『散歩の達人』葛西 

フラワーガーデン

東東京ののどかなベッドタウンで
アメージングさんぽ!

東京都の東端、江戸川区の南部に位置する街・葛西。大手町駅から地下鉄で約15分と都心に至近のベッドタウンでありながら、つい東京を忘れてしまうほどのどか。しかも海があり、個性的な公園が密集し、動物とのふれあいの場もなぜか多く、予想外にアメージング!

整然とした無機質な街の印象とは裏腹に、驚きがちらほらと

西葛西駅から葛西駅へぷらぷらと歩いていると、道に面した金網越しに、なんとカピバラがいてびっくり。ここは何!? と思ったら、『東京コミュニケーションアート専門学校』の校舎の飼育実習室だった。“地域に開かれた動物園、水族館のある学校”というだけあり、2面もある展示コーナーはまさに動物園の一角みたいで動物たちに癒やされる。日々さまざまな生き物と向き合う学生にとっても、街の人に常に見られる学びの環境は実践力を養う貴重な場になっているという。
そういえば、『なぎさポニーランド』にはポニーもいるし、『葛西臨海水族園』に『江戸川区自然動物園』もある。住宅地の中だって、『NECOT COFFEE HOUSE』ではかわいい保護猫たちとまったりと過ごせ、戯れることができる。大きな環七通りが南北を貫く駅周りの整然とした無機質な印象とは裏腹に、葛西は意外と生き物と触れ合える、隠れ“動物王国”のようだ。

東京コミュニケーションアート専門学校

ここはまちなか動物園!?

動物に関わる仕事を目指す学生のための『東京コミュニケーションアート専門学校』エコ・コミュニケーション科の新校舎には生き物がいっぱい。その数、50種70頭、魚類を含むと300種にもなるという。通りに面した飼育実習室のフェンスからは甘えん坊のミニブタのまろ美ちゃんをはじめ、ホロホロ鳥やアヒル、ウサギやカピバラ、トカラヤギなどが目にでき、行き交う人の心を和ませる。動物が見られるのは8時30分過ぎ頃から。 地図★1>

なぎさポニーランド

ポニーやヤギが待ってるよ!

なぎさ公園の一角にある『なぎさポニーランド』には、すももちゃん(写真)はじめ7頭ものポニーが在籍。小学6年生以下の子供は無料で乗馬することができる。ニンジンをあげたり、ヤギとも触れ合える。ちなみに、ポニーとは特定の品種のことではなく、体高147㎝以下の馬の総称。ポニー乗馬、ヤギとのふれあいは10時~11時30分・13時30分~15時(夏季は午前のみ)、ニンジンあげは土・日・祝のみの乗馬終了後~16時(1カップ100円、1日20カップまでの数量限定)。月(祝日の場合は翌日)休。📞03・5658・5720 地図★2>

NECOT COFFEE HOUSE』

猫たちに囲まれてのんびり一服

住宅街の一軒家で営まれる保護猫カフェ『NECOT COFFEE HOUSE』。見た目も性格もさまざまな20匹以上もの保護猫たちがのんびりマイペースに過ごしている。抹茶ラテ610円やアサイーのスムージー750円など、ドリンクは種類が多く、満足感あり。自家焙煎コーヒー豆の挽き売りも。入店は靴下着用必須。平日30分560円、60分930円(土・日・祝は30分650円、60分1160円。金額はすべて税抜)。12~20時(日・祝は~19時)、月・火・第2・4日休(猫の体調により営業時間変更あり)。📞03・3877・0082 地図★3>

「意外」というのなら、食のお店やチェーン店ばかりで、ちょっとかわいいものを買いたい時に立ち寄れる雑貨屋さんが見当らない。成熟した街だしマンションも多い住宅街なのに意外……。少しさみしく思っていたら、あらっ、ガラス越しに華やかなお花のリースやブーケが! 「私、葛西には10年住んでいますけど、本当に雑貨屋さんってないんですよね」。小躍りして足を踏み入れたその店、『Studio Aurora』で、店主の田代恵美子さんは、こちらと全く同じことを言うものだから驚いた。雑貨屋不毛地帯に今年開店したての頼もしい存在。生花と比べて扱いやすいドライフラワーを使った彩り豊かな雑貨は、家に飾りたくなるもの、人にあげたくなるようなものばかり。眺めるだけでも幸せ気分。「目の保養に」と通うご近所さんも多いと聞いて納得だ。

人にも自分にもあげたくなる色鮮やかなドライフラワー小物たち

今年1月にオープンした『Studio Aurora(アウローラ)』は、ドライフラワーを使って店主が手作りした心華やぐ雑貨が並ぶ。「少しだけほしい」という声に応えてドライフラワーを1g十数円~という量り売りで販売するのもユニーク。思った以上に色鮮やかで種類の多さに驚く。リース2970円~、スワッグ1540円~。アロマワックスカップ2640円(写真右)はアロマのいい香りも楽しめる。作りたいものを作れるワークショップも随時開催(申し込み制、個人レッスン可。目安は1作品2000円~)。10~18時、水・第1・3・5木・第2・4日休。📞03・6808・0081 地図★4>

いろんな味をちょっとずつ!

