『散歩の達人』日本橋 

お江戸日本橋亭

21町もある“日本橋”、
一緒くたにできない個性

江戸でまっさきに開かれた街・日本橋。今は、五街道の起点の橋である日本橋に、老舗デパートなどの歴史的建造物が連なる光景で親しまれる、東京どまん中の一大商業地だ。とはいえ“日本橋”と付く地名は21町も! 縦に横にと歩いて、一緒くたにできない個性を見に行こう。

江戸の街も、魚市場も、日本の街道も、すべてはここから

日本橋は、はじまりの街だ。16世紀末、新しい領主として江戸に入った徳川家康が、街づくりで最初に着手したのは今の日本橋本町。江戸城の常盤橋門外から東の浅草方面へ向かう奥州街道に沿って町割りを行なったのだ。江戸幕府開府の慶長8年(1603)に木造の太鼓橋の日本橋が架けられ、翌年にはこの日本橋が五街道の起点に。よく見る「東京まで〇㎞」という道路標識の多くは、日本橋までの距離を表しているという。また、水運にも恵まれたことから北岸には魚河岸も広がった。今も日本橋魚市場発祥地の碑が残る、東京の魚市場の始まりの場所でもある。

日本橋

江戸の発展と五街道のスタート地点

慶長8年(1603)に初めて架かった五街道の起点の日本橋。全国から職人や商人が集まり江戸城下の中心地を形成した。今の橋は明治生まれの石橋で、高速道路の陰になっているが、観光客でにぎわう東京観光名所の鉄板だ。 地図★1>

日本橋

上も向いて歩いてみよう!

日本橋以北の中央通りは、日本橋三越本店、三井本館の歴史的な国指定重要文化財と三井タワーやコレド室町などの現代ビルが調和し立ち並ぶ。見上げると思わぬ発見もあり、観賞しがいのある街並みだ。 地図★2>

現代は高速道路の下に隠れるようにあり、少々目立たない日本橋。でも、明治44年(1911)築というこの石造二重アーチ橋は、現役の国道道路橋として初めて指定された重要文化財。ルネサンス様式、獅子や麒麟の像などの装飾、徳川慶喜による揮毫の銘板……と、見どころだらけだ。日本橋川の景色ももちろんいいけれど、橋自体もじっくり観賞したくなる。

駅でいうと日本橋駅~三越前駅~新日本橋駅のあたりの中央通りは、いつでも華やか、心浮かれるメインストリート。髙島屋に三越の老舗デパートや三井本館、コレド室町、コレド日本橋というように、重厚な歴史的建築とスタイリッシュな現代建築が見事に共存する。だが、そんな場所にも、すぐ裏に入れば背の低い建物が肩を寄せ合いひっそり息づくような路地があるから面白い。

お江戸日本橋亭

江戸の真ん中で伝統芸能を満喫

落語芸術協会の定席をはじめ、講談に浪曲、長唄などの伝統芸能をほぼ毎日楽しめる『お江戸日本橋亭』。観賞するだけでなく、プロから学べる演芸・邦楽スクールも開催。昼の部、夜の部あり。不定休。📞03・3245・1278 地図★3>

明治6年(1873)に日本初の国立銀行が開業し、東京証券取引所も鎮座する兜町は、茅場町と併せて日本のウォール街とも呼ばれる金融街。無機質そうな街だけど、点在する証券会社は建物がレトロであったり、看板が派手だったり、意外と個性的で楽しめる。陶器や雑貨に囲まれた不思議な印章店に、レトロビルの大きな窓を通して路地からも覗き見できるギャラリーなどと、いいスキもいっぱいだ。

衣食住に使える多彩な刷毛・ブラシがそろう『江戸屋』は享保3年(1718年)創業、鰹節専門店の『大和屋』は江戸末期創業と、100年超えの老舗が今なお現役で多くあることも日本橋の魅力。しかも、地に足ついたいいモノと出会える店の多いこと! 豆ばさみや巻尺、ピンクッションなどと普段使いもできそうな愛らしい手芸道具を手がけるのは室町の『Cohana』。富沢町に本社を構える耐熱ガラスメーカーの『HARIO』は大伝馬町と室町の直営店でガラスのアクセサリーやテーブルウェアも取り扱う。日本橋や本町、小伝馬町にはいくつもの和紙専門店が点在するし、小舟町には若手工芸作家の作品を全国から集めたギャラリー・ショップの『ヒナタノオト』がオフィス街を彩る。まあ、それも当然か。だってここは日本橋。全国各地から職人・商人が集まり栄え、江戸城下の中心地となった街だもの。そのDNAの賜物だろう。

