『散歩の達人』大塚 

タヌキとカエルの石像

予想外の再開発で注目度急上昇!
街の多様性を体感しにゆこう

山手線の“輪っか”のてっぺんに位置する大塚駅。池袋と巣鴨にはさまれて、個性はやや控えめかもしれないが、最近の再開発により注目度はグンと急上昇。変わる隙のなかった街の変化を目にしつつ豊島区の大塚から文京区の大塚まで歩けば、大塚の多様性を感じられるはず。

変わる隙間のないと思えたノーマークな街にも吹く、新しい風

高架の山手線の車窓から、ゆるゆると路面を走る都電荒川線が眼下に見えてきたら、そこが大塚駅。いくらビルが建ち並んで都会的ではあっても、どことなくのどかな空気に包まれているのは、この愛らしきチンチン電車の存在も大きいだろう。

都電大塚駅前

都電と山手線が交差する鉄風景

三ノ輪橋から早稲田を結ぶ都電荒川線(東京さくらトラム)の大塚駅前停留場。意外かもしれないが、沿線内で唯一、JR山手線と出合うポイントだ。都電は日中、6~7分間隔で運行している、地元民の気軽な足! 地図★1>

ここ6年のうちに南口の駅ビル『アトレヴィ大塚』ができ、北口側では再開発による商業ビル『ba1』がオープン。星野リゾートの都市型観光ホテル『OMO5』が入り話題に。さらに、今秋には『アパホテル』が南口に600室以上もの“大箱”ホテルを開館させるとあって、近年の駅周りの変化は著しい。すでに完成された街でもう変わる隙間などないと思っていたけれど、交通の便のよさが見直されたのだろうか。ノーマークな街にも新しい風が吹いてきた。
「外国人、めっちゃ増えていますよ。これ見てみます?」。『BAR MOO』でマスターが差し出してくれたのは世界地図のシート。「外国人のお客さんにはどちらから来たのかシールを貼ってもらっているんですよ」。星型のシールはアジア諸国をはじめ、アメリカ、カナダ、メキシコ、中近東、オーストラリア、ニュージーランド、ヨーロッパ諸国とあちこちの国に貼られている。確かに、それは駅を降りた時から感じられたし、語学バーなんていうインターナショナルな楽しい店の出現も影響しているのかもしれない。

BAR MOO

裏通りを照らすアートな隠れ家

夜になるとガラス張りの佇まいが幻想的な『BAR MOO(バー・ムー)』。インテリアやオブジェは地元出身のマスター・MOOさんによる手作り。重厚なバーカウンターも近隣の銭湯からもらった廃材(住宅の梁)で作ったそう。モスコミュール972円は自家製ジンジャーシロップを使用。燻製料理も自家製で、毎年10~3月には燻製牡蠣1個421円も登場。チャージなし。19時~翌3時(金・土は~翌4時、日は~翌1時)、不定休。📞03・3949・9388 地図★2>

SPEAK EASY

雑居ビルに広がる国際交流の場!

地元出身の鈴木さんが、「大塚に国籍、人種、性別を一切区別しない国際空間を創りたい」という思いから手がけた語学バー『SPEAK EASY』。在日外国人や旅行者、自分の外国語能力の腕試しをしたいという日本人が多く、店内はまさに無国籍空間だ。ドリンクは全て500円または600円。18~24時、日・月休。📞03・3915・1099 地図★3>

大塚を地図で見ると、大塚駅を中心に道路や都電の線路が放射状のように伸びている。どの道を歩こうか、と悩ませる楽しみがある。地元密着な飲み屋街の道に、賑やかな商店街の道、料理屋や銭湯などが点在し三業地の名残を残す曲り道……とさまざまで、どこを進んでも面白い発見がある。坂道も多く、起伏に富んだ地形に息を切らすこともあるけれど、ハズレなしのくじ引きの気分だ。

おさらや

住宅地の真ん中にある小さなポーランド

南大塚のとある坂の途中にある『おさらや』は、スタンプと絵筆による絵付けが特徴のポーリッシュポタリー(ポーランドの陶器)の専門店。カラフルでかわいらしい模様とハンドメイドの温かみが魅力。レンジやオーブンにも使え、気に入った物をコレクションするファンも多いそう。マグ1570円~、皿1200円~。11~18時、水・木休。📞03・5319・4777 地図★4>