オレンジ色のファサードテントが目印のベーカリー『Petit Rire(プティーリール)』。塩パンも人気だが、小ぶりで愛らしく種類が豊富なコッペパンもおすすめ。「普通のサイズだと1つでお腹いっぱいになるけど、女の人ってあれこれ食べたいでしょ(笑)」(店の奥様談)と4年ほど前からサイズダウン。ミニ焼きそばドッグ105円、タマゴコッペ120円、フィッシュコッペ135円など、常時7~8種類並ぶ。 9時30分~17時30分、土休。📞03・3686・8399 地図★5>

奈良・平安時代にあった広大な群「下総国葛飾郡」の西部を指す「葛西」。当時は墨田、江東、葛飾、江戸川、足立区と埼玉県の東端が範囲だったとされるが、1889(明治22)年の町村制施行により江戸川区の新川の南側、つまりこのエリアの村々が統合され、「葛西村」と命名。長い歴史を経て「葛西」は小さくなってしまったが、江戸川区南部に残されたのだ。

「私が中学生の頃までは近所に遠浅の海が広がっていて、泳げたんですよ」と、驚きの話を聞かせてくれたのは『関口美術館』の館主・関口雄三さん。半農半漁の家に生まれ、先祖は27代続くという筋金入りの葛西っ子。アートは日常的にあるべきと芸術支援をする一方、ふるさとの海の再生にも長年力を注いでいる。

住宅街の中で、時を忘れて芸術鑑賞

地域の人たちがゆっくりと芸術に触れられる居間のような空間をと、2003年に開館した私設美術館の『関口美術館』。2館あり、本館は戦後を代表する彫刻家・柳原義達氏のブロンズ彫刻とデッサンが常設され、東館では若手作家の企画展が催される。一般800円。11~18時、月休。📞03・3869・1992 地図★6>

葛西は、1969(昭和44)年の営団地下鉄(現・東京メトロ)東西線の開通を機に宅地化が進行。1979年に西葛西駅が開業する以前は、すぐそばまで海岸線があり、清新町や臨海町は海だった。農家も多く畑ももっと広がっていたという。今じゃちっとも想像がつかない光景だ。

その海と代わるように増えたのが公園だ。
江戸川区が発祥で水辺に沿って気持ちよく散策ができる親水公園、親水緑道とは歩けばそこかしこで出合えるし、なんといってもダイナミックなのは総合レクリエーション公園。西葛西駅前から旧江戸川まで東西3㎞にわたって多彩な広場や公園が次々つながった、公園のデパートみたい。その中の1つ、『フラワーガーデン』は異なる噴水が4つも楽しめ、「きれいな虹が現れやすい噴水が2つもある」と噴水マニアも絶賛していた。晴れた日にじっくり眺めてみたい。

「とにかく土地が広々していますよね。うちの近所には雷公園もあるし、江戸川のジョギングコースもあって、スポーツをしたり走ったり散歩したり釣りをしたりと、朝から活動的な人が多いんです。その帰りにちょっと休める場所があれば地域のみなさんが喜んでくれるかなと思って」と朝7時からオープンするカフェ『ISUKE』のご店主が言う。葛西っ子の奥さんも、「都会すぎない感じがいいんですよね。『葛西って東京なの?』って聞かれることもありますけど、住みやすいから、街を出たいと思ったことは一度もないんですよ」と微笑む。朝から動きたくなる街っていいな。

フラワーガーデン

見ごたえのある噴水とバラの庭園

総合レクリエーション公園内にある『フラワーガーデン』は、西洋風庭園の中に見た目の異なる噴水が4つも並んでいるのが特徴。噴き上がるタイプ、ミストタイプなどあり、ずっと眺めていても見飽きない。春と秋は豊富なバラの開花も楽しめる。 地図★7>

ISUKE

釣り具屋さんと思いきや……

実家の釣り具店を改装し3年前に開店したカフェ『ISUKE』。渋い店名は、商いを始めたおじいさんのお名前(伊助さん)が由来。内装は店主夫妻がDIYでこつこつ手がけ、まるで薄暗い森にいるかのよう。居れば居るほど日常を忘れそうになる。めんたいもちサンド500円をはじめ変わり種も多い9種類あるホットサンドが名物。手作りのババロア264円、ヘーゼルナッツラテ455円(すべて税抜)。釣りえさ・釣り具は今も隣の店舗で販売中。7時~19時LO、第1・3・5火休。📞080・6777・7634 地図★8>

そんな住みやすさは万国共通なのか、葛西エリアだけで今、2000人以上のインド人が住んでいるという。東京全体で約1万3000人、江戸川区内で約4600人が暮らすというから、葛西のインド人密集度はかなりのもの。都心への通勤のしやすさ、外国人でも部屋が借りやすくなった住環境なども要因で、長期滞在者は増加。西葛西を中心に、街には飲食店や食材店はもちろん、インドの文化を学べる交流施設もでき、楽しいイベントも開かれる。本場の味やカルチャーに触れたいなら、きっと楽しめるはずだ。

