『散歩の達人』豊洲 

水上バス乗り場 メイン

いつでも驚きと発見がある
現在進行形のカナルタウン

大正時代までは土地すらなく、その名が付いたのもつい80年前。 現在も計画的な造成が進行中の、都内でも新しい街の豊洲。高層ビルが林立する都会的でハイソなイメージも色濃いけれど、歩くたびに驚きと発見に出合える豊潤な運河の街だ。

大型ビルの林立にも窮屈さを感じさせない、街の特性

築地から移転した東京都中央卸売市場豊洲市場が開場すること9か月。新しい顔も徐々に馴染みつつある、豊洲。見上げるほど高いオフィスビルにタワーマンションなど、堂々たる建物が林立するが、その立ち並び方に窮屈さはなく、空間を取ってゆったり。こんなぜいたくなゆとりは従来の都心の街にはない。100年前は土地すらもなかった新しい街だからこそのなせる業だ。

豊洲の誕生は、大正後期からの埋め立て事業で形成された昭和初期。昭和12年に命名されるまでは“5号地”という埋め立て地番号で呼ばれていたそう。「豊かに栄える島になるように」と願いを込めたとか、埋め立てに使われた土砂が肥えていたからとか、関東大震災で焼けた銀座の土石を使ったため、のちに貴金属類が掘り出されたから、などと、豊洲という地名の由来には諸説あるようだ。

豊洲1丁目第2公園

公園でのびのびしてるアナタは何者?

豊洲1丁目歩道橋のそばにある小さな公園に、大の字になって仰向けに寝そべっているようなオブジェを発見。実は錨(いかり)で、造船所にちなんだ産業遺構のモニュメントだ。 地図★1>

豊洲公園

タイガースカラーのでっかい文鎮 !?

豊洲公園の芝生でどーんと存在感のあるこちらは、豊洲の産業遺構の1つである錘(おもり)。資材や道具を持ち上げるクレーンの滑車錘として使われたとか。現在はベンチとして再利用されている。 地図★2>

アーバンドック ららぽーと豊洲広場

思わずウトウト、寝心地よさそうな青空ベッド

アーバンドック ららぽーと豊洲の広場には、晴海運河に面してベッドのようなベンチが並んでいる。海や波をイメージしてつくられたという形は、背もたれの傾斜が絶妙で、運河の景色をぼーっと眺めるのに最適。 地図★3>

戦前のうちに東京石川島造船所(現在のIHI)の工場などができると、それから豊洲は造船の街として発展。今、豊洲(主に2~3丁目)をくまなく歩けば、錨(いかり)や錘(おもり)、ギアやレールなど、さまざまなオブジェと出合うが、これらはそんな造船業に使われてきた産業遺構。街の歴史を伝えるユニークな証人だ。風変わりなかたちや色をしたものはたいていこの産業遺構なので、気になったらぜひ近寄って、触って、確かめてみてほしい。
大型商業施設の『アーバンドック ららぽーと豊洲』もまさに造船所のあった場所。大きな建物が船のかたちを模しているのも、屋外の敷地にドックやクレーンなど船関係の設備やオブジェが配されているのも、実はその歴史があってのこと。
街の生い立ちを大切にする空気がいいじゃないか。

がすてなーに

ガスってすごい!

と、思わず言いたくなるほどガスのことがよくわかり、発見と感動のある『がすてなーに ガスの科学館』。黄色いガス管など、実際に使用されている設備も展示されている。入館料無料。9時30分~17時(入館は30分前まで)、月休(祝の場合は翌休)。📞03・3534・1111 現在改装工事につき休館中。10月よりリニューアルオープンする予定。 地図★4>

『がすてなーに ガスの科学館』も、新市場の土地にかつて都市ガス工場があったことを示す貴重なシンボル的存在。ここがとにかくマニアックで、都市ガスの製造や供給に使われる部材で遊んで学べる展示の多いこと! しかも、「ガスは本来無臭だが、その存在を知らせるために臭いを付ける」、「天然ガスはほぼ輸入だが、新潟や千葉でも採れる」などといった驚きのウンチクを説明員の方から聞くことができ、大人でも十分に楽しめる。
IHIグループの歴史と技術を展示するミュージアム『i-muse』も併せて見学すれば、日本の産業を支えてきたんだなあと、豊洲の街の偉大さが見えてくる。

落合靴店

かわいコちゃんに会えるかも !?