カフェではなく昔ながらの喫茶店が多く健在で、しかも名店ぞろいなのも大塚ならでは。『喫茶ゑでん』では、手作りの大きなプリンを大きなスプーンで豪快にすくってツルンといただく。あぁ、幸せ。優しい甘さに頬が緩む。絨毯のようなゴージャスな壁にモスグリーンのソファ、ちょっとしたホテルのラウンジみたいな“楽園”に身をゆだねると、心ゆくまでくつろいでしまう。

喫茶ゑでん

変わらぬ佇まいと優しきプリン

1959年の創業から変わらない内装の『喫茶ゑでん』。名物のカスタードプリン550円も約60年変わらぬ優しい味わい。ゼラチンも使わず無添加で、新鮮な素材だけを使っている。コーヒーとのデザートセットは100円引きで890円に。9時30分~20時、日・祝休。📞03・3945・3540 地図★5>

……と、気づけばここは文京区の大塚だ。
そう、文京区の大塚も忘れちゃいけない。大塚には2つの大塚があるのだ。大塚駅が所在する豊島区のイメージが強いかもしれないが、駅の南北にそれぞれ“豊島区”の南大塚と北大塚があり、そのさらに南に“文京区”大塚が広がっている。実はそもそも“大塚”の元祖は文京区。丸の内線茗荷谷駅近くにかつてあったという大きな古墳を指す呼称が、この名の由来なのだそう。そんな“元”大塚はやっぱり不思議とムードが変わる。

パティスリーHiyama

袋を見ながらおいしく味わう文京区

『パティスリーHiyama』では、オーナーパティシエが地元のおみやげになる名物を、と文京区の形をした文京サブレ190円を考案。袋には区内の名所の位置が書かれている。極みチーズスフレ120円は、ころんと丸いかたちが愛らしく、味も絶品の看板商品だ。10~19時、不定休。📞03・3945・3585 地図★6>

嘉ノ雅茗渓館

欲張りな一皿で優雅なランチを

1日1組限定、全館貸し切りの結婚式場「嘉ノ雅(かのび) 茗渓館」の1階は、優雅な空間で食事やお茶を気軽にできる『カフェハルテラス』。15時までのコンビランチ1728円は店で人気のパスタ、キッシュ、ビーフシチューがそろった贅沢なワンプレートだ。11時~19時30分LO、第2火休。📞03・5319・1890 地図★7>

東邦音楽大に筑波大、お茶の水女子大などと、学び舎が集結するアカデミックな表情。結婚式場が都内でも珍しかった昭和初期、花嫁の憧れだったという『茗溪会館』は、日本の学問や教育の分野で尽力した人々が集うおもてなしの館でもあったという。その精神と伝統を受け継ぐ『嘉ノ雅 茗溪館』のカフェに立ち寄って、そんなハイソなハレの場の空気をお裾分けしてもらおう。

『マールツァイト』でふっくら、モチモチのボリュームあるドイツパンをお土産に買い込んだら、大塚の際まで行ってみようと、カイザースラウテルン広場へ。一度見たら夢に出てきそうなヘンテコな彫刻たちをなでたり、歯車をいじってみたりして、芸術鑑賞。解説板を一読すると、どうやらこちらもドイツにちなんだスポットのよう。ドイツつながりは意図的なのか? たまたまなのか?

マールツァイト

ニコニコ奥さんの作るドイツパン

ドイツ語で「いただきます」を意味する『マールツァイト』はドイツパンの店。ミルク酵母に出合い感動した白井幸子さんが50歳の時にオープンしたという。幸子さんが手にするのは、店を代表する味のライ麦カンパーニュ1296円(ハーフサイズもあり)。右のご主人の手には、そば粉を使った酸味が優しいパンの戸隠648円。11~19時、木・日・祝休。📞03・5976・9886 地図★8>

カイザースラウテルン広場

異質なオブジェたちが井戸端会議してるみたい

文京区とドイツのカイザースラウテルン市の姉妹都市提携を記念して造られた、「カイザースラウテルン広場」。同市出身の彫刻家による彫刻作品群「神話空間への招待」が置かれているのだが、これがなかなかのインパクト。同市の紋章にもあり幸運のシンボルという「魚」、偉大な力の象徴の「一角獣」、太古と日本文化の源などを象徴する「アンモナイト」、進化を示す「かたつむり」などにより構成されている。 地図★9>

