガーレストラン。利用客には家族連れも多く、うれしそうにハンバーガーを頬張る子供たちが微笑ましい。「先代オーナーは一時期ロサンゼルスで生活していました。帰国後、娘にも本物のハンバーガーを食べさせたいと思い、それを機に店を始めたそうです」と店長の内藤裕久さんもにっこり。なかには子供の頃親に連れられて来ていたが、大人なった今、自分の子供と一緒に通う親子3代に渡る常連客もいるとか。

nuts tokyo

いろいろ食べ比べるとヤミツキに

ナッツ専門店『nuts tokyo』では、ぜひナッツの量り売りを。シンプルなもの、独自にブレンドした味付きなど種類豊富で迷うが、全種類試食できるのできっとお気に入りが見つかる。ピーナツバターサンド550円は1日15食限定で、ナッツを粉砕してバターに練り込むところから手作り。アーモンドミルク700円。11時30分~19時30分(水は11時~)、無休。📞03・3442・1518 地図★7>

AFRIKA ROSE

1輪のバラを通して遠いアフリカを知る

「オーナーの萩生田は昔ボランティア活動でケニアを訪れ、街で売られていたバラに感動したそうです」と会社設立のきっかけを語る『AFRIKA ROSE』の店長・海野さん。店には花を買いに来る人だけでなく、アフリカ文化が好きな人も訪れる。2019年11月より「ローズハウスプロジェクト」と銘打ち、ケニアと繋がる商品も販売するなど、単なる“店”を越えた活動も。「気になる方は公式HPをチェックして下さい!」。11~20時、無休(8月のみ木休)。📞03・6450・3339 地図★8>

特定のジャンルを深く掘り下げるユニークな店が多いのも、広尾商店街の特長。『AFRIKA ROSE』の店内には、ケニアの契約農園から直接空輸で届く新鮮なバラが並ぶ。アフリカの大地に育まれたバラは、花が大きく、その鮮やかな色合いと繊細なグラデーションが印象的。店長の海野真司さんをはじめスタッフはみんな気さくで、「日本で出回っている一般的なものに比べて茎が倍近く太く、1週間ほど長持ちします。実は、ケニアのバラ輸出量はトップクラスなんです!」とおしゃべりにも花が咲く。

n43°

北海道ワインの新しい波に注目!

メインで紹介している余市と弟子屈が共に北緯43度線に位置することから、店名は『n43°』に。佐藤さんの北海道ワインに対する愛は深く、「余市の平川ワイナリーは設立してまだ5年ほどですが、とある航空会社の国際線ファーストクラスにも搭載された新進気鋭」と言葉に熱が入る。弟子屈では、町民と一緒に新商品の開発を行うなど町興しにも協力。12~18時(土・日は11~19時)、無休。📞03・6277・4743 地図★9>

江戸東京味噌

味噌を味わって江戸時代にタイムスリップ

明治中頃に衰退し、戦後贅沢品に指定され製造禁止になった江戸味噌。それを現代に再現した『東京江戸味噌』では、江戸の街で売られていた江戸味噌、江戸甘味噌、田舎味噌、仙台味噌を100g単位で購入することができる。味の特長や製造方法、味噌の歴史を聞きながら、4種類を飲み比べするひとときが味わい深い。ちなみに江戸味噌、江戸甘味噌は大豆を茹でずに蒸して作るので、旨味がしっかり感じられる。11~17時、土・日・祝休。📞03・3447・4130 地図★10>

北海道ワインの専門店『n43°』では、オーナーの佐藤大行さんが話してくれる製造秘話が興味深い。一押しは余市にある平川ワイナリーで、「平川さんは40代とまだ若いですが、情熱のあるおもしろい人。最初ソムリエを目指していたのに、好きが高じて自分で作りたくなったようです」。ここでしか手に入らない限定商品もあり、どれにしようか迷うのも楽しい。佐藤さん自ら北海道に足を運ぶことが多く、現在は道東の弟子屈にブドウ畑を作り、町産ワインの開発を進めているとか。

それいゆ

昭和の人気画家・中原淳一の世界に浸る

昭和初期に活躍した画家・中原淳一のショップ『それいゆ』。当時少女だった年配のファンからも、今の若い女性からも強く支持されている。文房具や食器といった雑貨、洋服、関連書籍が所狭しと並び、思わず目移り。昭和レトロで、それでいて今見てもモダンなタッチにときめき、世界観にうっとりしてしまう。11時~19時30分、火休。📞03・5791・2373 地図★11>