江戸屋

魅惑の、刷毛・ブラシの小宇宙

創業300年の刷毛・ブラシ専門店『江戸屋』は、天井も引き出しも刷毛・ブラシずくめ。「業務用を入れると3000種以上はありますね」と12代目の濱田捷利さん。お客さんの要望で生まれた櫛形のヘアーブラシ携帯用ゴマ豚毛2500円(税抜)、和歌山の職人によるシュロのS字束子900円(税抜)、豚毛のウール用洋服ブラシ5500円(税抜)など、取り扱う品々はいずれも日本製で、職人育成にも注力する。使用感を確かめて選べるようにと、店内の見本は全て試用可能。9~17時、土・日・祝休。📞03・3664・5671 地図★4>

Cohana

小さきものに詰まった、日本の技と伝統

1953年創立の地元手芸道具メーカーが営む『Cohana』。関の豆ばさみ1485円、豆枡の針山1815円など、全国の職人の手仕事を融合した愛らしい道具は、手芸に限らずアイデア次第で多彩に使えそう。10~17時、土・日・祝休。📞03・6910・3255 地図★5>

モノといえば、忘れちゃいけないのが問屋街。特に横山町、馬喰町、東日本橋エリアは繊維と服飾関係の問屋が集結する。衣類を売る店はいくらでもあるけど一般の人はほぼ買えないし、働く人の街という色が濃い。でも一方で、「開店してみて分かったのは、住んでいる人の多さでしたね」と『BEAVER BREAD』のご店主。近年はマンションも林立し、ファミリー層が増加している。また、年季の入った古ビルを活用したギャラリーや飲食店といった新しい顔も覗かせる。

BEAVER BREAD

パン屋さん不毛地帯に希望の星!

わずか3坪の売り場に、ひっきりなしにお客さんが訪れる『BEAVER BREAD』。「小さくても強い、街の人のためのパン屋になりたい」と店主の割田健一さん。人気のメロンパン250円ほか、多彩な種類に目移りする。8~19時(土・日は~18時)、月・火休。📞03・6661・7145 地図★6>

nel CRAFT CHOCOLATE TOKYO

そのデザインにも意味がある

カカオ豆の選別から行う『nel CRAFT CHOCOLATE TOKYO』。親しみやすい味わいのボンボンショコラは味に関連した意匠もユニークで、ブラジルやベトナムなど豆の生産地の国旗や、和の伝統文様などが描かれる。ちなみに赤色の丸いショコラは「梅」。1個378円~。ショコラに合うドリンクがそろうカフェも併設。10時~19時30分LO、不定休。📞03・5643・7123 地図★7>

PAPIER TIGRE

フランス文具と日本茶の楽しい出合い

パリで人気の文房具ブランド『PAPIER TIGRE』の国外第1号店。店内には日本茶のカフェもあり、アイス抹茶ラテ500円や週替わりの三煎茶780円などが味わえる。写真の文房具はボールペン600円、えんぴつ350円、A5サイズノート「THE ILUZIO」1400円、WHITE GLUEのり400円、PENTELサインペン250円(すべて税抜)。11~19時、月休。📞03・6875・0431  地図★8>

日本橋エリアで一番緑を感じる浜町公園や浜町川緑道。そこを通りながら浜町方面に出れば、清洲橋と豊かな水と開けた空が気持ちいい隅田川テラスが待っている。最近は新たな街づくりも進行中で、洗練されたチョコレート専門店やフランスからやって来た文具店なども根を下ろす。街並みは穏やかながらも、進化が著しく目が離せないエリアである。

そのお隣の人形町は、江戸時代初期の江戸歌舞伎発祥の地。人形浄瑠璃などの芝居小屋も立ち並び、人形に関わる職人、人形師も住まう“人形の街”として発展した。今はすっかり観光地のにぎわいで、甘酒横丁を筆頭に、縦に横に店が多くて目移り。いぶし銀な看板建築や路地もまだまだ残る一帯だから、出くわすたびに「よくぞ残っていてくれた!」と心の中で拍手喝采したくなる、奇跡の下町だ。

ゆっくりと回すごとに変わる万華鏡の世界のように、歩けばころころと様相が異なる東京のど真ん中。連綿と続いてきた日本橋という“老舗”の豊かさ、大らかさを感じてほしい。
 

 