そうかと思えば、都会であることを忘れそうになるノスタルジックな光景も。護国寺の裏と春日通りの間にある「吹上稲荷神社」と坂下通りの一帯は、谷の地形に、坂あり路地あり階段あり。ちょっと地方のひなびた温泉街などへと旅に出て迷い込んだようだ。

大塚は広い。そこには思いの外、多様な顔が待っている。ぶらぶら歩いて、街の百面相を確かめに行こう。

 

 

 

文=下里康子 撮影=オカダタカオ

*本ページに記載されている情報は2019年9月13日現在の情報です。

ぱん小屋
電気屋さんの店舗でまさかのパン!?

娘さんのママ友がパン作り名人だと知った小林栄美子さんは、電気店だった自宅にオーブンなどの厨房設備をそろえ、『ぱん小屋』という名でパンの店頭販売まで代行する世話焼きさん。「パンがおいしいから応援したいのよ」。一番人気はミルク食パン300円。現在は月1回程度の営業で、予約販売がメイン。2019年秋以降は週1回の営業を目指す。販売日は店先の貼り紙でもお知らせする。📞090・1693・7253 地図★10>

ペンギン堂雑貨店
ペンギンだらけのここは何屋さん?

ぬいぐるみに文房具など、さまざまなペンギングッズを集めた専門店『ペンギン堂雑貨店』でありながら、実は3代続くガラス屋さん『高野硝子店』。おまけに店主の高野ひろしさんはフリーライターでもあるというゆかいなお店だ。12~18時、水・日・祝・不定休。📞03・3917・8427 地図★11>

タヌキとカエルの石像
街を見守る仲よしコンビ(?)

住宅街のマンションの角に、長年置かれているというタヌキとカエルの石像。笠をかぶり大福帳と酒徳利を手にしたタヌキと微妙な距離感で佇む愛嬌のあるカエル。両者ともかなり古そうだが、なぜ、いつから鎮座するのかは不明。ただならぬ気配に、思わず、道中安全を祈って手を合わせたくなる。

伊勢元
何はともあれ、さあ、飲め、食べよ!

大塚のんべえ界で欠かせない酒場といえば『伊勢元』。おすすめは、氷を入れず強炭酸と薄口グラスが決め手の焼酎ハイボール380円。そのお供にはぜひ、豚つくねナンコツ入り1本200円、ガツ酢みそ400円を。17時30分~22時、日・祝休。📞03・3918・4646 地図★12>

スダシャポー
手づくり帽子のパイオニア

手作り帽子の普及を目指して、1955年に創立した帽子の学校『スダシャポー』。父上の後を継いだ2代目学院長の須田京子さんのもとには、初心者からプロまで、遠くは関西からも生徒が集まる。路地裏のモダンでかわいらしい校舎のショールームには多彩な帽子がいっぱい。体験教室や見学会、展示販売会もあり。📞03・3941・0895 地図★13>

クサリ
思わず二度見してしまう

不忍通りが千川通りに向かうあたりは道幅が広くて、ついついスルーしてしまうエリア。そんな中に驚きのオブジェ発見。駐車場のあるビルの片隅でぶら下がるのは、巨大なクサリ!? この上も気になる。

吹上稲荷神社
文京区大塚のご鎮守です

徳川2代将軍・秀忠が日光からご神体を賜り、江戸城内の吹上御殿に建立したことから名付けられたといわれる「吹上稲荷神社」。坂下通りから脇へ入る神社の背景には護国寺の緑が覆い、都会とは思えない雰囲気を醸し出している。 地図★14>

OMO5
ついに大塚リゾート地化!?

大塚駅北口側の再開発により2018年5月に誕生した『OMO(おも)5』。星野リゾートが手がける新しい都市観光型ホテルだ。靴を脱いでくつろげる秘密基地のような部屋や、大塚散策の情報を収集できるロビーラウンジなどがある。 地図★15>

ラシクラス南大塚
音符が並んだ楽しげなビルは一体……?

なんとここ、『ラシクラス南大塚』は家具と家電付きの防音賃貸マンション。以前は来日演奏家や音大受験生も利用する宿泊タイプの防音スタジオだったが、最近リニューアルしたばかり。近くに音楽大学もあるので需要は高そう。他の街にも物件あり。問い合わせは https://rasiclas.com/へ 地図★16>


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