昭和初期の人気画家・中原淳一のショップ『それいゆ』も広尾だけ。ショーウィンドウにはイラストの少女が着ているのと同じ洋服が飾られ、店内で販売もしている。

インターナショナルで、新しさと懐かしさを併せ持つ広尾。アップダウンのある地形で、坂の上と下では景色が異なる。共通しているのは、街を覆う程よい生活感。それがなんだか心地よく、ついのんびりしてしまうのだ。
 

 

 

文=信藤舞子 撮影=高野尚人

 
*本ページに記載されている情報は2019年10月30日現在の情報です。

青木坂
坂道で江戸時代の広尾を想像

広尾は坂道が多く、坂の上には大使館があるということが多い。江戸時代まで遡ると、大抵の場合、その一帯には武家屋敷があった。写真は駐日フランス大使館がある青木坂。江戸時代中期以降、坂の北側に旗本青木氏の屋敷があったことから、この呼び名が付いたという。 地図★12>

Nem Coffee & Espresso
芝生に座ってホッとひと息

有栖川宮記念公園はピクニックにもぴったり。敷物の上に弁当を広げ、寛ぐ家族連れも。近くのコーヒーショップ『Nem Coffee & Espresso』でテイクアウトしたコーヒーを飲み、生い茂る緑を眺めるのが大きな癒しに。苦味と酸味を抑え、深い甘みが感じられる中深煎りが歩き疲れた体を緩やかに覚醒させる。 地図★13>

有栖川食堂
調べものが捗る秀逸ランチ

東京都立中央図書館には長時間滞在する利用者が多く、館内にはカフェや食堂を完備。5階の『有栖川食堂』は壁一面が窓になっていて、東京タワーや六本木ヒルズが見渡せる。世界各国の料理を取り入れた月替わりの定食1000円も人気で、写真の主菜はジョージアのオジャグリ(ジョージア風ジャーマンポテト・パクチーのせ)。他にも大分県宇佐のからあげ定食など、人気の定番メニューもある。11~17時LO(定食は~15時LO)。📞03・3441・8770 地図★14>

祥雲寺
商店街の奥にある小さな寺町

広尾商店街の突き当りには祥雲寺の山門があり、内側は、商店街とは打って変わって静かで落ち着いた雰囲気。4軒の寺院が肩を寄せ合い、小さな寺町を形成している。定期的に坐禅や写経・写仏の会を開いているところもあるので、いくつか体験し、自分に合う場所があれば通うのもいい。 地図★15>

広尾商店街
何でも揃う地元住民の御用達

元々祥雲寺の参道だったところに店ができ、それが広尾商店街に。食料品店や飲食店、日用品、文房具など何でも揃い、地元住民の暮らしを支える。その一方でジャンルを特化したユニークな店も増え、それを目当てに遠くからわざわざ足を運ぶ人も。祭りやクリスマス企画など、季節に沿ったイベントが豊富。 地図★16>

昭和の風景
商店街に残る昭和の風景

商店街を散策中、ふと視界に入った昭和の風景に目を奪われる。今時のショップが増えてもなお、おもちゃ屋、せんべい屋、銭湯など、昔ながらの店が残る。寄り道して買い物したい欲求がムクムク。清潔感のある街並みに、レトロな店構えが映える。 地図★17>

山種美術館企画展示室
自由な視点で日本美術を鑑賞

日本初の日本画専門美術館で、近代・現代の日本画を多く所蔵する山種美術館。展示は、横山大観、上村松園をはじめ、個別の作家に焦点を当てるもの、初心者でもかしこまらずに楽しめる花や動物、「Kawaii」をテーマにした展示など、1年間にさまざまな企画が目白押しだ。展示中の作品をモチーフにしたグッズ、オリジナル和菓子を提供するなど、ショップやカフェも展覧会に連動。海外からの観光客には浮世絵や江戸絵画のコレクションが人気だとか。10~17時(入館は~16時30分)、月(祝の場合は翌日)・展示替え期間休。通常展入館料1000円(特別展は展覧会により異なる)。📞03・5777・8600 (ハローダイヤル) 地図★18>


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