 
文=下里康子 撮影=加藤昌人

*本ページに記載されている情報は2019年9月30日現在の情報です。

大観音寺
街を見守る観音さま

人形町界隈には神社が多く、貴重な寺院のひとつが大観音寺。明治13年(1880)の創建といわれ、昭和新撰江戸三十三観音札所の第三番。毎年秋の人形市では人形供養も行われる。 韋駄天(いだてん)様が祀られることからランナーの聖地でもあるとか。その脇の、渋い料理屋が連なる路地も趣きあり 地図★9>

清洲橋
眺めてよし、走ってもよし

隅田川に架かる優美な吊り橋といえば清洲橋。たもとには約60年使われた照明器具もひっそり展示されている。隅田川テラスはいつ訪れても豊かな水辺の景色が気持ちよく、ランナーにも人気だ。 地図★10>

大和屋
一口食べれば癖になる散歩の友

江戸時代末期創業のかつお節専門店『大和屋』。昆布の品ぞろえも多く、ウォーキング昆布580円なるユニークな商品も! 利尻産の天然昆布を小さく切りそろえ、歩きながらでも食べやすくて気軽に栄養補給ができそう。しかも料理の出汁取りにも使えるすぐれもの。10~18時、日・祝休。📞03・3241・6551 地図★11>

HARIO CAFE
世界一の味もいつでも飲める!

日本橋の耐熱ガラスメーカー『HARIO』の器具で淹れたさまざまなコーヒーを楽しめる『HARIO CAFE』。ドリップコーヒー800円やワールドチャンピオンレシピ2000円は、あらゆるレシピを再現できるハイテクドリップマシン「V60オートプアオーバーSmartQサマンサ」を使用。ほかに「テクニカ」によるサイフォンコーヒー、「フィルターインコーヒーボトル」による水出しコーヒーもあり。11~18時、不定休。📞03・6262・6528 地図★12>

ヒナタノオト
心和む、日々を彩るものたち

空色の格子の窓から日が注ぐ温かな雰囲気の店内に、日本の若手工芸作家の作品を中心に集めた『ヒナタノオト』。月2回の展覧会に合わせて通りに面した窓辺のディスプレイも変わり、歩く人の心も和ませる。12~18時、金休(臨時休あり)。📞03・5649・8048  地図★13>

金子梅所印房
よく、何屋さん?って聞かれます

骨董屋か食器屋かと思うほど陶器や小物雑貨がいっぱいで、思わぬ掘り出し物とも出会える『金子梅所印房』。実は嘉永元年(1848)創業で、日本銀行御用達という老舗の印章店。現在は兄妹で店を守る。9時~17時30分、土・日・祝休。📞03・3666・1027 地図★14>

おひげ寿司
お寿司もおひげの若大将もいい!

おひげの祖父が始めたという『おひげ寿司 日本橋本店』では、3代目の藤本将義さんも伝統(?)を守る。おまかせ11貫2700円は寿司ネタのスター選手ぞろいで満足感あり。11時30分~14時・18~22時(土は~21時)、日・祝休。📞03・3661・9177 地図★15>

ほんやのほ
秘密部屋のようなここはなに?

2019年2月に開店した『ほんやのほ』はユニークな会員制の書店。雑居ビルの3畳ほどの小部屋に収まる本は、古書、新刊合わせて約1000冊。靴を脱いで上がるので、解放的な気分になり気づけば時間を忘れてしまう。入会無料。15~20時(土・日は13~18時)、月・木・第2・4日(https://twitter.com/ho_bo_po 参照)。📞なし 地図★16>

Fruit Chef
旬の味が華麗なスイーツに!

全国各地の農家直送のフルーツを使って、季節感あふれるスイーツが楽しめる『Fruit Chef』。マスクメロンパフェ2350円(税抜)~、クロワッサンにクリームと旬のフルーツを挟んだフルーツシェフサンド1280円(税抜)は定番の人気メニューだ。11時~14時30分(14時LO)・16~18時(金は~20時。売り切れ次第終了)、水・日休。※2019年10月末頃までは短縮営業につき、16時以降は休業。📞03・6206・2626  地図★17>

いっぱい居酒屋 はすみ
釣り好き&唎酒師の店主がもてなす、酒と肴

『いっぱい居酒屋 はすみ』は、ゆったりした店内と釣り好き店主が手がける多彩な肴が魅力。平目昆布〆800円、牛スジ豆腐煮600円、ミスターししゃも2本400円、ホイス400円ほか。店主は唎酒師でもあるので、選りすぐりの日本酒各500円もぜひ一杯。ランチもおすすめ。11時30分~13時30分・17~24時、土・日・祝休。📞03・3666・8932 地図★18>


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