さて、散歩の締めは、最南端の『葛西臨海公園』に出てみよう。大きさはなんと東京ドーム約17個分! ガラスのレストハウスに大観覧車、水族園や鳥類園、バーベキュー広場……と多彩な見どころはあるけれど、とにかく歩いても歩いても、まるで果てが見えないほど広い。ようやく大きな橋を越えたら、海だ! 前出の関口さんが尽力し、50年ぶりに東京都内湾で海水浴ができるほどになったという西なぎさに面した海は、穏やかで美しかった。海は遠くなりにけり。だけど、確実にそばにある。その存在はうらやましい。

葛西臨海公園

1日遊べるウォーターフロントパーク

葛西の最南端にある『葛西臨海公園』。海に面した約80万㎡もの広大な敷地には、穏やかな勾配の芝生広場、鳥類園や水族園、展望レストハウスや区立のホテル、高さ117mで日本最大級の「ダイヤと花の大観覧車」などが点在する。葛西渚橋を渡たれば、磯遊びができる人工なぎさも! ダイヤと花の大観覧車の営業時間は10~20時(土・日・祝、GW・春・夏・冬休みの繁忙期は~21時)、1月第4・5水・2月水(祝日の場合は翌日)休。1人700円。 地図★9>

街区表示板

かわいい街路灯あれこれ

葛西駅前で見かけた商店会の街路灯。海にヨットの帆のようなものが描かれたイラストと錨のモチーフでマリン風なものあり、緑の花に小鳥たちが止まっている愛らしいものあり、凝っている。

東京の東端、半島みたいな街・葛西は、ただのベッドタウンと思ったら大間違い。都内であることをつい忘れそうになる広々した規模感、のどかな雰囲気。それでいてただ暮らすだけでは終わらせない刺激、楽しみも備わっている。遊び場みたいなベッドタウンは、散歩したって満足できるはず。
文=下里康子 撮影=山出高士、金井塚太郎、平岡ひとみ
 

*本ページに記載されている情報は2019年10月31日現在の情報です。

印度家庭料理レカ
体に優しい西インドの家庭料理

日本ではまだ珍しい西インド料理店の『印度家庭料理レカ』。スパイスを炒め、香りを強調する技法を多く使うため香味は力強いが、油は控えめで、麦や豆、野菜が中心の優しい味わい。写真のサトウィク・アーハール1600円はインド伝承医学のアーユルヴェーダに基づいた、豆や野菜、フルーツを中心とした料理(日曜昼が基本)。11時30分~15時LO・18時~21時30分LO、月休。📞03・6676・0941 地図★10>

ふらりと散歩したくなる公園も

『宇喜田公園』も、のどかで明るいこの街の雰囲気に浸れる場所のひとつ。広々としたスポーツ広場や遊具がある遊び場もあり、運動したりベンチで読書をしたりと、思い思いに過ごすことができる。 地図★11>

江戸川印度文化センター
インドカルチャーを気軽に体験

インドの情報を発信し、日印交流を深めるため2016年にオープンした『江戸川印度文化センター』。インヤン・ヨグ(陰陽ヨガ)、タブラ(北インドの伝統打楽器)、ヒンディー語など、インドの文化・芸術の講座やイベントを企画・運営する。館内にはヒンドゥー教の神々が鎮座し、民族衣装の展示もあり。入館無料、各講座は有料。11~21時、月休。📞090・9971・6181(よぎさん) 地図★12>

街区表示板
さり気なく名所をアピール

ときどきカラー写真付きのものと出合える葛西の街区表示板。2020年東京五輪に向けた江戸川区の取り組みで、カヌー・スラローム競技の会場となる葛西エリアを中心に順次取り換えられているのだそう。写真は住民から好きな景観を募集し選定された「えどがわ百景」の景色。ちなみにこちら、葛西五丁目12の表示板は昇覚寺の鐘楼。 地図★13>

風力発電機
駅前に巨大扇風機!?

葛西駅東側に鎮座する扇風機みたいなモニュメントは、平成20年に設置された本物の風力発電機。よく見ていれば、風の強さに合わせて首を振り、3枚の羽もくるくる回る。電力は夜間のライトアップや地下駐輪場に使われる。 地図★14>

篠原農場新鮮野菜直売所
今日のとれたて野菜は何かな?

小松菜の発祥の地で収穫量も都内で一位という江戸川区は、農家自らによる直売所も多い。『篠原農場新鮮野菜直売所』はかつて小松菜畑が広がっていたというマンションの一角でほぼ毎日、とれたての無農薬野菜を販売する。品目は季節で異なるがとにかく新鮮で安い。11月以降は小松菜も並び始める。14時頃~19時頃、荒天・雨天休。 地図★15>

新長島川親水公園
江戸川区といえば親水公園なんです

日本で初めて親水公園が生まれた江戸川区。平成3年度に区内で3番目に開園した『新長島川親水公園』は、全長530mの長い園内に小川が続き、ジャブジャブ池や噴水広場もあり、歩くのが楽しい公園。スイセンの名所でもあり、2月中旬~4月中旬は川岸の斜面に約2万5000株が咲き誇る。 地図★16>


散歩の達人のエリア一覧