近隣学校の学生用の靴を主に扱う『落合靴店』。ご店主が猫を5匹ほど育てており、1匹ずつ日替わりで猫が常駐する。運がよければガラス戸越しから愛らしい姿を目にできるかも。 この日はスコティッシュフォールドのモモちゃんがいたが、警戒心が強く、残念ながら取材拒否。10~13時・17~20時、水・木・日休。📞03・3531・9304 地図★5>

エンターテインメント銭湯、ここにあり!

親子3人で守る枝川の『白山湯』は豊洲エリアで唯一残る銭湯。東京都内で初めて導入したという人工炭酸泉が人気だ。近年は、子供を喜ばせたくて日曜日と祝日限定でおもちゃのアヒルを浮かべる。しかも男女とも50羽ずつ! その数があまりに多いためじゃまになるのか、大人のお客さんは湯船の縁に上げてしまうこともあるとか。入浴料大人(中学生から)460円。15~24時、土休。📞03・3645・0862 地図★6>

都会的でハイソで、ビルだらけの無機質な街というイメージもあるかもしれない。が、実は昭和20年代から続くような個人商店も元気で、こぢんまりした集合住宅も残る下町的情景も、一方で豊洲の魅力。街角の肉屋さんでは揚げたてのメンチカツやコロッケが100円台で気軽に買える。都営アパートの店舗に入る『落合靴店』では、通りかかりの園児たちがわらわらとガラス戸越しに集まり、ご店主の愛猫を見つめる光景のなんとまあ愛らしいことよ。
朝凪橋を渡れば、豊洲エリアで唯一残る銭湯『白山湯』でひとっぷろもできる。
「豊洲は、交通が不便で、昔は誰にも見向きもされなかった土地。それが変わったのは、平成になる直前の地下鉄有楽町線の開通、それと2006年にできた『ららぽーと』の存在が大きいね。ゆりかもめもできたしね。立地の便利さが見直されたんだね」とは、地元で60年以上営むお米屋さん。
2005年には約9500人だった豊洲の居住人口は、10年間でなんと約3倍に増加。今や豊洲は、小学・中学・高校・大学まで学校ができ、大学病院もあり、衣食住+職もコンパクトにそろった街に成熟している。

豊洲はちみつプロジェクト

豊洲生まれのハチミツ、いかがです?

豊洲商店街(豊洲商友会)の有志で活動を始めて6年目になるという「豊洲みつばちプロジェクト」。写真の巣箱1つにつき約1万5000匹×2箱分で約3万匹のセイヨウミツバチを放ち、9月頃まで採蜜を行う。街ではそのハチミツを使った様々な商品を開発。近隣店舗では豊洲はちみつ入りのビール「豊洲蜂蜜エール」、『パティスリーSAKURA』では「豊洲 はちみつマドレーヌ」を販売する。 地図★7>

そんな街では近年、なんと養蜂をしていると聞いて驚いた。運河に囲まれた豊洲でハチミツなんて採れるのだろうか?
「サクラにツツジ、ほかにも花の咲く樹木はたくさんありますから問題ありませんよ」とは養蜂活動を行っている豊洲の商店街「豊洲商友会」のメンバー。確かに、通りには街路樹や中央分離帯の植え込みが連なるし、広い芝生の豊洲公園をはじめ、各所に広場や小さな公園がある。意外にも豊洲は緑が豊かなのだ。
「豊洲で何かできることはないか? と考えて行き着いたのが“地産地消”だったんです。ハチミツは豊洲流の地産地消。これは、膨張し、変化・進化をし続けるこの街だからこそやる気になったこと。落ち着いてしまった街ならこう上手くはいかなかったでしょう。遠くない未来には、野菜や果物にも挑戦したいね」(豊洲商友会)
街はまだ開発進行中。新しい何かが生まれ続け、進化が止まらない豊洲。これからも私たちを驚かせてくれそうだ。

 

 

文=下里康子 撮影=加藤昌人

*本ページに記載されている情報は2019年8月19日現在の情報です。

on the CANAL
モーニングからディナーまでいける、万能パンカフェ

種類豊富な焼きたてのパンが食べられるベーカリーカフェ『on the CANAL』。一番人気のレストランのカレーパン216円は、レストランのシェフが手がけた牛すじカレーをたっぷり使う。クリームパン151円、クロワッサン151円、ラムいちじくとクリームチーズ248円など、おすすめはたくさん。9~22時(土・日・祝は8時~)、月休。📞03・5547・4631  地図★8>

HIDE COFFEE BEANS STORE
東雲の倉庫で味わう自家焙煎コーヒー

東雲在住の店主・斎藤英和さんが、倉庫を活用して開くロースター『HIDE COFFEE BEANS STORE』。店内で焙煎しているスペシャルティコーヒーはイートインも可能。手作りの焼き菓子もご一緒にいかが。ドリップコーヒー380円〜、コーヒー豆100g 700円〜。11~19時、水・第2・4木休。📞03・3533・1010 地図★9>

ガスの科学館屋上
空に近いもうひとつの芝生広場

豊洲公園だけでなく、『ガスの科学館』の屋上もなんと一面芝生の広場。どことなく地面に丸みを感じるのは、地球の2万分の1サイズを再現したという曲線なのだとか。地球のリアルな丸さを体感しよう。屋上からの眺めもよく、晴れた日は気持ちがいい。 地図★10>

都営豊洲四丁目アパート
限りある、愛しのアパート風景

昭和40年代に建てられた5階建ての都営豊洲四丁目アパート。13棟あったが建て替えのため、2016年から順次解体工事が進んでいる。新しい建物は地上14階建てとか。のどかな団地風景ががらりと変わる日も近い。 地図★11>

水上バス乗り場
生き続ける造船所の面影

浅草~お台場間を船で行き来できる水上バスの乗り場は、もともと石川島播磨重工業の造船所があった場所で、造船ドックを活かしている。ドックで使われたクレーンをモチーフに制作したというモニュメントや、アーバンゲートブリッジという跳ね上げ橋などが往時の様子を想像させる。 地図★12>

晴海橋梁
ノスタルジックな鉄道遺産

春海橋と並走する鉄さび色の渋いアーチ橋は晴海橋梁。1957年に開通した東京都港湾局専用線(貨物線・臨港鉄道晴海線)に使われていたもので、1989年に廃止した後もそのまま残され、線路もちゃんと続いている。 地図★13>

豊洲運河
今は鳥たちの止まり木に

豊洲運河に突如現れるのは、一辺が400mほども長く続くコンクリート製の柵のような建造物。巨大な遺跡か !? と思えば、豊洲貯木場跡の設備だったとのこと。壮大すぎて不思議な雰囲気を醸している。 地図★14>

東京都港湾局専用線
線路は続くよ、少しだけ

豊洲北小学校とホームセンターの間の遊歩道に、あれ?線路 !? 豊洲地区内を横断していた東京都港湾局専用線の線路を埋め込んだものという。街にはほかにも線路があるので下を向いて探してみよう。 地図★15>

東雲水門
東京都民をよろしく頼みます!

豊洲と東雲をつなぐ東雲橋からよく見える、昭和40年竣工の東雲水門。ローラーゲートが3つもある大きな水門だ。「止めるぞ高潮 守るぞ都民」というインパクトのあるスローガンが力強くて頼もしい。 地図★16>

朝凪橋
運河と高層ビル群が織りなす美景

枝川と豊洲の間に架かる朝凪橋。豊洲運河と高層マンション群というウォーターフロントの絶景が眺められるビューポイントだ。運河の先には佃島のビル群も望め、時にはカラフルな屋形船が通ることも。 地図★17>


散歩の達人のエリア一覧